今年4月にデビューした新人騎手は12名。その中でも順調に勝ち星を伸ばし、存在感を示しているのが金沢の中島龍也騎手。デビューしてから3カ月、明確な目標もできたようだ(インタビューは7月1日)。
4月にデビューして6月までで22勝。同期の中ではダントツの勝ち星です。特に1番人気馬では19回騎乗して、連対を外したのは1回だけです。
いや、まだぜんぜんですよ。(1番人気の連対率は)特に意識していなかったので、初めて知りました。一鞍一鞍がんばって乗るだけだと思っています。
では、まず騎手になったきっかけから教えてください。
小学6年か中学1年のころだったと思うんですけど、祖父が競馬が好きで、「運動神経も悪くないし、小さいんだから騎手でも目指してみたら」って。それまで競馬のことを意識はしてなかったんですけど、中学2年くらいから考えるようになって、そのうちに本気で目指すようになりました。中学を卒業して、茨城にある国際馬事学校に1年間行って、試験に受かって(地方競馬)教養センター入りました。
出身は千葉県ですよね。
千葉県の鎌ヶ谷市です。最初は船橋に所属したいと思っていたんですけど、教官に、「お前の人間性や技術じゃ通用しない」とか言われて迷っていました。そのうち、今所属している(金沢の)加藤和義先生が、調教師の試験を受けるための研修で3週間くらい教養センターにいらっしゃっていて、調教師試験に合格したらということで、先生から声をかけてもらいました。時期的にも1年の終わり頃で、どうしようかと思っていて、船橋だと乗り鞍に恵まれるかどうか不安だったので、それだったら金沢なら南関東より騎手の数も少ないし、乗せてもらえるんじゃないかということで金沢に決めました。
あらためて、ここまで22勝、勝率11.0%という成績はすばらしい。
(金沢では)新人が久しぶりということもあって、いろんな先生に乗せていただいてる感じで、乗り鞍には恵まれた中で、たまたま勝ててるのかなという感じです。でも乗っていて思うのは、やっぱり難しい。競馬はひとりでやってるわけじゃないので、まわりの騎手に気遣いながら乗るのが難しい。勝ち星なんて関係ないです。難しいに尽きますね。
1番人気や断然人気の馬でプレッシャーは感じますか。
そういう感じはないです。前の日に予想紙とかを見て、人気になっているときのほうがやっぱりやる気は出ます。印が付いてない馬よりは、印がついているほうがチャンスがあるってことですからね。
そういう意味では、わりといい馬に乗せてもらっていると。
「いい馬に乗りすぎてる」って加藤先生から言われます(笑)。
レースを見ていると、人気薄の馬に乗った時でも積極的に前に行こうとしているように見えます。
そうですね。やっぱりダート競馬ということと、減量のあるうちはそれを生かした騎乗もしないといけないんで。うしろのほうにいて、競馬を諦めてるんじゃないのかとか思われてマイナス評価になるんだったら、やっぱり前に行って負けたほうが悪い印象は与えないと思うので。とりあえず減量のあるうちは、減量を生かした積極的な騎乗を目指しています。
思い通りに乗れたレースはありますか。
10勝目のフレンドリーゼウスという馬で、それまで乗っていた藤田(弘治)さんから、「口が堅い」とか、「馬のうしろに入ったら掛かって乗り上げてしまうかもしれない」って言われていたので、内枠ということもあって、できれば前に行きたいと思って、いい感じに先行できたので、ペースを少し落として自分の有利なペースに持ち込んで。吉原(寛人)さんの馬がうしろから来てたんですけど、追い始めてムチを入れるとまた伸びてくれたので安心しました。
期待している馬はいますか。
3勝したグランラファルという馬と、4連勝したあと2着が続いてるんですけど、自分の厩舎で攻め馬からやらせていただいているトモヲエラババです。あと自分の初勝利で、2連勝したニシノオタフクですね。今ちょっと疲れてるんですけど、休んで調子を取り戻してくれたらまた勝ち負けになると思います。
デビュー前のインタビューでは、1年目の目標として減量がとれる30勝と言っていました。その目標はもうクリアできそうですね。
どうですかね、がんばりたいですけど。できれば(NARグランプリ)優秀新人騎手賞と、一番の目標は、プロスポーツ大賞の新人賞を狙いたいと思っています。(笹川)翼先輩(昨年のNARグランプリ優秀新人騎手賞)より上にいけばとれるのかなって。それを目指してやっています。
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※インタビュー・写真 / 斎藤修
金沢が熱い。昨秋のJBCの話ではない。今の話だ。金沢が誇る最強馬ナムラダイキチが11カ月の長い休養から復帰すると、6月15日には伝統の百万石賞を連覇し、秋の中央勢撃破へ名乗りをあげた。6月4日の東京ダービーではハッピースプリントで金沢のプリンス吉原寛人騎手が南関二冠目を制し、ジャパンダートダービーで三冠目を狙う。そして、忘れてはいけないのが、6月6日の東海ダービーで初めて金沢にタイトルを持ち帰った青柳正義騎手とケージーキンカメのコンビだ。地方では後続をすべて秒単位で突き放す"新怪物"の強さの理由や、ジャパンダートダービーへの意気込み、自身の今後の目標を青柳騎手に直撃した。
東海ダービー制覇おめでとうございます。レース前、自信はありましたか?
ありがとうございます。名古屋の強豪リーダーズボードが回避したので、一本被り(単勝1.4倍)で正直、緊張しました。輸送競馬は中央時代にも結果は出てませんし、金沢に来てからも初めてだったので、走ってみないと分からないと思ってました。
しかし、走ってみれば、金沢と同じような圧倒ぶりでした。
名古屋の馬はテンが速いと聞いていたので、位置取りが悪くなるかもと心配してました。でも、負けないくらいのダッシュができて、2番手につけられたので安心しました。道中も手応えがいいので、これなら大丈夫と思いました。3コーナー手前から先頭に立ちましたが、そこからも伸びましたし、輸送も関係なかったですね。
ケージーキンカメで東海ダービー制覇(写真:愛知県競馬組合)
リーダーズボードとの対戦が見たかったというファンの声が多く上がりました。
レース前は、不安もあって半信半疑でしたが、レースが終わった今なら、勝ち負けは分かりませんが、いい勝負にはなると思います。僕自身もすごく興味はありますし、あの馬と走ってみたいですね。
ケージーキンカメは中央では1秒1、3秒1、2秒5、4秒4、2秒3と5戦大差負けが続き金沢へ。でも金沢では1秒1、2秒4、1秒5、1秒0、2秒2、1秒3と6戦すべて圧勝と激変しました。
2月に金沢に来た時は先生(鈴木正也調教師)が攻め馬に乗ってましたが、テンションは高いし、乗り手の扶助には逆らうし、気性が難しかったです。3月から僕が乗り始めて、少しずつ走りに集中してきたのと、レースを覚えて素直になったのが大きいです。レースでも少々ハイペースで逃げてもバテないし、しまいもしっかり伸びる。とにかく心臓が強い。気性難が解消されて、強い心臓をフルに生かせるようになったのが、一変した理由です。乗り始めた頃は走らない馬とは思わなかったが、ここまで走るとは思わなかったので、びっくりです。本当に化けましたね。
普段はどんな馬ですか?
来た頃の気難しさがなくなって、今は基本的におとなしいですね。ただ、馬場に出るとテンションが高くなるところは今でもあります。
これまでの6戦の中で一番印象に残っているレースは?
やはり、東海ダービーです。会心のレースだったのもありますが、自分にとっては去年の北日本新聞杯に続く2度目の重賞制覇ですし、遠征での重賞制覇は初めてですから。
青柳騎手にとって遠征での初めての重賞制覇(写真:愛知県競馬組合)
次走はジャパンダートダービーと聞いてます。
前走後も何ともないし、輸送も大丈夫だったのは収穫。相手が強くなるので、胸を借りるつもりで挑戦しますが、僕の馬も、まだ底を見せていないので、どこまでやれるか、楽しみはあります。
金沢にはナムラダイキチという中央勢とも互角に戦える馬がいます。
いずれ対戦する日が来ると思いますが、名古屋での勝利でダイキチに挑戦する資格はできたと思ってます。ただ、時計だけを見たら差はないので、これからの成長も見込んで、いい勝負ができればいいですね(ケージーキンカメの5月13日の稍重1700mの勝ち時計が1分50秒0に対し、5日後18日の良馬場同距離でのナムラダイキチは1分50秒3。一杯に追われたキンカメと気合いをつけられた程度のダイキチとでは手応えが違い、単純比較はできないが、タイムはキンカメの方が速い)。
青柳騎手の勝負服はケージーキンカメの父キングカメハメハの金子オーナーと同じです。キングカメハメハ産駒にはよく似合う勝負服です。
ありがとうございます。教養センターにいる時、金子オーナーのクロフネが活躍していて印象的だったのと、僕の好きな青色が入っていたので、これを勝負服にしました。これからもキングカメハメハだけでなくクロフネやディープインパクト産駒の強い馬にも乗りたいですね(笑)。
今後の目標について教えて下さい。
昨年、ワイルドカード2位で出場したスーパージョッキーズトライアルに今年も出てみたいです。よその地区の上手な騎手と一緒に乗るのは、直線での追い方、コーナリング、仕掛けどころとか、勉強になったし、すごく刺激を受けました。今のところ、出場できるか微妙ですが(6月20日時点の金沢リーディングで2位とは4勝差の4位)まだ8月まで時間はあるので、2位までに入ってワイルドカードからでも出場したいです。あとは重賞の勝ち鞍を増やしたいです。今年はケージーキンカメがいるので、あと1つでも2つでも上乗せできればいいですね。
最後にファンの方へのメッセージを。
昨年には金沢ではJBCも行われましたし、ナムラダイキチも復活して、ケージーキンカメという未来のスター候補も出てきています。僕もケージーキンカメをもっと強くするように頑張りますし、馬も成長すると思いますので、これからも成長する姿を見に、競馬場に来てもらいたいですし、ネットでも見てもらいたいですね。
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※インタビュー / 松浦渉
金沢のトップジョッキー吉原寛人騎手は今年も各地へ積極的に遠征を続け、地元はもちろん全国区で存在感を示しています。そして今年、JBCが行われる金沢競馬の広告塔として様々な場所で宣伝活動も行ってきました。JBC開催目前の心境を伺いました。
秋田:今年は他地区に遠征をしながら金沢リーディングにも立ち、SJTへの出場も果たしましたね。
吉原:去年は半年ほど南関東にいましたから、金沢リーディングが獲れなかったことは悔しかったですが、自分のしたいことをした1年だったので実りある年でした。今年はその経験をもとに、遠征しつつも地元金沢でリーディングに立ってSJTに出場できました。自分の立てた目標通りに結果が出ているのは良いですね。
秋田:青柳騎手がトップの時期もありましたが、意識はしていましたか?
吉原:していましたよ! 青柳君も一生懸命でしたし、今まで立ったことないリーディングだったので『吉原さんの気持ちがすごく分かります。追われる立場って大変ですね』と話していましたよ。他の人は経験したことのない感覚だと思うので、それを青柳君と共有できることは刺激になります。
秋田:全国の競馬場に積極的に遠征している吉原騎手。そのモチベーションはどこから湧いてくるのですか?
吉原:デビュー1年目の中央遠征で初騎乗初勝利して、その後オーストラリアやドバイにも行って......。新人ではあり得ない経験ですよね。ほとんどの騎手は地元の競馬場で育って成長していくと思うのですが、初めから中央や世界を見てきた自分にとって、競馬はもっと広いんだよという感覚があるんですよ。だから若い時から、どこでも乗れるジョッキーという意識が生まれていたんでしょうね。自分のやってきた経験が今の自分をそうさせているのだと思います。
アメイジアで念願の南関東重賞初制覇(4月17日、川崎・クラウンC)
秋田:でも、正直なところ遠征が続くと疲れませんか?
吉原:移動が本当に辛くて......(笑)。慣れが一番大切ですよね。慣れていれば、移動でどのくらいの体力を使ってこのレースに臨めるなとか計算ができるんですけど、初めての場所だと移動での疲労の度合いが分からないので本当に大変です。でもいろんな場所で経験してきたので、もう分かるようになりました。日々の体調管理もすごく大事に思っていて、新人の頃よりサプリメントを飲むようになったし、ジムで体を作るようになりましたね。そういう部分ではプロ意識は高くなったかなと思います。
秋田:今年は、金沢競馬の広告塔としてJBCのピーアールもたくさん行ってきましたよね。JBC開催がすぐそこまで迫っています!
吉原:ここにきて、こういう取材が急激に増えたんですよ! だから、本当にJBCが近いんだなって(笑)。JBCにはこれまで何回か乗せてもらいましたが、すごい歓声なんですよね。僕がデビューしてから、金沢にそんなにお客さんが入った記憶がないんです。だからそれを経験できるのかなと思うとすごく楽しみです。
秋田:金沢競馬場の魅力は?
吉原:とにかく、食べ物が美味しい! 魚が美味しい! あと、良い感じの田舎なので、金沢に来たことのない人は泊まりがけで遊びにきてほしいですね。
秋田:では、JBCが行われる金沢競馬のコースについて教えてください。まず、JBCクラシックが行われる2100mは?
吉原:バックストレッチの奥からのスタートなので、直線が長いんです。だから力があればどの馬も良い位置が取りやすい。まぎれがあまりなくて力は出やすいコースですね。
馬の脚質的には、好位差しが一番良いと思います。金沢は逃げ馬がペースを握れるコースではないんですよ。どこでもマクレる広い向正面もあって、逆に逃げ馬がしんどくなるので、それをマークして競馬ができるのが理想ですね。
秋田:JBCスプリントが行われる1400mは?
吉原:オープンクラスだと、意外と(最初の)直線が短く、すぐコーナーだと思います。だから枠順も影響しますね。内に先行馬が多ければ、外から行ききれない可能性が高いです。外を回されると厳しい位置になってしまいます。だから、1400mの場合は枠順から勝負が始まりますよ。
秋田:そうすると1500mのほうが競馬はしやすそうですね?
吉原:そうですね。(4コーナー)奥からのスタートで直線が長いからまだ挽回はきくかなと。でも、1500mでも逃げ切れてしまうコースだと思うので、意外と面白くなるのではないでしょうか。
サミットストーン(7月28日、金沢スプリントC)
秋田:地元金沢からは、吉原騎手が騎乗するサミットストーンが注目です。
吉原:金沢に移籍してから具合も良いですね。ゲートに課題がある馬ですが、スタートで尾持ちするようになってなんとか形にはなったと思います。なかなか他地区の馬との力関係がわからなかったんですが、イヌワシ賞で高知のグランシュヴァリエなどに勝つことができたのは良かったですね。
白山大賞典では金沢の大将格ということで掲示板を確保できたけれど、今回の着差が中央勢との力差なのかなと。調教師ともスプリントのほうがいいかなぁとは話していますが相談ですね。ただJBCに出るならしっかり作戦を練って見せ場を作りたいと思います!
秋田:では、最後にJBCに向けてメッセージをお願いします!
吉原:金沢競馬でJBCができるなんて思っていませんでしたが、やるからには関係者一同、盛り上げたいという熱い想いがあります! 当日は、競馬の魅力を感じて欲しいですし、観光も兼ねて金沢の良い場所を巡ってもらいたいですね。そして、ファンのみなさんと一緒に盛り上がりたいです!!
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※インタビュー / 秋田奈津子
7月末現在、青柳正義騎手は金沢競馬のリーディング争いでトップを維持。8月に入ってリーディングの常連、吉原寛人騎手にその座をゆずってしまったが、その地位を取り返すべく、奮闘を続けている。
浅野:今年の金沢競馬場での勝ち星が、すでに昨年(53勝)を超えました。躍進の秘密はどこにあるのでしょう?
青柳:やっぱり福山競馬場に行ったことが勉強になりましたね。金沢とはコースの形が違いますし、なにより馬群が金沢より詰まりますし。金沢は最後の直線になればある程度バラけるんですが、福山だとそうはいかないんですよ。だから、少しでもロスを減らそうと考えました。具体的には、位置取りとコーナーの回り方ですね。
浅野:福山での成績は、88戦11勝でした。
青柳:金沢競馬場は強い馬が勝ちやすいコースだと思うんですよ。でも福山はそうではなくて、力が上でもひとつミスしたら勝つのが難しくなる感じがありました。あのきついカーブでインコースをピッタリとは、なかなか回れませんよ。でも渡辺(博文)さんとか、みんなうまく回ってくるんですよね。
浅野:そこでの経験が大きな糧になって、今年の快進撃につながっているのでしょうね。
青柳:金沢での乗り方も昨年までとは違っていると思います。自分でも3~4コーナーをキッチリ回ってくるようになったと感じています。あと、福山ではロスをなくすために、誰がどこにいるのかとか、周りをよく見るように心がけたんです。それを金沢でも実践していることも、去年とは違うところです。それから、例年は金沢競馬の開幕日が久々の実戦となるんですが、今年は冬の間も競馬をしていましたから『いつもより体が動くなあ』という感覚がありました(笑)。
浅野:それ以前の冬はどういう過ごし方をしていたのですか?
青柳:岡山県の栄進牧場久世育成センターに何年かお世話になりました。そこでは2歳馬の育成が主な仕事になるんですけれど、金沢ではなかなか乗れないようなすばらしい馬がたくさんいますから、それはそれで勉強になりました。岡山ではエーシンクールディにも乗ったことがありますよ。
浅野:でもやはり、育成の現場と競馬場とでは得るものが違ったということですか。
青柳:そうですね。福山に行ったのは、金沢の調教師さんに、福山に冬の間は馬と一緒に遠征に出るから手伝ってくれないかと言われたことがきっかけでした。でも、行ったことがないところだし、福山には(教養センターでの)同期もいないし、不安がありましたね。行ってみたら、まったく問題なかったんですが。
浅野:そして、金沢での快進撃。周りの評価などはどうですか?
青柳:リーディングになっているのはたった3カ月とか4カ月程度なんですけれど、馬主さんや調教師さんにいろいろと声をかけていただきますし、明らかに昨年とは違う感じがありますね。でも個人的には、まだまだだと思っていますよ。デビューしてからしばらくは成績もよくありませんでしたし、先輩騎手などからは騎乗についてアドバイスを受けたことがありますが、"コイツはライバルにはならないな"と思われていたからこそ、教えてもらえたんだと思いますし。
浅野:確かにリーディング10位以内に入ったのは、昨年が初めてです。
青柳:デビュー当初に現役だった渡辺壮さんは、僕なんかがマネなんてできるわけがない、というレベルでした。どうやったらあんなに楽に乗れるのかと......。それでも平瀬(城久)さんとか吉原(寛人)さんとか、参考にしてきましたね。ただ、自分が吉原さんの乗り方を真似しても、しょうがないと思うんですよ。体型も違いますし。自分としては、柔らかく乗れて、いい位置につけて差す競馬ができるという点をアピールしたいですね。現在の金沢競馬場は昔と違って、内をさばいても勝てる馬場になってきましたし。
浅野:ただ、吉原騎手が成績を伸ばしてきました(取材日の7月29日時点では青柳騎手が2勝差でリード)。
青柳:なんとか、スーパージョッキーズトライアルの出場権を獲得したいと思っているんですけれど......。
浅野:第1ステージは青柳騎手の出身地(千葉県印西市)近くの船橋競馬場です。
青柳:船橋競馬場は車の窓から眺めた記憶はあるんですが、行ったことはないかも。子供のころ、父によく連れて行ってもらっていたのは中山競馬場です。その中山競馬場で叔父が馬場を作る仕事をしていて、その人に騎手という仕事を勧められました。当時は体がすごく小さかったんですよね。で、その気になって、小学4年のときに「将来は騎手になる」とクラスメートに話していたくらいです。初めて馬に乗ったのは、教養センターでの試験のときなんですけれど(笑)。
浅野:となると、地元に凱旋しての騎乗、実現させたいですね。
青柳:そうですね。それに、この仕事をしている限りは、やっぱり一番になりたいですから。
浅野:ところで、青柳さんからいい香りが漂ってくるんですが。
青柳:一応、(調整ルームの)外に出るので、香水をつけておこうかなと思って。自分の部屋にもありますし、ルームの部屋にも置いてあります。僕らは慣れているから感じないんですが、競馬場以外の人からは馬の匂いがするとか言われることが多いので。
浅野:ということは、独身?
青柳:ハイ。前は合コンとかにも行っていましたが、最近はあまり......(苦笑)。
でも今は本業を一所懸命にするべき時なのでしょう。8月18日現在の成績は第2位ということでワイルドカード(9月10日・門別競馬場)からのスタートとなりましたが、そこを乗り越えてスーパージョッキーズトライアルの舞台に立つことができるのか、注目です。
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※インタビュー / 浅野靖典
白山大賞典JpnIIIでは中央の強豪を相手に2着と健闘したナムラダイキチ。金沢の王者として君臨する、そのナムラダイキチの主戦をつとめるのが、デビューして12年目を迎える畑中信司騎手です。今年のシーズン前には福山での期間限定騎乗でも結果を残し、金沢のトップジョッキーのひとりとして活躍中です。
大川:白山大賞典ではナムラダイキチで2着。
畑中:くやしいですねえ。もうちょっとがんばれるかな、とは思っとったんですけどね。周囲の期待は感じていましたね。レース中も、1周目スタンド前でスゴい声援があったんで、うれしかったです。道中、ボクがイメージしていたのよりペースが落ち着いたんで、向正面ぐらいで、『あ、これは3コーナーまでガマンすると、逃げてるエーシンモアオバーが残っちゃうな』と思ったんですよ。ニホンピロアワーズの手応えはハンパなかったんでね。『あ、ちょっとこれにはかなわんな』とは思ったんですが、エーシンモアオバーはかわしたいなって。
大川:ペース上がらず、よくなかった?
畑中:ああ、そうですね。2コーナーの立ち上がりのところで、一度ひかえてから外に出す感じになっちゃったんですよね。もうちょっとペースが上がっとったら、ひかえて出すっていうより、流して出せたんですけどね。できるものなら、もうちょっとスムーズに、サーっと出していけたらよかったですね。
大川:残り800を切る前に動きました。
畑中:ペースが遅いなと思ったのもあったし、外に出したときにダイキチがいい感じにちょっとハミとっちゃったんで、無理矢理おさえるよりも、このまま流してったほうがいいかなと思って。交わせるなら交わしちゃったほうがよかったんですけど、内の手応え見たら、もう絶対かわせないなと思って(笑)。それほどニホンピロアワーズの手応えは、良さそうでしたね、横で見とって。3コーナー過ぎまで行ってから、一瞬ビュッて離されたじゃないですか。離されて、直線入ってからちょっとフワフワしたんですよ、ニホンピロアワーズが。その時にもう1回、交わせるかなって思って(笑)、がんばってみたんですけど、でも追いつかなかったですね。
イヌワシ賞(2012年9月4日)勝利時のナムラダイキチ(撮影:石川県競馬事業局)
大川:ナムラダイキチはよくやったという声も大きいですが?
畑中:ゴールしてからも、上がってきたら、「ようがんばった!」って、ファンの方から。負けたのにねえ、大きな声援を(笑)。2着でようがんばったって拍手もらったり、声援をあびるのは初めてですね。また来年はいいとこ見せられるように、交流重賞でがんばるので、応援よろしくお願いします。ボクも、『ナムラダイキチさん、ホント、ありがとうございました』って感じです(笑)。
大川:その後のナムラダイキチは?
畑中:涼しくなったせいか、またより一層元気になっちゃいましたね(笑)。白山大賞典でけっこうダメージ食らうかなと思ってたら、逆に元気になった(笑)。若さなんやろなあと思いますけどね。回復力がハンパねえな、って。タフですわ、ホントあの馬。
大川:ナムラダイキチは、これまでに出会った馬のなかで...。
畑中:一番ですね、やっぱ。レースに関しても無駄な動きをしないですね。遅くなったら遅くなったペースで走れるし、速くなったら速くなったペースでも走れるし。無駄に、こう、ガーって引っかかったりとかしないんですね。で、行くときはちゃんと行ってくれるし。一完歩がでかいですね。それもいいところだし、頭もいいし。競馬に行っても頭がいいですね。教えられることばっかりですね。
大川:出会ったことについて。
畑中:ホント感謝してますよね。ダイキチさまのおかげで、ボクもこうやってインタビューを受けさせてもらったりとか、みんな注目してくれたりとか。結局、乗り役なんて見られてナンボの商売ですからねえ。ホントありがたいです。
大川:騎手になったキッカケは?
畑中:中学校のときに、アレを見に行ったんです、阪神大賞典。96年の、ナリタブライアンとマヤノトップガンの一騎打ち。ナマで見て、うわ、めっちゃカッコええやん、って。競馬ナマ観戦は、そんとき初めてだったんですよ。テレビでしか見たことなかったのが、初めてのナマで、あの一騎打ちを見てしまって。乗り役になりたいなと。母に騎手になりたいって言ったのは、中学校の進路相談の三者面談のときにね。先生に「畑中くん、何にするの?」って聞かれて、「ボク騎手になります」って言ったら、「はぁ!?」って(笑)。お母さんも初耳、先生も初耳(笑)。結局、ダメだって言われて高校に進学したんですけど。高校3年生のまた進路相談のときですわ、先生に「どうするんや」って聞かれて、「進学します」って言って、「進学ってお前、学力ないのに進学できんぞ」「いや騎手になりたいんで、その学校に」って言ったら、その先生も、「そんなんなりたかったんや」っていうふうで、けっこう動いてくれたんです。一度、中央の試験受けて、不合格で。で、近くの貝塚市にある牧場、春木競馬で厩務員やってた方の牧場かな、そこで「お願いします」って言うたら、「そんなら知ってるやつが金沢で調教師やってるから、そこで面倒見てもらえや」みたいな。そこで(現在の師匠である)寺田茂先生を紹介してもらいました。
大川:ナムラダイキチとコンビを組んでもうすぐ1年、冬季の期間限定騎乗でも結果をだしました(騎乗期間終了時点で福山リーディング1位)。
畑中:福山では、そんなに勝てると思ってなかったんですけど、行く前に寺田先生にも気合い入れられて。春木におった厩務員さんとかが福山で働いてるとか、けっこうおるらしいんですわ。「お前、オレの勝負服着て行くんやから恥をかかすなよ」って。ボク、先生の勝負服デザイン、もらったんですよ。乗り役として、コレはみんなよりうまいんちゃうかなあと思うワザをみがかないといけないな、と思うんですけどね。逃げるのは、あんま好きじゃないんですけど、周りのひとから見ると、『逃げたら残るじゃんアイツ』、みたいに見られることが多いんですよ。でも、ボクとしては、逃げ方が上手くなったのは、福山での騎乗が大きいですね。アレはホント勉強になりましたよ。ホント、今年は上手な逃げ方を覚えさせてもらったなあ、あの競馬場では。ダイキチに乗るようになって、乗り役として、自信が持てるようになりましたね。他のレースでも、落ち着いて周りが見えるようになりました。余裕、ゆとりがあるから、『ああ、前にコレとコレとコレがおって、ああ、コレとコッチは下がるし、コレの後ろではアカンし』みたいな。以前よりそういうものを、敏感に感じるようになりましたね。気持ちにゆとりができたんでしょうね。他の馬に乗っても、その馬の力のある程度の容量なんかを、敏感に感じるようになりましたね。もう今年は、ダイキチでも福山でもスゴい勉強させてもらいましたね。ホント、充実した1年でした(笑)。
大川:まだ今年、終わってませんが(笑)。最後に金沢を代表する騎手としてひと言。
畑中:ボク自身、知名度が上がるような活躍して、金沢競馬のために宣伝でもなんでもして、普段は競馬しないひとでも、「あんなイケメンジョッキーが乗ってるなら行ってみようか」って思ってもらえるならうれしいですね(笑)。
大川:金沢競馬のイケメンは誰ですか?...畑中騎手以外で。
畑中:ボクをのぞくとですか? ドングリの背比べですね(笑)。
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※インタビュー / 耳目社・大川充夫