3月に取手競輪場で行われたウィナーズカップ(GII)での『ガールズケイリンコレクション2024取手ステージ』でビッグレース初優勝を飾った坂口楓華選手(愛知112期)。そのレースの振り返りを中心に今年のGIやレースへの意気込み、理想の自分像などのお話を伺いました。
山口みのり:まずは取手でのガールズケイリンコレクション、優勝おめでとうございました。
坂口楓華選手:ありがとうございます。
山口:少し時間も経ちましたが、優勝した瞬間はどんな気持ちでしたか?
坂口:走る前から気持ちは高ぶっていて、「もし自分が優勝したら」という想像はしていたんです。私は結構泣き虫なので「優勝をしたら絶対泣くだろうな」と思っていたんですが、意外と冷静でした。それよりもほっとしたという気持ちが大きかったです。自分の理想とする勝ち方ではなかったのであまりガッツポーズも大きくはできなくて、すぐには実感が湧かなかったですね。
山口:そうだったんですね。
坂口:ファンの方が「坂口おめでとう!」と声を掛けてくださって、嬉しくて優勝を実感しましたが、でも自転車を降りて検車場へ戻る時は「あれ、私が優勝をしたの?」とフワフワした感じでした。
山口:優勝をした時を想像していても、実感はあまりなかったんですね。
坂口:はい。夢のようでした。
山口:レース内容を振り返ります。内側に包まれる時間が長くありましたがあの時の気持ちはどんな感じだったんでしょう?
坂口:動けなくなったのは焦ったんですが、体感では時間がゆっくり流れていて「絶対に前は空くだろう」という確信があったんです。だから焦っている反面、落ち着いている部分もありました。走る前には、今までやってきた大変なトレーニングのことがよみがえってきて「これだけ大変な練習をしたんだから悪い結果にはならない」と思っていたのも落ち着いて走れた要因だと思います。絶対にチャンスが向く!というのはずっと思って走っていました。
山口:最後まで落ち着いて脚をためられたんですね。
坂口:はい、落ち着いていました。
山口:日が経って、ご家族や周囲の反応もあったかと思いますが、そちらはいかがでした?
坂口:一番は母がすごく喜んでくれて「誇りに思うよ」というメッセージが入っていたのと、いつも指導してくださっている市田佳寿浩さん(元選手)からもメッセージをいただきました。それが凄く嬉しかったです。私の優勝で周りの人が喜んでくれて、今までの頑張りが報われた気がしました。
山口:以前お話を伺った時も市田さんに練習を見てもらっているという事でしたが、継続して見ていただいているんですね。
坂口:はい、この先もずっとお願いしようと思っています。
山口:その辺りは後でじっくり伺わせてください。コレクションの優勝で、自分の中の気持ちの変化はありましたか?
坂口:特に変わっていません。攻める気持ち、常にチャレンジャーと思っているのは変わりません。でも私が変わらなくても周りはそうではなくなりました。見られる立場になったと感じています。
私は、客観的に物事を見るようにしていて、自分中心ではなく他人が私をどう見ているかというのを重視しています。その視点で見ると、コレクションを優勝した後のレースがすごく重要だと考えていました。
絶対にしっかりしたレースをしないとだめですし、下手なレースや格好悪いレースをするとファンの方にも「坂口、たいしたことないね。優勝はまぐれだね」と思われてしまいます。そう思われないためにしっかりしたレースを心掛けていました。
山口:その思いのままコレクション後は完全優勝が2度あり、どちらも強いレースでした。ただ苦しい展開の時もあったと思います。4月平塚の決勝で奥井迪選手(東京106期)がカマシて先行し、他の選手や5番手にいた坂口選手と車間がすごく空いたレースがあったと思うのですが、振り返りをお願いします。
坂口:私が2コーナー5番手から捲りにいくまで、奥井選手があんなに前にいってしまっているとは気づかなかったんです。でも冷静に「絶対に今の自分なら捲り切れる」と信じて、とにかく踏みました。
山口:あれだけの差で届いて優勝というのは震えました!
坂口:久しぶりに、自分でも強い走りだと思いました(笑)前にいるのが奥井選手だったこともあり、届いたのは嬉しかったです。
奥井選手は強い選手ですし、最近は開催が一緒になることが多くよく話すのですが、奥井選手もまだ上を目指しているのが話していてわかります。ずっと背中を追いかけてきた選手の一人なので、「奥井選手が頑張り続けるのなら、私はもっと頑張らないと!」と負けないように強い気持ちを持っています。でもそんな偉大な先輩選手がたくさんいるのがありがたいです。
山口:ありがとうございます。素敵なお話でした。
強い気持ちと言えば、以前に連勝が途切れた後にお話を伺った時も、「負けた時のことを考えておきなさい」との市田さんのアドバイスで気持ちを整えたというエピソードが印象に残っています。
坂口:市田さんに教わりだして1年以上経つのですが、人としての成長という部分でも学びがたくさんあります。自然とそういう思考になってきているなというのは、最近自分でも思いますね。
山口:人として成長できているというのは素敵なことですね。
坂口:魅力のある人になっていきたいので、そういう意味でもしっかりした人でいようというのは心掛けています。
山口:お話を伺っていると周囲の目線とかプレッシャーを感じるよりも、自分自身へ強いプレッシャーを掛けているように思えました。
坂口:そうですね。周りの意見はあまり気にしないです。それよりも「私がどういう風に見られているか」を気にしますね。どうしたらみんなに憧れてもらえる選手、人になれるかというのは考えることが多いです。格好をつけているだけかもしれません(笑)
山口:でも大切なことじゃなんでしょうか(笑)トップ選手になるという自覚を持つということですよね。
坂口:そうですね。今まで一流の選手に教わってきたことも含めてかもしれません。市田さん以外にもたくさんの先輩方が教えてくださった「一流の選手=〇〇」という教えがあり、自分が少しずつそこに近づいていっていると良いなと思います。まだなれているかはわかりませんが、そこへ向かっているという実感はあるので今は充実している選手生活です。
山口:理想の「坂口楓華」像はどんな感じですか?
坂口:謙虚な人でありたいです。どれだけ勝っても納得はせず、まだ先を目指す。強くなることだけを考えている。レースを走るときには力強く走れるように、でも自転車を降りたらちゃんとした人でいたいですね。
山口:昨年は初めて1年を通してGIがありました。GIのなかった1年と比べて昨年を振り返っていかがでしたか?
坂口:まだGIができていない頃の私だと、ここまでビッグレースで結果を出せるようになるとは想像は出来ませんでした。こんなに自力で戦って勝負ができる選手になるとは思っておらず、自分の成長に、私が一番驚いています。でも常に成長を続けていきたい。性格的にも後ろには戻りたくないから常に全力で練習をしています。だからではないですが毎年強くなっている、1年の最後にはそうありたいです。
うまく言葉では言えないですが、GIができたことで1年間ずっと頑張り続けられるモチベーションの維持、アップになっています。
山口:近々の目標が定められるんでしょうか。
坂口:GIがない時だと単発のコレクションが1年に何度かありましたが、まずそこへ走る7人に選ばれることがとても難しかったです。出られない選手は賞金を積み上げてガールズグランプリを目指さないといけません。GIが新設されたことで、優勝をしたらグランプリの出場権がありますし、ビッグレースでの賞金の積み重ねも大きいです。それは私にはとても良かったなと思いました。
今はGIを含めビッグレースに出られるようになってきて、自分の力がどれくらいかわかってきたと思います。
山口:オールガールズクラシック(GI)は第1回、第2回とも特選という位置づけのティアラカップからのスタートでした。有利な所から走れるというのはこれまでの賞金の積み重ねですもんね。
(注:オールガールズクラシックは賞金ランキング上位からティアラカップを走れる)
坂口:そうですね。上にいた方が勝てるチャンスが増えます。優勝にも近づくと思うと、普段の開催で勝ち続けるのは大切です。そういう意味ではどれだけキツイ練習でも耐えられるようになりました。たしかにキツイんですが、その練習をした方が後々が楽になると気付いたんです。
山口:一番きついのは、ガールズグランプリ出場が決まる最後のGI、競輪祭女子王座戦(GI)で賞金ランキングのボーダーにいるということでしょうか。
坂口:そうなんですよね。だからまわりまわって普段の練習が大切だということを、市田さんに練習を見てもらうようになって本当にキツイ練習もたくさんありますが、その分勝利に近づくというのがわかったんです。
山口:そうでしたか。では今年の目標は何ですか?
坂口:まずは賞金ランキングベスト3に入ることです。その位置でグランプリを迎えるのを目標にしています。もちろんGIの優勝やグランプリの優勝も目標ですが、それは長期的な目標という位置づけです。ただタイトルを取りたいというのは今年の目標の一つでしたので、それはコレクションを優勝したことで一つ達成できたのは良かったです。次はGI優勝を目指したいです。
山口:続いて練習面のお話を伺います。1年以上市田さんに指導をというお話でしたが、練習内容に変化はありますか?
坂口:どんどん強度が上がってきつくなっています。最初は基礎の練習が多かったですが、今は基礎もしつつ質も上がっています。ただ内容は大きくは変わっていません。
山口:引き続き室内練習が中心なんですか?
坂口:そうですね。競輪場はほとんど練習では入っていません。
山口:コレクション優勝と結果が出ていますし、練習内容は坂口選手に合っているんですね。
坂口:実は最近市田さんとも話したんですが、バンクでの練習を増やそうと思っています。バンクでの練習は走行のスキル向上には必要なんです。
例えば捲りに行くときのカント(傾斜)を走るのは私はまだ技術が足りません。普通のレースでは捲りにいっても2車の並走をこえるのはありますが、GIやトップ選手との対戦になると全員が捲りに行く瞬間もあります。最近はスプリントのように他の選手を見て動くことも多いため、バンクのどこを走るか、加速をどうつけるかなどの技術面は実際にバンクを走らないとわからないんです。だからこれからはもう少しバンクでの練習を増やしていく予定です。
山口:確かにビッグレースでは全員が一気に動く時がありますね。一番外の捲りだと普段の練習では走らない位置かもしれませんね。
坂口:そうなんです。私は普段のレースで早い仕掛けも多いので、先頭に出たら内外線間という一番走りやすいところを走っていますが、ビッグレースではそうはいきません。だからバンクに入らないとわからないことも多く、上位の選手には劣るかなと思っています。
山口:自分ではなかなか気づかないところのような気がします。
坂口:そうですね。自分が気づかないことも市田さんがアドバイスをくださるので、自分がまだまだ足りないことがわかります。だから優勝を続けてもビッグレースで勝っても、調子に乗らずにいられるのだと思います。まだ上を目指せるアドバイスを常にくださいますね。
山口:先日、市田さんとオッズパークの配信でちょうど坂口選手のレースを予想していたのですが、「坂口選手は最近タイムも出ているしまだ強くなるよ」と仰っていました。
坂口:そうなんですね。嬉しいです。市田さんが凄い方なので、私以上に私のことを全部把握してくださっています(笑)市田さんに出会わなかったら、私の競輪人生はここまで輝けなかったと思います。まだまだ始まったばかりですが、こんなに輝かせてもらって一言では表せないくらい感謝しています。
山口:頑張り続けるのはしんどくはならないですか?
坂口:ならないです。むしろ感謝しているので、もっともっと結果を出してもっと喜ばせたいです。市田さんもですし、家族や周りの人たちも。私がどこまで強くなるのか一緒に見届けてもらってワクワクして欲しい。そんな気持ちが今は大きいです。私自身も「自分はどこまで強くなるんだろう」と楽しみながら自分を見ています。だから頑張れます。あと少しは(笑)
山口:すごいですね!
では話は少し変わりますが最近はオッズパークの事前配信にも出演していただける機会も多くありますが、出演はいかがでしたか?
坂口:正直、ちょっと苦手です。喋れないんですよ。普段は全然大丈夫なんですが、カメラの前とか放送だと緊張もしますし、今回は小林莉子選手(東京102期)と吉川美穂選手(和歌山120期)の先輩お二人とだったのでより緊張しました。特に事前配信などは同じGIを戦う相手だったので素は出せないですし、思っていることやレースについても多くは語れなかったので難しかったです。ただ少しずつ自分をアピールしていかないとなとも思っているんですけどね。
山口:笑顔が見える場面もありましたよ。
坂口:いや、まだまだですね。自分ではダメだな、まだまだ頑張らないとなと思います。
山口:ガールズ選手は取材も多いですもんね。
坂口:はい。でも取材は「私じゃなくて良いのに」と思うんです。
山口:いや、そんなことは絶対にありません!坂口選手の話を聞きたい方もたくさんいます。
坂口:話すよりも走りで見せたいです、そっちの方が得意なので(笑)
山口:そうですか(笑)走りも!期待しています。アピールという部分では、今はオールスター競輪の選考期間ですね。
坂口:数年前は出場できる選手が羨ましいなと思っていたのですが、最近は吹っ切れて、まず走りで自分の良さを知ってもらってどれだけ惹きつけられるかという思いで走っています。ガールズは容姿の部分で選考されることもあると思うのですが、数年前の私は脚力でファン投票上位の選手に叶わないなと思っていたので悔しかったんです。弱かったから走りではアピールできない、と。
でも今は、徐々に脚力で勝負ができるくらいの力が付いてきたと思えるので、私は私の良さがある、走りでもっとファンの方に知ってもらうために「B回数を20本以上とる」「競走得点を上げる」など、少しずつ目標を達成していって、アピールを頑張っています。
オールスター競輪は人気選手が走れるビッグレースです。票数は自分の価値だと思うので、結果で直接反映される。数年前までは「自分の価値ってこれくらいなんだ」とすごくショックでしたし悔しかった。そこからは「いつか絶対に見返してやる」という気持ちでいましたね。私の魅力を知ってもらうために、常に全力でレースをしようと。最近は私の存在を知ってもらえたのか、応援も多くあり嬉しいです。それだけで力になるし充分なんですが、私に投票してくださった方もいるので、私自身もSNSで呼びかけたり全力でアピールし、その結果レースで返せたら良いですね。後はお客様が決めることなので何とも言えませんが。
山口:車券の結果でたくさん貢献してるというのはかなりのアピールだと思います。
坂口:はい。でもオールスターはそことは別の部分がありますよね。でも今年は少しだけ期待したいと思っています。
山口:ありがとうございます。素直な思いを聞かせていただきました。それでは最後に今後へ向けて、オッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
坂口:まずはいつも温かい応援をしてくださってありがとうございます。この1年は充実した競輪生活を送れていますが、もっともっと上を目指したいと思っています。私は、デビューをした時に「化け物になりたい」と言っていたのですが、それくらい強くて、みんなの手が届かない存在になれるように毎日頑張って練習をしています。理想の自分に近づけるようにこれからも頑張ります。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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4月4日から開催された川崎市制100周年記念桜花賞海老澤清杯(GIII)において自身3度目の記念優勝に輝いた嘉永泰斗選手(熊本113期)に喜びの声を伺いました。
大津:川崎記念(GIII)優勝おめでとうございます。
嘉永:ありがとうございます。
大津:通算3度目の記念優勝ですがお気持ちはいかがですか。
嘉永:3月は流れが悪かったので4月に入って1発目のレースで優勝出来て嬉しかったです。
大津:シリーズを迎えるにあたっての状態面はどうでしたか。
嘉永:状態はかなり良かったと思います。色々と元に戻したんです。そうしたら練習での感じも良くて、「なんかイケるなぁ。」って感じがありました。
大津:元に戻したっていうのは、3月の流れが悪かったことが原因なのでしょうか。
嘉永:それもありますし、練習自体がしっくりきてなかったんです。だから、どうしようかなぁと。シューズのサンだったりを良かった時のものに直してみたらそれがしっくりきたんです。
大津:ウィナーズカップ(GII)は失格もありましたが、初日のレースは強かったように感じました。
嘉永:レースはなんか悪くはないんですけど、練習の時の感覚ですかね。一年くらいしっくりきてなくて。レースは良いんだけど、練習はダメみたいな。
大津:それは感覚として気持ち悪そうですね。
嘉永:そうなんです。昔は練習してても良いなって思うときはあって、その時と何が違うんだろうって考えた時にサンとかを変えたなって、それで元に戻してみようって思いました。戻したら感覚的にバチっときました。
大津:初日は同県の先輩の松岡貴久選手(熊本90期)と見事ワンツーが決まりました。
嘉永:予選回りだったので無理してでも力でねじ伏せようって思って早めに仕掛けていきました。感覚としては2走目以降から良くなったと思います。
大津:松岡さんとも久しぶりの連携だったのではないですか。
嘉永:そうですね、久しぶりでした。松岡さんとは昔から相性が良いんですよ。とても走りやすいですし、ほとんど決まってるんじゃないですかね。
大津:練習も一緒にするのですか。
嘉永:練習は一緒じゃないですね。レースの時だけです。
大津:さきほどお話がありましたが、2走目も強いレースでしたね。
嘉永:新山さん(新山響平選手・青森107期)の上を捲っていったんですが、あのレースが一番手ごたえがありました。初日はちょっと自分のタイミングではなく無理やり仕掛けたんで重かったんです。新山さんの先行を捲れたのは自信になりました。
大津:そして準決勝戦ですがSNSでも嘉永選手の強さが話題になっていました。
嘉永:古性さん(古性優作選手・大阪100期)が3番手を取り切ったので、やっぱり上手いなぁと。古性さんの脚が溜まる前に仕掛けたらチャンスがあるかなって思って、あそこで仕掛けました。古性さんを乗り越えられたので良かったです。
大津:自分が行くべきタイミングで仕掛けられているというのがあるのでしょうか。
嘉永:それが間違いなく一番大きいです。「ここだ!」って時に身体が反応してくれたので、それが良かったです。
大津:今節は嘉永さんが優勝じゃないかという声も多く聞こえました。
嘉永:3日目が終わった段階で北井さん(北井佑季選手・神奈川119期)や眞杉(眞杉匠選手・栃木113期)が勝ち上がってなかったのでチャンスあるなとは正直思っていました。
大津:ただ、郡司選手(郡司浩平選手・神奈川99期)や古性選手、新山選手と決勝戦はメンバーが揃いました。
嘉永:逃げる人が新山さんで、郡司さんや古性さんは位置を取って捲るタイプなのでみんな新山さんの後ろが欲しくて動いて動いてのレースになるだろうから自分で先に動いて取れた位置から捲ろうって考えてました。
大津:新山選手の初手の位置はどう考えていましたか。
嘉永:いつもは前をとっての突っ張り先行ですが、決勝戦は位置をとっての捲る人が多かったので後ろ攻めのレースもあるなって思ってました。今年のいわき平記念(GIII)の決勝戦でも後ろ攻めだったので、そこを経験していた分、対策はしやすかったです。
大津:いわき平の決勝戦では「新山選手の後ろ攻めは意外だった。」って仰っていましたもんね。
嘉永:そうですね、その時は前を取っての突っ張りだと思ってました。けど、後々考えた時に他に先行屋がいない時は自分たちのように新山さんの後ろが欲しい人たちが勝手に動くので、そこを動かしてから行ったほうが良いなって新山さんも思ってんだろうなって感じました。だから川崎記念の決勝戦も同じようになるんじゃないかと。
大津:最後の勝負所はいかがでしたか。
嘉永:郡司さんと松本さん(松本貴治選手・愛媛111期)が前で絡んでいたので行くタイミングが出来ましたね。それがなかったら郡司さんも先に捲ってたでしょうから。
大津:佐藤慎太郎選手(福島78期)のブロックもありましたね。
嘉永:あそこは来るだろうなってのは分かってはいたのですが、やっぱり強烈でしたね。
大津:優勝した時はどんなお気持ちでしたか。
嘉永:素直にやったー!って感じです。
大津:レース後は松岡選手たちと打ち上げなどはされたのでしょうか。
嘉永:いや、僕はその日のうちに帰りました。川崎からだと帰れるので当日に家に着くように飛行機のチケットも予め取っておいたんです。
大津:帰ってからは直ぐに練習されたんですか。
嘉永:5月にはダービー(GI)が控えてますから。元々そっちに目標を置いて頑張っていたので直ぐに練習しました。
大津:良い状態でダービーを迎えられるのではないですか。
嘉永:川崎記念も終わってしっかりと練習も出来ているので楽しみです。
大津:ダービーは特選からのスタートです。
嘉永:これはかなり大きいですよね。予選よりアドバンテージがあるんで3着以内には入りたいですよね。
大津:日本選手権(GI)ではどこに目標をおきますか。
嘉永:まず準決勝戦ですね。そこに乗れたら決勝戦をって感じです。
大津:決勝戦に勝ち上がればタイトルも見えてきます。
嘉永:そうですね、それにダービーは賞金が大きいので優勝じゃなくてもグランプリへ向けて賞金面でもかなり違ってくると思うので頑張りたいですね。
大津:そしてダービーが終わりますと7月には熊本競輪場でのレースが再開されます。
嘉永:109期以降の選手はまだ地元を走れてないので、借り上げではなく本当の地元でお客さんの前で走るのが楽しみです。一発目の記念も獲りたいですし、熊本勢みんなで決勝の舞台に上がっていきたいですよね。
大津:来年には全日本選抜競輪(GI)の開催も決まりましたもんね。
嘉永:地元のGIで優勝出来たら最高ですよね。
大津:同期の眞杉選手が昨年はタイトルを獲りましたし、タイトルへの意識もより強くなったのではないですか。
嘉永:刺激になりますし目標になりますよね。「よし、一丁やってやろう。」って気持ちになります。
大津:ここから今年が終わるまでの目標を聞かせてください。
嘉永:GIの決勝に乗ってタイトル争い出来るようになりたいです。
大津:最後にオッズパークの会員の皆様にメッセージをお願いいたします。
嘉永:ダービーも控えていますし、今年は熊本競輪場も再開するので、もっと活躍出来るように頑張ります。応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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今回は去る3月17日に決勝戦が行われました伊東温泉競輪GIIIナイター・≪令和6年能登半島地震復興支援 花と海といで湯賞 関西・大阪万博協賛≫で優勝した岩本俊介選手(千葉94期)にシリーズ4日間のお話をうかがいました。
大村:およそ2年ぶりとなるGIII優勝おめでとうございます。
岩本:ありがとうございます!
大村:好調を維持する岩本選手、直前の京王閣FIを3連勝で弾みをつけて前検日を迎えましたね。
岩本:中6日でしたのであまり調整はせず、いつも通りの練習量をこなしました。
大村:前検日のコメントは「普通の状態がずっと続いている。」とのことでした。岩本選手にとっての普通とはなんですか?
岩本:練習をきっちりとこなして、レースに臨める状態・戦える状態と思ってください。
大村:さて、初日特選の番組をご覧になっていかがでしたか。
岩本:初日は根田君(根田空史選手・千葉94期)といっしょでした。自分も自力型なんでその都度どうするか話すんですけど、根田はバック数も凄いし何度も付いてるので番手を回りました。
大村:同期同士で気心知れた連携ですね。
岩本:ええ!中村の(中村浩士選手・千葉79期)道場でお世話になっていて、根田君とは練習仲間でもあるんで(根田選手の)先行力に任せました。
大村:3番手は地元の岡村潤選手(静岡86期)でした。事前の作戦は?
岩本:もう根田の好きに走ってもらう、ただそれだけでした。初手も取れた位置からで...余計な注文はしませんでした。根田の仕掛けやすいタイミングで動いてくれればいいですから。
大村:展開は青板で小川真太郎選手(徳島107期)が中団で牽制しつつイン斬り、根田選手は赤板HSから上昇します。南関ラインの後ろには初手から単騎の谷口遼平選手(三重103期)がいました。
岩本:ダッシュ力のある谷口が追っていましたけど、まず道中で注意したのはインコースで粘られず出られるかでした。ラインが空中分解しないよう追走しました。
大村:小川選手の飛びつきを警戒しつつ・・・。
岩本:ええ。根田はそこも気を使ってくれて、僕と潤さんまで3人で出切れるようにうまく抑えてくれました。
大村:最終HSからは吉田拓矢選手(茨城107期)が捲りました。
岩本:初日の対戦メンバーの中では彼が一番縦脚があって思った以上のスピードで来ました。一度振ったんですけど止まりそうにないなと判断して被るより先に前に出ましたね。
大村:レース後は「吉田の捲りを一発で止める技術がほしい」旨コメントされました。
岩本:ええ。ただ難しい場面ですね。根田も脚を使って自分と潤さんをハイペースで引っ張っていたので止められたら最高でしたけど...難しかったです。申し訳ない!って思いながら番手から踏みました。
大村:二次予選は新村穣選手(神奈川119期)の番手を回ります。
岩本:新村の走りは見ていてとても積極的で自力で頑張っている南関の若手です。彼が「自分が前で頑張ります!」と言ってくれたのでこちらもしっかり付かせてもらう並びになりました。
大村:新村選手のレース運びはどうでしたか。
岩本:新村がちゃんとラインで決着がつくように落ち着いて仕掛けましたね。
なんとなくレースの流れを見ていて自分のトコロで粘れたら粘りたいだろうという選手が多かった中で、自分のタイミングを取って残り一周で前を叩いてペースを作りました。新村は強かったし上手でしたね。
大村:打鐘では川口聖二選手(岐阜103期)も5番手から発進。3コーナーは大外を回りました。
岩本:新村の気持ちが強かったですね。「絶対に主導権を取るんだ!」と。そういう気持ちがないと行くべき場所でも動けませんから。新村は行くと決めての気持ちをこちらも汲んで追いました。息の合った走りが出来たと思います。
大村:ゴールはワンツー決着でした。レース後の新村選手のコメントが「岩本さんを信じて一周半を全開でいきました!」でした。
岩本:嬉しいですね。そして流石だなと思いました。そういった気持ちを強く持って始めて自力型ですし、レース結果で応えられて良かったです。
大村:日程を折り返して3日目準決勝は自力戦、後ろは地元の岡村選手と萩原孝之選手(静岡80期)が固める並び順でした。そして岩本選手が走る前の10・11Rのどちらも波乱の決着でした。12Rのオッズはご覧になりましたか?
岩本:普段は締切り時刻を見ながら準備をしていてオッズはあまり気にしませんが、最終レースで地元勢が走るとなると何とかしてくれ!って番組です。その辺の人気は集まってるんだろうな、投票数が多いということは力を出し切って応えないといけない責任を感じるレースでした。
大村:レースは後方から谷和也選手(大阪115期)が先に動いて3番手の岩本選手を抑えました。
岩本:自分たちの初手の位置は中団から。(谷選手が)よっぽどやり合う気があればフタをしてくるだろう、これは想定した展開のひとつでした。抑えてきたらこちらは下げず行かせてすぐさま叩くのは作戦会議でも話してました。
大村:間髪入れず仕掛けて打鐘過ぎは叩いて3車で出ました。踏み出しと出切ってからのかかりがどちらも際立って見えました。感触はいかがでしたか。
岩本:潤さんと萩原さんの地元2人を背負った自力戦なので気持ちが入っていました。前を任されているので何とかしなきゃと思っていた。
感触はどちらも普段通りで、出切ってからも落ち着いていましたね。谷選手のスピードを超えることはイメージしていましたが、中近ラインが上がってすかさず行ったのは覚悟が決まっていたからです。気持ちが自転車を出しましたね。
大村:結果は見事に上位独占でした。レース後に連携した2人とは話しましたか。
岩本:潤さんと萩原さんとは何度も連携があるし、気心もしれてるので「今回も決まって良かったね。」って(笑)。特別なにか話はなかったかな?
大村:三日間を終えて修正点などありましたか?
岩本:前半の番手戦はどちらも前に付いているし、準決勝も行くべきところですかさず行ったし。南関の結束も示すレースが出来ているので修正点は特になかったです。
大村:いよいよ決勝戦です。並びはスムーズに決まったんでしょうか。
岩本:やっぱり静岡が3人揃ったので難しいところですね。道場(道場晃規選手・静岡117期)は前で頑張りたいだろうし、自分も自力選手なので静岡ラインの番手に入るのは潤さんと萩原さんがOKを出してくれないと無いですからね。
でも「準決勝でラインを連れて行ったから番手を回ってくれ」って岡村さんも萩原さんも言ってくれて決勝の並びになりました。
大村:スタートは岡村選手がとりました。雨谷選手(雨谷一樹選手・栃木96期)も出ましたが制して南関4車が初手は前段でした。
岩本:道場が一番前でやるからにはラインから優勝者を出すんだって気持ちが決まっていました。最初に川口選手がレースを動かしましたが(道場選手が)突っ張ってそのままペースを上げたのも気持ちが走りに出ていました。
大村:かなりハイペースに駆けましたね。
岩本:そうでした!おそらく自分(岩本選手)へ外から競りかけることもさせないペースに持っていったんでしょう。
大村:そして初日特選でも対戦した吉田選手が捲ります。いつやってくるのか...イメージはされていましたか。
岩本:初日のレースで吉田君のとてつもないスピードを体感していたので最終日に関してはもう少し余裕をもって出られましたね。
大村:吉田選手の捲りに対し波を作って牽制しましたね。
岩本:ええ、あれ実は岡村さんのアドバイスなんです!潤さんが「煽り、ウェーブを作るなら1コーナーでやったらいいよ。」って。レース中に、ここかなってタイミングで波を作りました。
大村:吉田選手の捲りと同じタイミングで岩本選手が二段発進しました。
岩本:レースは全て道場が支配してました。自分たちのラインから優勝者を出すんだって気持ちのハイペース先行は後ろの付いてる人たちもけっこうキツイ展開だったと思うんですよね。その中でも脚を溜めて合わせて出ましたけど...。
大村:映像で観る以上にタフなレースだった?
岩本:かなりハイピッチなハードなレースでした。道場があれだけ行ってくれて吉田もサラ脚での捲りならまだ来るはずなので、とにかく力を出し切らないと自分も岡村さんも優勝はない。ゴールをめざして全開でした!
大村:お客様の歓声は聞こえましたか。
岩本:レース中は夢中でもゴールした瞬間に歓声が聞こえましたよ。お客様の熱気が作ってくださる独特の雰囲気と緊張感の中で自分も競輪が出来ました。
大村:緊張感という話が出ました。今大会はウイナーズカップの裏開催で岩本選手は上位メンバーとして注目されていました。
岩本:どちらかというとチャンスがありそうな...ですが皆弱いわけではない。そして何よりも自力型として地元を任されてもいます。そういう意味ではしっかり役目を果たさなきゃなという責任感がある開催でしたね。
大村:まさに"気持ち"ですね。
岩本:そうですね。
大村:さて、優勝セレモニーのインタビューでは「動ける間は自力で」とコメントされていました。若手選手がどんどん育つ中での岩本選手のこれからの考えをうかがえますか。
岩本:番組が出て、新村や道場のような頑張ってる若手が「付いてください。」と言われれば付かせていただくけど、自分も自力でやってきてこれからもやっていくんだろうなと思うと複雑な心境です(笑)。
大村:今まで通りの自力戦とこれから増えるかもしれない番手戦の両立が求められそうです。
岩本:自力が出せるうちはラインの先頭で頑張る気持ちは昔から変わってないですが、それは頑張ってる南関の若い子たちも同じですから連携するときはワンツーできるようにと思っています。番手戦が増えるのはそういうポジション、自分も40歳ですから(笑)。それでも自分が自力を出せばラインとして決まる確率が高い番組なら前で頑張りますよ。
大村:今後に向けた課題やテーマ、また目標はありますか?
岩本:課題やテーマといってもこれからとてつもなく脚がつくわけじゃないですから(笑)。今まで通りしっかり練習して前検日に入ってレースでは自力を発揮する。力をしっかり出し切って結果を出すのが一番いいことですね。
目標については自分はどちらかというと逆の考え方というか...練習をきちんとして自力を出せば車が出てくれるというか。結果がおのずとついてきてくれるよう練習して自力を出そうってのが昔からの目標ですね(笑)。
大村:では最後に記事を読んでくださったオッズパーク会員の皆様と全国の岩本俊介ファンへメッセージをお願いします!
岩本:いつも暖かい応援をありがとうございます。おかげさまでいい結果が出ています。これからも自力を出して頑張りますので引き続きの暖かいご声援をよろしくお願いします!
大村:ありがとうございました。
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※インタビュー / 大村篤史(おおむらあつし)
2012年4月から小倉競輪場を中心にレース実況を担当。名前と同様の"熱い"実況スタイルでレースのダイナミズムを伝えることが信条。2022年7月からは小倉ミッドナイト競輪CS中継の二代目メインMCとしても出演中。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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