9月に行われたGII共同通信社杯競輪でビッグレース初制覇となった中本匠栄選手(熊本97期)。3年前に同じ伊東温泉バンクで落車骨折し、今年に入ってからも怪我を繰り返し、心が折れそうな時期もあったと言います。シリーズは本調子ではない中、ラインの力で得た優勝。その決勝戦の振り返り、これからの目標。そして、九州の先輩、後輩、練習仲間への気持ちも伺いました。
星野:共同通信社杯競輪、優勝おめでとうございます。アクシデントもあった中での優勝でしたが、改めて振り返っていかがですか?
中本:アクシデントも、1着到達のヒデさん(山田英明選手・佐賀89期)の失格もあって喜べなかったし、最初は実感も湧かなかったんですが、周りや家族から祝福されて、今は優勝したことより、祝福してもらった事が嬉しいですね。
星野:今年は二度、怪我をされて万全ではない中の開催だったと思うんですが、状態としてはどうだったんですか?
中本:そうですね。今年は4月と7月に落車して骨折もしました。脚力が戻りきってない中で初日を迎えたので、初日の並びも本来なら僕が前を回らないといけないんでしょうけど、先輩のヒデさんの後ろを回らせてもらったくらいです。
星野:その中で、準決勝のレースはラインの先頭を走って、自分でレースを切り開きましたね。
中本:準決勝は園田さん(園田匠選手・福岡87期)との連携で、前受けから先行ラインの2番手に飛び付く。あのパターンしかないと思っていました。結果、脇本さん(脇本雄太選手・福井94期)には捲られたんですが、園田さんと一緒に決勝戦へ行けてよかったと思います。それに、決勝戦には九州勢が4人揃いました。なかなかないことなので、その内の一人になれたこと、しかも自分で動いて決勝戦に乗れたことが素直に嬉しかったです。
星野:初めての特別の決勝戦はどんな気持ちで走りましたか?
中本:ラインの先頭に賢人(山崎賢人選手・長崎111期)と2番手にヒデさん、3番手に僕、後ろには園田さんがいたので、自分はラインをサポートする気持ちが大きかったですね。僕たち九州勢以外は全員単騎を選んでいて、そのなかには強豪ナショナルチームのメンバーもいたし、位置を狙ってくる選手もいるかもしれないと思っていました。レースは賢人が逃げる展開でスピード上げてくれて、ヒデさんがブロックしてくれて、九州から優勝者が出たのは、ラインの力が大きかったですね。
星野:ゴール体制は、中本選手は2着で1着が審議になりましたが、結果が出るまではどんな心境でしたか?
中本:僕から買ってくれている人もいたので、こんな事を言うのは申し訳ないですが、僕は2着で良いから、セーブであってくれと思っていました。レースが一緒の時は練習の仕方を教えていただいたり、お世話になっている先輩で、頑張っている姿も見ていたので、ヒデさんが優勝して欲しいと思っていました。
星野:その中本選手の気持ちが、表彰式や優勝インタビューからも伝わってきました。さて、この優勝した日(9月21日)が、3年前に大きな怪我をされた日だったんですね。
中本:3年前に同じ伊東温泉バンクで頚椎骨折したのは覚えていたんですが、日にちまでは覚えていなくて、レースが終わってから聞きました。レース前でなくて良かったなと、もし先に聞いていたら、意識してしまったと思います。どうしても怪我をしたイメージが抜けなくて、あの日から伊東温泉競輪場の斡旋は受けていなかったんです。それで、今回の共同通信社杯競輪の舞台が伊東温泉競輪で、出場が決まったときは、せっかく走るチャンスをもらえたんだから、走ってみようと決めました。でも、初日はやっぱり怖かったですね。
星野:その辛い時期を乗り越えたのが、今回の結果に繋がったと思いますが、支えはなんだったんですか?
中本:僕は怪我が多いタイプで、復帰の仕方とか練習方法をいろいろ周りに聞いてやってきました。頚椎骨折から2年ほどは落車もなかったんですが、今年の4月に鎖骨と肋骨を骨折して手術して、ようやく良くなってきたかなって時に、また同じところを骨折して手術して、、、この時は正直心が折れかかりました。でも、合志さん(合志正臣選手・熊本81期)も怪我の多い先輩で、経験を元にアドバイスもらいながらやってきました。家族にも心配をかけましたし、やっぱり周りの人や今の環境が支えてくれてたんだと思います。
星野:これで、GIIの優勝を手にして、賞金ランキングもかなりランクアップしましたが、その辺りはいかがですか?
中本:元々、グランプリに向けての賞金争いをする位置にはいなかったので、怪我も多かった中で、その位置にいられるのは有難い事だと思います。でも、それでモチベーションが上がりすぎると、今やっていることのバランスも壊れそうなので、良い意味で意識できるようにしていきたいですね。
星野:来月には、今年最後のGI、競輪祭がやってきます。
中本:そうですね。今はそこに向けて取り組んでますが、現状を考えても、優勝することは難しいと思います。だけど、一戦一戦、周りから期待される以上に確定板(3着以内)を常に意識していけば、それがいつかGIでの優勝に繋がるんじゃないかなと思います。その為にも今は脚力を戻して、スピードも全体的に上がってますし、レースの中で余裕を持てるくらいにならないと横の動きも出来ませんから、対応していかないとと思っています。怪我から復帰して、レースが続いていましたが、やっと休養も取れるようになりました。なので、少しゆっくり出来たことを次のレースに生かしていきたいですね。
星野:話を伺ってると、中本選手の人柄もうかがえますし、周りの環境も本当に良さそうですね。
中本:今は、熊本も若手が多くなってきて、本当に雰囲気がいいんです。良い仲間に恵まれていると思います。だから、これからはレースでは先輩を引っ張っていって、また、熊本の若手を引っ張っていける選手になっていきたいですね。
星野:では、最後にオッズパークの会員の皆様にメッセージをお願いします。
中本:まずは、僕自身の状態を戻していって、レースではやれることを一つ一つやっていきます。そして、また大きな所で九州の仲間とラインを組めればと思います。これからも、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 星野めぐみ(ほしのめぐみ)
大阪府出身。タレント、アナウンサー、競輪キャスターとして活躍中。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
今年7月に先輩期に混ざって本格デビューを迎えた118期生。卒業記念レースを優勝した尾方真生選手(福岡118期)はいきなりデビュー節を優勝し、ここまで積み重ねた優勝はルーキーシリーズを含めて5回!
更に11月に小倉競輪場・競輪祭で行われる「ガールズグランプリ2020トライアルレース」にも118期としてただ一人出場権を獲得しました。
選手になろうと思ったきっかけや、デビューからこれまでの振り返り、そしてトライアルレースへの意気込みをお伺いしました。
山口:まずは11月に行われる「オッズパーク杯ガールズグランプリ2020トライアルレース」に出場が決まった時のお気持ちを聞かせてください。
尾方:7月に本格デビューしてから9月までが選考期間だったんですが、118期の場合は優勝回数が2回以上で、かつ競走得点上位選手という条件でした。 私は、優勝回数は達成していたので、9月中は競走得点を落とさないようにしようと思っていました。周りの選手たちには「条件も満たしているから多分出られると思うよ」と言っていただきましたが、決定した時はやっぱり嬉しかったです。
山口:デビューした年からトライアルレースには出場していた選手も過去にいました。デビュー時から目標にしていたんですか?
尾方:デビューする前、養成所に入る前から目標にしていました。私が養成所に入る前の2018年に師匠である藤田剣次さん(福岡85期)から「競輪祭見においで」と言われ競輪祭を見学させてもらい、その時に初めてガールズケイリンのレースを見たんです。
そこで藤田さんや大師匠と「デビューした年から競輪祭のトライアルレースに出られるように頑張るぞ」と、一番近い目標を競輪祭に定めました。今それが達成できて嬉しいです。
山口:間近にみたトライアルレースはいかがでした?
尾方:その年にデビューした佐藤水菜選手(神奈川114期)が新人選手として走っていましたし、姉弟子の皆さんも参加されていました。それまでテレビなどではガールズケイリンのレースは見ていましたが、実際に目の前でレースを見ると迫力がありました。
山口:今年は本格デビューの前にルーキーシリーズがありました。先輩期と混ざっての7月からのレースは同期だけのレースとはどう違いましたか?
尾方:同期とは養成所時代から何度も一緒に走っているので、誰がどういう走りをするのかが大体わかっており、仕掛け所なども把握しています。でも先輩たちは1レース1レース全く違う走りをするんです。周りを見て仕掛けている感じもします。
私は自分でレースを動かしていくタイプなんですが、先輩たちに前団で見られて警戒されていると緊張してしまい、なかなか仕掛けられないレースもありました。
同期だけだと思い切って仕掛ける場面でも、それをさせてもらえない時などは、レース経験の浅さを感じます。
山口:尾方選手はデビューしてから1着が多いですが、それ以外の時には警戒されたレースがありましたね。
尾方:はい、勝てなかったレースはそのように思い切り仕掛けられないレースでした。
山口:ただ優勝回数は先輩期と混ざってからも4回されています。ご自身の成績は振り返っていかがですか?
尾方:優勝しているのは嬉しいです。最近は、予選では今までよりは緊張もほぐれ、リラックスして走れているんですが、決勝になるとまだ緊張してしまいます。決勝でもそこをもっと改善して、魅せるレースができるようになりたいです。
山口:戦法や持ち味はどんなところですか?
尾方:自力を発揮したいと思っています。今は2コーナーからの捲りが決まることが多いですが、自分としてはホームから仕掛けて押し切れるようなレースをしたいですね。
山口:尾方選手のプロフィールには学生時代は陸上をしていたと書いてありますが、ガールズケイリン選手を目指したきっかけは何ですか?
尾方:陸上時代には「競輪」や「ガールズケイリン」は全く知りませんでした。たまたま高校時代の下宿先の方が元選手の方で、その方に競輪場に連れていってもらい競輪用の自転車にのせてもらったのがきっかけです。
その時に面白いなと思ったのと、一緒に練習させてもらった選手のスピードが凄くて、それに憧れて選手になろうと思って自転車を始めました。
山口:では自転車歴はまだ浅いんですね。
尾方:はい。実は元選手の方に競輪場に連れていってもらったのも、陸上部を引退して大学受験が終わった後でした。「もし興味があるなら、大学を卒業した後に競輪学校(現:日本競輪選手養成所)を受験してみたら良いよ」と言われたんです。自転車を始めてもすぐ選手になろう、ということではありませんでした。
ただ予想よりタイムが良く「今年受験したら合格するよ」と言われて、受けたら合格しました。
山口:そうだったんですか!初めて競技用の自転車に乗った時はいかがでした?
尾方:普通の自転車と違いブレーキがついていないので怖かったです。でも、バンクの内側を走らせてもらった時に、普通の自転車よりもスピードが出てグイグイ進んでいったのが楽しかったです。
山口:怖いよりも楽しいが大きかったんですね。初めて乗った時もタイムは良かったんですか?
尾方:1kmT.T.(タイムトライアル)のタイムはそこまで良くなかったと思います。手応えはそこまでありませんでした。
山口:養成所ではゴールデンキャップを取得されましたが、自転車経験が浅いからこその成長というのは自分で感じましたか?
尾方:養成所の夏帰省の時、ガールズ選手の皆さんの合宿に参加させてもらい、そこで児玉碧衣さん(福岡108期)や尾崎睦さん(神奈川108期)など強い先輩たちと一緒に練習させてもらいました。
その時にプロで戦っている先輩たちから刺激を受けたんです。夏帰省後、養成所に戻ってからはタイムが出るようになりました。
山口:「デビューしたらこの強い先輩たちと戦うんだ」と刺激になったんですね。
尾方:そうですね、意識も変わったと思います。
山口:9月の高知では尾崎選手の上を捲って優勝されました。強さを目の当たりにした先輩を破っての優勝は嬉しかったのではないですか?
尾方:はい。嬉しかったですが、睦さんはとてもレースが上手いなと感じました。仕掛け所など学ぶ所がたくさんありました。
山口:今の練習環境はどのような感じですか?
尾方:最近は同期の廣木まこさん(福岡118期)と碧衣さんと同じ時間に練習することが多いです。
山口:久留米はガールズ選手が多く所属していますが、レースの実践練習などもできますか?
尾方:デビュー前はコロナの影響でレースが中止になり、皆さんいらっしゃったので、レース形態の練習もしていました。今は皆さんレースがあるのでなかなか人数が揃わず、私はバイク誘導の練習を中心にしています。
山口:デビューして毎月レースがあるという生活は慣れましたか?
尾方:はい、だいぶ慣れました。レースとレースの間に練習をして、自信をつけてまたレースへ向かうという感じです。直前には師匠にアドバイスをもらったりしています。私はあまり本番で緊張をしない方なので、それは良い部分だと思います。
山口:陸上時代からあまり緊張しない方だったんですか?
尾方:いえ、陸上の時はすごく緊張するタイプでした。多分、大きいレースになると緊張する気がしますが、今のところはリラックスして走れています。
山口:ミッドナイト競輪も何度も走られていますが、時間帯はいかがですか?
尾方:私は普段の練習時間が夕方からスタートすることが多いので、ミッドナイトは平気でした。逆にモーニングはつらいかもしれないですね。
山口:今後強化していきたいことは何ですか?
尾方:先行でも捲りでも、私は初速が遅いので、そこを強化していきたいです。
山口:トライアルレースへ向けての意識はいかがですか?
尾方:師匠とも「しっかり競輪祭へ向けて練習していくぞ」と気合を入れて、練習メニューを組んでもらっています。参加するガールズ選手では私がいちばんデビューしたばかりで経験も浅いですが、先輩選手にも警戒してもらえるような走りをしたいです。
山口:トライアルレースではグループAで走りますが、メンバーを見ていかがですか?
尾方:AでもBでも強い選手しかいないので、どちらに入っても変わらずにしっかり走りたいと思っていました。誰を意識するとかではなく、新人なのでしっかりと力を出すレースをしたいです。
山口:前半のお話で、かなり他の選手のレースを見て研究されている印象を受けました。分析などはしっかりされますか?
尾方:はい、一緒にレースを走る選手については事前に見ます。どこから仕掛けるのか、などはイメージしているつもりなんですが、先ほども言ったように先輩たちは1レース1レース戦法も全然違います。見ていてもなかなか掴めていないですね。
山口:その辺りは経験なんでしょうか。
尾方:そうかもしれません。
山口:トライアルレースが行われる小倉競輪場はデビューのルーキーシリーズで走られましたが、印象はいかがでしたか?
尾方:とても軽くて走りやすかったです。でも先輩たちからは「3コーナーがあまり進まない」という事を聞き、実際にレースVTRを見ても3コーナーで浮いてしまっている選手がたくさんいました。なので走る時はその辺りも気を付けて走りたいです。
山口:ファンの皆様のご声援はどう感じますか?
尾方:8月末に地元の久留米を走ったんですが、その時は私の名前を呼んでくださる方もたくさんいらっしゃいました。
走り終わった後も「良かったぞ」と声を掛けていただいて、とても応援していただいていることを実感しました。もっと頑張って皆さんの応援に応えられるようになりたいなと思います。
山口:直にお客様の声が届くと頑張ろうと思えるんですね。ありがとうございます。
それでは最後にオッズパーク会員の方へ、今後の意気込みも含めてメッセージをお願いします。
尾方:デビューしてから時間は経っていませんが、たくさん応援してくださるファンの方がいるのを感じます。それにしっかり応えられるように頑張っていきます。
トライアルレースは強い先輩たちに負けずに自分の走りを思い切りできるように頑張ります。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA