ファン投票によって出走馬が決まる園田金盃。ここを勝った馬が年度代表馬に選ばれることも多く、園田・姫路競馬の1年を締めくくる一戦でもあります。今年は、2年連続年度代表馬のジンギ vs ホッカイドウ競馬三冠馬ラッキードリームの2強ムード。ジンギは出遅れを跳ね除けて追い込みましたが2着まで。勝ったのはラッキードリームでした。移籍初戦から3戦続けて手綱をとる下原理騎手に聞きました。
ラッキードリームで園田金盃勝利、おめでとうございます。
ありがとうございます。ホッとしました。
スタートではジンギがまさかの出遅れ。それは分かりましたか?
逃げ馬のタガノウィリアムが内に、ジンギが外の枠だったので、両サイドを確認して乗ろうと思っていたんですけど、スタートして100mくらい行って、「あれ?あの2頭どこ行った!?」となりました。クリノメガミエースが最初のコーナーで先手を取りに来た時もジンギだと思ったんです。「あ、違うちがう。大丈夫、落ち着け」と言い聞かせていました。
そのクリノメガミエースが後続を10馬身以上離して大逃げを打ちました。道中はどんな心境だったんですか?
1周目のスタンド前では「めちゃくちゃ行くなあ」と思っていました。あの作戦はすごいなと思いましたけど、あの流れだったら後ろが相手かなと思って慌てませんでした。ある程度のところで前を射程圏に入れようと考えながら乗っていました。
園田金盃を制して園田で重賞2連勝としたラッキードリーム
前走の姫山菊花賞ではコーナーでモタついた点が課題として挙げられましたが、今回はどうでしたか?
姫山菊花賞ではシェダルが来るのは分かっていましたけど、いきなり来た時に対応ができませんでした。でも、今回は流れも位置取りも違っていて、自分のペースで全て運べたので競馬がしやすかったです。自分で淡々とレースを作る方がコーナーの動きなどを含め、この馬の味が生きると思いました。
園田・姫路で絶対王者だったジンギに2戦続けて勝ちました。いよいよ世代交代でしょうか。
ジンギに2回勝ちましたけど、正直、今回は幸運な面があったと思います。ジンギは前走は休養明けでしたし、冬場に強さが増す馬なので、まだまだやってみないと分からない部分もあります。
このあとは状態次第で南関東への遠征や2月の佐賀記念なども視野に入ってくるかと思います。楽しみは広がりますね。
ダートグレードで上位を狙えるかもしれない馬に乗れるって幸せですよね。姫山菊花賞の(ラッキードリームの)上り3ハロンが37秒0。この時計ってなかなか出ないと思います。スタートが決まればそれなりに行きたい位置を取れて、道中は折り合いもつきやすくて、この上がりの脚を使えるのが魅力です。4歳で年齢的にもまだまだこれからの馬ですし、走りもどんどん良くなっています。ジンギと一緒に園田の代表として頑張りたいので、2頭とも応援してほしいなと思います。
最後にオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
2歳馬で、デビューから2連勝中のヒメツルイチモンジという馬も操縦性が良さそうで、大晦日の園田ジュニアカップでは楽しみにしています。ぜひ応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
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10月28日に地方通算3,000勝を達成した下原理騎手。しかし喜びもつかの間、その翌週、重賞8勝すべてでコンビを組んだタガノゴールドが金沢・北國王冠のゴール入線直後に倒れ、息を引き取りました。「体重をかけて心臓マッサージをしたけど......」と、相棒との悲しい別れをとげることに。その後、意気消沈する陣営のもとに訪れたのは、馬主・調教師・騎手すべてが同じコンビでの重賞制覇でした。
地方通算3,000勝、おめでとうございます。
ありがとうございます。リーチをかけたその日に決められたのも嬉しかったです。実況の竹之上次男アナウンサーと「あと1勝やね」って喋っていたんですけど、「どうやろなぁ......。今日決まればええけど、区切りの勝利にはあまりいい思い出がないからなぁ」と思っていました。そしたらパンッと決まって良かったです。
あと3勝で迎えたその日に一気に決めてしまうのはさすがです。「あと1勝」を翌日に持ち越すのと、その日中に決めるのとでは、気分は違いますか?
もちろん楽です。1,000勝の時は次の週に持ち込んだんですよね。2,000勝の時はそんなに引っ張らなかったと思うんですけど。
近年は新子雅司厩舎とのコンビでの活躍が目立ちますが、新子調教師は「うちの厩舎でメモリアルを決めへんからなぁ」と話していました(笑)。
あはは、たしかにその通りになりましたね。僕は気づいていなかったですけど、そう言われたら3,000勝は田中範雄厩舎の馬でしたね。
ところが11月8日の金沢・北國王冠では2着でゴールしたタガノゴールドが入線直後に心不全で倒れて息を引き取りました。昨年、兵庫の年度代表馬に輝き、長距離で強さの光った馬。本当に残念です......。
ゴール前では勝てるパターンに入っていて、クビくらい前に出ていたんです。でも、「あれ?」って感じで「あぁ、負けた」という瞬間にガクッと倒れました。腹帯をすぐに外して、左側が上になっていたから「あ!これはいけるかも」と思って体重をかけて膝で乗ったりして心臓マッサージをしましたけど、無理でしたね......。
タガノゴールド(2019年12月5日・園田金盃)
帝王賞のレース中に予後不良になったオオエライジインもそうですけど、兵庫代表として他地区に戦いに行っての死というのは、本当にやりきれない思いが込みあげてきます。
チャンストウライも園田で競走中止しましたし、走る馬は何かありますね。(東海菊花賞の)タガノジーニアスも究極の仕上げできているなって思いました。究極の仕上げで、馬も自分も精一杯走って。しっかり仕上げているからこういうことが起きるのかもしれないですね。
より速く走るために品種改良を重ねてきたのがサラブレッドですが、本当にギリギリのところで戦っているんだなと改めて感じさせられました。それだけに、5日後の名古屋・東海菊花賞をタガノジーニアスで勝たれた時のお気持ちというのは?
その前のことがあってのこの勝利やったから、嬉しかったです。やっぱり、ガッツポーズが出ましたね。僕もゲートに入る前、「無事に走り終えてくれよ」って、タガノゴールドのことがよぎったんですよね。勝てたことも嬉しいけど、ああいうことがあった後に同じ馬主さんの馬で無事に走り切って勝ったので、余計に嬉しかったです。決して緩いメンバーじゃないって思っていましたし。
東海菊花賞を制したタガノジーニアス(写真:愛知県競馬組合)
金沢からの流れを見ていた人からすると、胸にくるものがありました。
レースが終わった後に西脇の若手ジョッキーとかみんながメールをくれて、感動して喜んでくれてよかったなって思いました。
話を下原騎手ご自身に戻して、2016年9月に2,000勝を達成してから今回の3,000勝までは早い印象です。2015年からは毎年年間200勝を超えていますね。
みんなからそういう風に言われますけど、僕はそんなに早いとは思っていないです。年間200勝は毎年の目標です。それだけ勝負気配のある馬に乗せてもらっているってことで、ありがたいですね。
すでに3,000勝も挙げられた下原騎手に「目標は?」と聞くのも恐縮ですが、最後にオッズパーク会員のみなさんにメッセージや意気込みをお願いします。
目標の1つに挙げていたのが「重賞71勝」(兵庫の騎手として重賞最多勝記録)でした。そしたらタガノジーニアスで71勝できて嬉しかったです。強かったので、もっともっとタガノジーニアスと勝ちたいなと思いましたし、ステラモナークもエイシンエンジョイもいます。そういう強い馬に乗せてもらっているから、もっと重賞を勝たないといけないなって思っています。3,000勝は通過点なので、4,000勝を目指してこれからもがんばります。応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
7年半ぶりに再開された姫路競馬場。1月15日から4週にわたる開催中、1月30日には重賞・白鷺賞が15年ぶりに行われました。勝ったのは昨年、兵庫県競馬の年度代表馬にも選ばれたタガノゴールド。「脚の使いどころが難しい」という姫路の馬場と合わせて、手綱を取った下原理騎手にお話を伺いました。
15年ぶりに実施された白鷺賞を制したのはタガノゴールド(写真:兵庫県競馬組合)
白鷺賞、優勝おめでとうございます!
ありがとうございます。僕の重賞初制覇もこのレース(1999年ユウターヒロボーイ)だったので嬉しいです。
タガノゴールドは末脚が鋭いイメージがありますが、人気を分け合ったエイシンニシパより前の2番手でレースを運びました。ちょうど枠が隣でしたが、意識していましたか?
それはもう、ライバルなんで。レース前はニシパの後ろからの競馬だろうなと思っていたんですけど、想像以上にスタートが決まったので思い切って行きました。できるだけ好位につけたいなとは思っていましたけど、まさかの先行でした。
3~4コーナーで内からエイシンニシパが進出してくると、それに応えるようにタガノゴールドも仕掛け、直線半ばで叩き合いを制して勝利しました。
溜めると弾ける馬なので、溜められるだけ溜めようと思っていました。瞬発力があるので、ニシパが行くまで辛抱しました。
白鷺賞を制して重賞7勝目としたタガノゴールド(写真:兵庫県競馬組合)
タガノゴールドは約1年半前に兵庫に移籍し、これで重賞7勝目。新子雅司調教師からは「広いコースで走らせたい」というお話も出ました。
JRAで5勝している馬ですから、どのコースでも走りそうですね。広いコースとなると、ポジションをあまり取りに行ったらいけないでしょうから、あとは相手とペースじゃないでしょうか。自分のペースに合わなかったら、ちょっとダラッとしてしまうので、そこだけ僕が気をつけて乗らないといけないなと思います。
7年半ぶりに再開した姫路競馬場の馬場は以前と比べていかがですか?
以前はそんなことなかったのですが、内ラチから2頭分までが深くて、そこは伸びないですね。開幕して1週目は逃げ馬が残りませんでしたが、3週目になってだいぶ逃げ馬も残ってきました。少し馬場が軽くなってきているんだと思いますよ。今週(1月28~30日)はあんまり後ろからだと厳しそうだったので、タガノゴールドも最低でも中団にはいないといいけないなと考えていました。
姫路競馬場での理想のレースは?と聞かれると、どんな展開ですか?
「自分のペースをつくること」でしょうね。何番手でもいいので、自分のペースを崩さずに乗れると、この馬場ではひと脚を使えます。ただ、そのひと脚をどこで使うか、なんですよ。スタートでポンッと出たからといって追っつけて行くと最後に脚がなくなってしまいます。今日、僕も逃げ切り勝ちが1つありますけど、馬なりで行ってのもの。後ろからでも早仕掛けしたら止まります。道中は楽に運んで、最後に貯蓄を残すレースをしないと、ゴール前でポッと差されてしまいます。
最後に、オッズパークの会員にメッセージをお願いします。
これを読まれている頃にはもう姫路開催が終わっているかもしれませんが、引き続き園田開催もよろしくお願いします。
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※インタビュー / 大恵陽子
2017年は2年連続で兵庫リーディングに輝くだけでなく、念願の全国リーディングのタイトルも獲得した下原理騎手。騎手激戦区の兵庫でトップを守るために心がけていること、恩師で3年前に急死した寺嶋正勝調教師から学んだこと、今後の目標を聞いた。
2年連続兵庫リーディングと初の全国リーディング、おめでとうございます。
ありがとうございます。2016年に初めて(兵庫で)リーディングジョッキーになって、2年連続になれるようにと考えてはいましたが、全国となると、開催日数など条件が違う地区との争いになるので、それほど意識はしていませんでした。周囲からは狙えと言われましたが、むしろ、その争いに加わっていることを楽しんでいるところもありました。
2年連続を達成できた要因は何ですか。
いつも通りのことをきっちりこなして、特別なことをしないように、平常心を保つことを心がけていましたが、それができたからかなと思っています。乗り手が気負うと馬に伝わって、力を出せないので、そこを大事にしてきました。
リーディングになる前と、なってからで、変わった点はありますか。
リーディングになってからは、あわてることが少なくなりました。勝つことが自信になり、落ち着きが出て、さらに次の勝利につながる好循環になっている感じです。これが勝つことへの近道だなと思います。
写真:兵庫県競馬組合
95年にデビューした下原騎手は12年目の06年に初めて年間100勝の壁を越えると、14年まで100勝台をキープ(左肩脱臼で長期離脱した12年は除く)。デビュー21年目の15年以降が年間200勝台。約10年単位でステップアップしています。
言われてみれば、そうですね(笑)。06年の100勝突破は岩田さんが中央に移籍して、15年も木村さん、田中さんが、けがで乗れなくなって、有力馬に乗せてもらったことが大きいと思います。
15年は上位騎手2人の長期離脱があったにせよ、2人が復帰してからも、復帰する前のペース以上で勝っていますよ。
自分では、まだまだと思っていますが、信用してもらえたんでしょうか(笑)。でも、田中さんも、川原さんもいますし、若い子も力をつけています。いつ抜かれてもおかしくないと思って乗っています。
今、期待している馬はいますか。
3月13日に昨年の(兵庫)最優秀2歳馬のコーナスフロリダに勝ったツルノシンは強かったですが、道営に戻るような話も聞きました。こちらにいたら菊水賞で期待できるんですが。3歳牝馬ならショコラパフェですね。1番人気だった1月の園田クイーンセレクションでは負けましたが、その後は連勝していますし、春の重賞では楽しみにしています。
今年でデビュー23年目ですが、1番の思い出の馬は?
やっぱり中央馬を破って佐賀記念を勝ったチャンストウライですね。中央馬に勝てる馬には、そう巡り会えませんからね。それに自厩舎の馬で、デビュー前から自分が乗っていましたので、思い入れも違います。帝王賞4着、アンタレスステークスでも5着、芝の阪神大賞典にも挑戦しました(10着)。あの馬との経験で自分も成長しました。それから、同じくらいの時期に地元と東海地区の短距離重賞を総なめにしたベストタイザンも忘れられません。
チャンストウライで佐賀記念を制覇(2008年2月11日)
自厩舎と言えば、師匠だった寺嶋正勝先生が急死したのが3年前(2015年)の3月10日でした。
今年も法要に行かせていただきました(取材日は3月14日)。先生の奥さんがお元気そうで、ホッとしました。
寺嶋先生から学んだこと、思い出すことも多いと思いますが。
僕がまだ教養センターにいる時は寺嶋先生は現役ジョッキーで、先生の師匠だった福地先生にお世話になっていました。福地先生の調教師引退と引き継ぐ寺嶋先生の厩舎開業と僕の騎手デビューが重なりました。寺嶋先生はレースの流れを考えずに、早めに仕掛けるようなバタバタする乗り方が嫌いで、そういう時には、もっと落ち着いて乗らないと、と注意されました。また、いいところをほめていただいて、もっと伸ばせとも言われました。あとは、汗取りにサウナをあまり使うなと言われました。若い時にはその意味が分からなかったですが、サウナで落としていると、年々落ちにくくなりますし、体力もそがれてしまいます。食べる量で調整していく方が楽で、レースにもいい体調で臨めるので、先生の仰っていた通りにしていて、良かったと思います。
勝負服の紫と白は寺嶋先生から引き継いだものですね。
はい、先生は胴袖紫の白山形で、僕は胴袖紫の白菱形で模様は違いますが。デビューする時に、先生に相談して、僕が決めました。僕の勝負服を見て、先生のことを思い出す方もいらっしゃると思いますし、先生から学んだことをしっかり受け継いでいかないといけませんね。
今後の目標を教えて下さい。
兵庫のリーディングも全国リーディングも守りたいですから、1つでも多く勝って勝ち鞍を伸ばしたいです。昨年は273勝でしたが、デビューしてから数年の勝てなかった時期を思うと正直、自分でもすごい数字だと思ってます。でも、岩田さんから先日、「300勝を狙え。オレは達成(2003年307勝、2004年324勝。中央も含む)したぞ」と言われました。300勝だと月25勝。昨年が月22~23勝ペースでしたから、そこから、さらに毎月2つを上乗せするのは、かなり大変です。でも近づけるようにはなりたいですね。
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※インタビュー / 松浦渉
昨年初の兵庫リーディング2位に躍進した、下原理騎手。川原正一騎手、木村健騎手、田中学騎手の3人が厚い壁を築いていた中で、岩田康誠騎手がまだ兵庫所属だった2005年以来10年ぶりにトップ3の牙城を崩しました。今年に入ってからもその勢いはとどまらず、リーディングトップを走ります(4月25日現在)。新たな兵庫の王者となるか、現在の心境をお聞きしました。
2015年は初の兵庫リーディング第2位、そして今年はここまで1位をキープしています。かなりいい流れで来ていますね。
そうですね。去年はいつも通りにやっていたんですけど、10月11月12月と今までにないすごいペースで勝つことができました。重賞も勝てたし、これまでに比べると取りこぼしも少なかったのかなと。たくさんのいい馬たちに乗せてもらって、本当にいい経験ができました。
この躍進のキッカケはなんでしょうか?
去年は木村(健)さんと(田中)学さんが休んでいる時期があって、たくさんチャンスをもらいました。その時に結果が出せなければそのチャンスが他の人のところに行ってしまうし、2人が戻って来たらまた同じになってしまう。だからなんとかアピールして、2人が帰って来たあとにも繋げられるようにと思っていました。ある程度結果を出せて、そこでアピールできたのかなと思います。ただ、自分ではまだまだ納得はしてないですけど。
騎乗面で変わったことはありますか?
それはですね、あるんですけど言いたくないです(笑)。僕は岩田(康誠)さんのことを『兄貴』って呼んで可愛がってもらってて、騎乗面のこととかもアドバイスをしてもらってたんですけど、なんていうか、岩田さんて感覚の人じゃないですか。だから言葉で言われてもよくわからないことがあったんです。でもここに来て、その感覚がわかるようになったんですよ。僕が20年掛かってやっと掴んだものを岩田さんは10年くらいでわかっていたんだなって実感しました。去年やっとわかっかというか、ある時フッと『上手い人の乗り方はこれだったのか』って気づいて。少しだけ近づけたかなと思います。やっと気づけた僕の財産なので、言いたくないんです(笑)。
エーシンサルサ(2015年11月5日、兵庫クイーンC/兵庫県競馬組合)
ここ最近で特に印象に残っているレースはありますか?
やっぱりエーシンサルサで兵庫クイーンカップを勝てたことは自信になりました。前に行って渋太い馬だし、トップスタートだったし、今までだったら多少オーバーペースでも下げられなかったと思うんです。下げて負けたら「なんでそんな乗り方したん?」てなるし、二度と乗せてもらえないということが頭をよぎってしまって。でもあの時は中団から差し切るといういつもとは違う競馬で勝つことができました。今は、流れの中で納得できる乗り方をすればいいという心境になりましたね。強い馬たちに乗せてもらって経験させてもらったことで、レース中冷静に乗れるようになったのかなと思います。
アクロマティックとのコンビでも、新春賞、梅見月杯と連勝しましたね。
あの馬はびっくりでした。去年の11月から重賞含めて4連勝したんですけど、厩務員さんが「状態がすごく良くなった」って言ってて、その通り結果を出してくれました。あの馬はかなり気難しい面があるんですけど、4連勝の最初のレースの時、道中で馬が嫌がったので腹を括ってハミをくれたんです。そうしたら、そのあと軽く押しただけでハミを取って進んで行くじゃないですか!「この馬は人間に急かされるのが嫌なんだな」ってことがわかりました。相当力はあるので今年も楽しみなんですけど、なんせ気まぐれなもんで。あの馬の気持ちは今でもよくわからないです(苦笑)。
アクロマティック(2016年1月3日、新春賞/兵庫県競馬組合)
下原騎手といえば、長年兵庫の第4位をキープしていましたが、トップ3の壁というのは大きかったですか?
それは大きいですよ。木村(健)さん、(田中)学さん、川原(正一)さんの3人は鉄板ですからね。今でも大きな壁ですし、抜いたとは思っていないです。3人ともすごく上手だし、こんなすごい人たちと1戦1戦真剣勝負ができることは本当に有難いです。
でも去年は2位で今年はリーディングを走ってますから、成績的には抜きましたよね。
そうなんですけど、僕はまだトップになったことがないので、あんまり意識はしてないですね。だって10勝20勝差なんて、あの人たちなら簡単に覆しますから。今は順位とかよりも、目の前のレースを丁寧に乗って結果を出して、そうすれば結果は付いて来ると思っています。色んなスポーツの方の本とか読むんですけど、どんなスポーツでもトップは孤独との戦いだと思うんですよね。去年新子(雅司)先生がリーディング獲ったんですけど、あれだけ勝ってても「秋口くらいから気になって来る」って言ってて。川原さんも全国リーディングが懸かってた年、「森泰斗騎手の勝ち星が気になる」って。あれだけの人たちでもそういうプレッシャーを感じてくるわけですから、僕もどういう風になるのかなと。後半も今の精神状態で乗れるようにしたいですね。
(写真:兵庫県競馬組合)
では、今後の目標を教えて下さい。
今はすごくいい流れで来ていて、たくさんのいい馬に乗せてもらって本当に感謝しています。それに、この前オッズパークさんのパーティーに出たんですけど、ファンの方と直接お話することができてすごく励みになりましたし、厳しいことも言ってもらって、いい刺激になりました。今年の目標は2000勝を達成すること(2016年4月25日現在1910勝)と、今の精神状態で後半も上位争いをすることです。兵庫の顔になれるよう、これからも頑張ります!
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※インタビュー / 赤見千尋