10月に前橋競輪場で行われたナイターGIII。完全優勝がかかる選手もいましたが、先行逃げ切りで優勝したのは久米詩選手(静岡116期)でした。
その時の振り返りと、ここから年末にかけて行われるビッグレースへの意気込みを伺いました。
山口:前橋ナイターGIII、優勝おめでとうございます。
久米:ありがとうございます。
山口:今の率直なお気持ちはいかがですか?
久米:初日から3日目までは思った通りのレースができませんでした。でも先輩からアドバイスをもらって、決勝戦では覚悟を決めて自分のレースができたのが良かったです。
山口:4日制でしたが、どんな思いで参加されましたか?
久米:初めての4日制だったので、どのような感じになるのか参加する前に不安は少しありました。でも同期もいて4日間楽しめたと思います。
山口:3日目まではオール2着で連対はしていますが、感覚が良くなかったんですか?
久米:着は良かったんですが、展開に恵まれてカバーしていた部分もありました。脚の状態は悪くはなかったですが、今ひとつ開き直ってレースができていないという感じですね。
山口:先輩からはどんなアドバイスをもらえましたか?
久米:負けたらどうしようとプレッシャーを感じて硬くなっていた私に「そんなに勝ちにこだわらずに自分のレースだけをしたら良いんじゃないか」とアドバイスをいただきました。
山口:3日目から決勝へ、一晩で気持ちを切り替えて先行逃げ切りでの優勝と、結果を出すのは素晴らしいと思いました。
久米:4日間しかなかったので「変えるしかない!」という気持ちでした。
山口:しかも決勝で、というのがとても勇気が必要だったのでは?
久米:そうですね、だいぶ勇気が必要でしたね。でも私は初日から2着続きだったので気負いはそこまでしていませんでした。
鈴木美教さん(静岡112期)や小林優香さん(福岡106期)は3連勝だったので、お二人の方がプレッシャーを感じていたと思います。
山口:決勝は一番前からの組み立てでした。鈴木選手は初日から逃げて3連勝でしたが、踏み合うかもしれない、という予想はしていましたか?
久米:はい、想定もして覚悟はしていました。でも思いの外スローな展開になりました。
山口:後ろの気配というのは感じていましたか?
久米:3コーナーくらいでは捲りにくる選手がいたら気配を感じるかなと予想をしていたんですが、自分が思っていたよりも後ろの選手が来るタイミングが遅かったので、そこで少しチャンスが見えました。
山口:ゴールの手応えはいかがでしたか?
久米:気持ちの持ち方に自信がとてもつきました!脚力が上がったというより、「自分のレースができる」という気持ちの面で成長を感じられました。これはとても大きな一歩だなと思います。
山口:ゴール後にはガッツポーズも出ましたね!
久米:はい!お客さんも多かったので、お客さんの前で良いレースができたことがとても嬉しかったです。
山口:前橋の時はお父様(元選手・現日本競輪選手養成所教官の久米康徳さん)にセッティングを見てもらったと記事を拝見しました。違いはありましたか?
久米:私は自分でセッティングをするとあまりうまくいかないので、参加前に父に見てもらい臨みました。
山口:良い報告もできましたね。お父様の反応はいかがでしたか?
久米:すごく嬉しそうにしていました!今後も父にアドバイスをもらいながら、自分でも意見を出しながら相談してレースに臨みたいです。
山口:コロナ禍もありお客様が入る開催も少なかったところ、前橋は有観客開催でした。お客様の存在は力になりますか?
久米:すごくなります。嬉しい感想ではなくても、もし私がダメなレースをした時は、厳しいお声をいただいた方が次への気持ちの切り替えにもなります。
なので、私はどんなお声でも嬉しいです。お客さんあっての競輪だと思います。
山口:そういう点では、コロナ禍だとSNSでの反応は多いのではないでしょうか。
久米:はい。特に今回の前橋の優勝については「感動した」という感想をいただいたのですが、なかなかそのような感想をもらえることはありません。
例えば「良いレースだった」や「買っていて良かった」というのはありがたいことに何度か言ってもらえるんですが、私のレーススタイルで「感動した」という感想を言ってもらえるのは自分の中で目標にしていたことなので、とても嬉しかったです。
山口:久米選手も、他の選手のレースを見て感動したことはありますか?
久米:はい、あります。ガールズケイリンだと力を発揮したレースなど。男子の競輪だとラインの絆だったりまた違った感動がありますよね。
山口:それをご自身のレースで伝えられた喜びがあったんですね。
では話は、11月の「オッズパーク杯ガールズグランプリ2021トライアルレース」に移ります。メンバーを見ていかがですか?
久米:トップの選手が勢ぞろいするレースで、その中で皆さんがグランプリ出場を目指しているのでハイレベルなレースになると思いますが、「自分のレースをする」という気持ちを持って臨めば、チャンスはあると思っています。
山口:久米選手は「勝負強い」というイメージがあります!
久米:自分ではあまり思わないですが、周りからそういう評価をしていただけるというのは「持っている」ということかもしれません。それを活かしてレースができたら良いですね。
山口:地元のグランプリへ、というのは意識しますか?
久米:それはしますが、「地元だから絶対に出場したい!」というよりも「自分のレースをしたい」という方が大きいです。
山口:昨年はグランプリトライアルレースで決勝へ進みました。今年のレースへの目標はいかがですか?
久米:もちろん優勝してガールズグランプリに出場したい、というのは大きな目標です。でもそのために必要最低限のやることは、自分のレースをすることだと思っています。特に大きいレースであればあるほど自分のレースができないことが多いです。なので、強い気持ちを持って臨みたいです。
山口:今年はビッグレースに何度も出走されましたが、糧になっているものは何かありますか?
久米:7月函館のガールズケイリンフェスティバルでは脚力が足りないということがわかりましたし、気持ちの面でも普段と違いました。そういう経験も大切だと思います。ビッグレースを走れば走るほど「もっと脚力をつけないといけない」と感じました。
山口:今後の強化ポイントはどこですか?
久米:全部の底上げですね。脚力もトップ選手と差があるので、全体的に強化したいです。
山口:寒くなってきましたが練習状況はいかがですか?
久米:以前はCSC(伊豆サイクルスポーツセンター)でやっていたんですが、オリンピックの関係で今は使えていません。なのでバンクに入る時は伊東温泉競輪場へ行っています。後はウエイトトレーニングや街道練習、家でワットバイクなどをしていますね。
山口:うまく練習も切り替えられているんですね。今後、年末へ向けての目標は何ですか?
久米:今はトライアルレースでピークを迎えられるように練習をしているので、集中して頑張りたいです。そこで良い結果を得らえたらガールズグランプリへ、というイメージです。
山口:それでは最後にオッズパーク会員の皆さんへメッセージをお願いします。
久米:いつも応援ありがとうございます。自分のレースをして皆さんに魅力のあるレースを届けられるように頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
第二の故郷 新潟の弥彦競輪場で行われた「第30回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」 を制した平原康多選手(埼玉87期)にお話を伺いました。
大津:寛仁親王杯優勝おめでとうございます。
平原:ありがとうございます。
大津:久しぶりのタイトル獲得です。
平原:周りからは4年8か月振りと言われますが、自分としてはずっと目の前の一戦一戦を頑張ってきたので、そんなに月日が経ってとか気にしてはいなかったです。
大津:弥彦での優勝です。
平原:弥彦には特別な思いがあります。中学校二年生まで住んでいたところですし、去年の弥彦記念は優勝できたのですが、それまでは呼んでもらっても、ずっと漢字続き(落車や失格)のレースで良い結果を残せませんでした。
親戚の方を筆頭にたくさんの方々に応援してもらっていましたが毎回毎回そういうところばっかり見せてしまっていたので、一つ結果を残せて良いところを見せるところが出来たのは何倍も喜びがありました。
大津:何度となくGIの決勝戦を経験されていますが、今までと気持ちの変化はありましたか。
平原:特別どうというのはなくて、自分の与えられた位置で自分のやれることを悔いのないように精一杯やろうと思ってました。
大津:ご自身のコラムで「今年こそはGIタイトルを獲得する」と書かれてましたが有言実行となりました。
平原:そうですね、それが本当にそうなったので良かったです。
大津:GIタイトルはこれで8度目となりました。
平原:過去何回優勝というのは正直過去でしかないので別に過去と比べてどうとかっていうのはないのですが、目の前のレースに向けてやってきたことが報われたことが嬉しかったです。
GI優勝しても次の日からチャレンジャーという姿勢は変えず、受け身の姿勢は崩さないようにしています。
大津:平原さんとしては弥彦でのGI参戦は8年振りとなりましたが、弥彦での開催が決まった瞬間の気持ちはいかがでしたか。
平原:その時は正直前橋競輪場よりは良いなくらいの気持ちでした。前橋は難しいバンクなんです。
僕は400バンクで走る競輪のほうが慣れているので、前橋よりはしっかり自分の競輪が出来るなって感じていました。
大津:今シリーズを迎えるにあたっての状態面はどうでしたか。
平原:たった二か月なのですが8月から落車もなく、それまでの怪我も癒えてきて、やっと身体が自分の思うように動くようになり、自転車も進むようになってきたなっていう手応えがありました。
前場所の熊本記念からの上積みもあったように感じています。
大津:ではシリーズを振り返っていきます。初日の日競選理事長杯は単騎でのレースとなりました。
平原:勝負どころで結果的に9番手になってしまい、そこは読み違えました。
大津:平原さんが9番手にいるのは見ていても意外でした。
平原:そうですね、さすがにあそこでは勝負圏のない位置でしたね。
自分で選んだ位置だったので何とも言えないんですが。
大津:最後はそこから捲って4着に入りました。捲っていった手応えはいかがでしたか。
平原:不利な位置から踏み上げたわりには自転車の進み感が大分良くなっていたので、二走目以降もいけそうな感じはありました。
大津:準決勝では地元の諸橋愛選手(新潟79期)を連れての競走でしたね。
平原:責任感のある位置でした。ある程度は作戦会議で諸橋さんと話していたのですが、いざレースが始まってみると思っていたレースにはならなかったです。
その中で上手く前に前に攻められたのは良かったですね。
大津:渡邉一成選手(福島88期)が仕掛けた際に、上手く追い上げてさすが平原選手という動きがありました。
平原:あれは本当にたまたまです。
大津:渡邉選手の後ろを取り切って、最終周回では何度も後ろを振り返っていましたが、何を確認していたのですか。
平原:太田竜馬(徳島109期)がどこから飛んでくるかなと思い、何度か後ろを見ました。
太田の捲りに最悪出なければいけないと考えていましたね。
大津:その太田選手との捲り合戦になりましたね。
平原:太田がかなり良いスピードで捲っていたので自分で張りに行く形になりました。
大津:そこを制してゴールした瞬間というのはいかがでしたか。
平原:そうですね、一着でゴールしたんですが自分の車輪も壊れてて車体故障をしていたので、失格かもしれないという考えもありました。
ただ、それでも諸橋さんが決勝に乗ってくれたので役目を果たせたかなと思い、「諸橋さん良かったですね。」と言葉をかけました。
(審議の結果、平原選手はセーフで決勝進出)
大津:平原さんから諸橋さんにお声をかけたとありましたが、諸橋さんから平原さんには何かありましたか。
平原:諸橋さんは、その時はもう涙を流してました(笑)
大津:その姿を見てグッとくるものもあったんじゃないですか。
平原:あれはきますね。(諸橋選手自身)頑張って良かったなって思える瞬間だし、諸橋さんは相当努力して頑張って来られたんだなって感じる瞬間でしたから。
大津:これまで長きに渡り平原さんと諸橋さんは一線級で一緒に戦ってきたからこそのお言葉ですね。
平原:凄い諸橋さんの思いが伝わってきました。だからこそ諸橋さんと一緒の時には頑張れるんだろうなって改めて感じました。
大津:場内のお客様からの反応はいかがでしたか。
平原:本当に凄かったです。ああいった瞬間を味わえるっていうのは競輪選手をやってて良かったなって思えますよね。
大津:決勝進出を決めた時のお気持ちを教えてください。
平原:涙が出てきました。諸橋さんと決勝を走れるし、弥彦は僕も非常に思い入れがある場所でしたから。
大津:決勝は北日本勢が4車、そして吉田拓矢選手(茨城107期)率いる関東勢が3車という構図になりました。
スタートはどのように考えていましたか。
平原:北日本が前を取りたいんだろうなって思ってました。その中で前を取られたら厳しいので、自分たちも前が良かったのですが新田のダッシュが良かったのでスタートを北日本勢に取られてしまいましたね。
前を取れない場合は後ろから、どのように仕掛けるかだけでした。
大津:吉田選手には何かレース前に伝えていたのですか。
平原:ヨシタクは競輪選手として色々積み重ねてきて今の地位まで登り詰めてきている選手なので、僕がアドバイスしなくてもやるべきことを分かってる選手なんですね。
僕が「こう言おう」と思う前に、僕に発信してくるし、トップ選手になったなって感じますね。
大津:新山選手が前から突っ張り、赤版でペースが上がった時にここでも平原選手の判断力が光りました。
平原:隙があれば援護していきたいという気持ちが自分の中にあったので、新田の後ろを確保してヨシタクを迎え入れたって感じです。
大津:どこに行けば勝機があるか自分の身体が覚えている、というのを過去にコラムで書かれてましたが、そのような感じですか。
平原:今回のレースに限っては上手くいきましたけどあのような展開で幾度どなく失敗もしてきてるんで、そうした経験が活きてきてるのかなって思います。
無駄なレースというのは無いと僕は考えていますから。
大津:最終の二コーナーでは新田祐大選手(福島90期)の番手捲りを自ら追走し直線勝負となりました。
平原:新田がずっと蛇行しながら走ってたのでタイミングが取りづらかったのですが、結果はとにかく思いっきり踏まないと諸橋さんにも優勝の権利がないし、思いっきり踏もうってくらいの気持ちでしかなかったですね。
大津:諸橋選手のコースもきっちりと作っているように感じたのですがいかがですか。
平原:そうですね、僕は締めずに外々で踏んでいって諸橋さんのコースを作って行ったら新田が寄ってきたっていう感じです。
大津:最後はゴール前争いを制した感覚はありましたか。
平原:ゴールした時は僕しかいなかったので優勝したってのは分かりました。
大津:ゴール後はガッツポーズもありました。
平原:諸橋さんが落車してたのでガッツポーズしないほうがいいかなって一瞬思ったのですが、ホームで親戚の方たちが応援してくれていましたし何もしないのも申し訳ないし、自分の喜びもあったのでガッツポーズをしました。
大津:今年は怪我もあり苦しい時期もあったかと思うのですがいかがですか。
平原:特に6月に練習中に落車してしまった肘の骨折が尾を引いてしまったので「今年はもう厳しいな」「また来年頑張ればいいか。」って自分の中で気持ちが切り替わった時に、なんかこう肩の荷が下りて、その時に宿口(宿口陽一選手・埼玉91期)が高松宮記念杯競輪で優勝して余計に気持ちが楽になったというか、変な責任感がゆっくり消えたんですよね。
その部分がレースにとってプラスになったのかなって思えました。
大津:今年はオールスターでファン投票一位にも選ばれましたし、ファンの方も非常に喜んでらっしゃるんじゃないですか。
平原:怪我をしていた時期もあったので一位というのは驚きでしかなかったのですが、応援してくれる人が本当に多いんだなって思えて、遅くなりましたがGIを優勝して恩返し出来たことが嬉しいです。
大津:吉田選手や眞杉選手(眞杉匠選手・栃木113期)、関東勢の後輩の活躍はどのように感じていますか。
平原:意識の高い選手が出てきてくれて、彼らがどう思うかっていうのは分からないですが、超一流の競輪選手に育ててあげられるかっていうのは、自分たち先輩がどう導いていけるかですよね。そこは自分たちの責任もあるので、これからも自分なりにアドバイスを出来る範囲でしていきたいです。
大津:宿口選手がGIタイトルを獲得後に西武園競輪場で選手から胴上げされてましたが平原さんも胴上げされましたか。
平原:いやいやいや、自分はそういうキャラじゃないので(笑)宿口の場合はGI初タイトルというのもありましたからね。
大津:これで宿口選手とグランプリ出場が決まりました。
平原:20年以上付き合いのある後輩ですし、まだGPを走ってないから何とも言えないですがこんなこともあるんだなって思いました。
大津:次走小倉の競輪祭に向けて意気込みをお願いいたします。
平原:GIを優勝するというのを日々掲げて頑張っているので競輪祭でもタイトルを獲れるように頑張りたいですし、関東勢から一人でも多くグランプリに乗せられるように自分の役割を果たしたいですね。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様にメッセージをお願いします。
平原:おかげさまで寛仁親王杯で優勝することが出来ました。 競輪祭もグランプリもありますが、どちらも優勝できるよう頑張りますので応援よろしくお願いいたします。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
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実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社