高松亮騎手は今年デビュー13年目。昨シーズンは岩手リーディング4位に付けたように、近年は騎手リーディング上位を安定して確保している。また、東海地区や兵庫など冬期間の期間限定騎乗にも積極的だ。今回は2年連続で挑んだ園田競馬場での冬季遠征の話を中心にうかがってみた。
この冬も園田競馬で期間限定騎乗をしましたね。短い期間ながら成績も良くて、あちらでの評判も上々だったと聞きました。
小牧毅調教師が良い馬を用意して、自分に勝たせたいって待っていて下さったので、自分はそれに何とか応えようとがんばっただけですよ。去年行った時にも凄くお世話になったので今年は少しでもお返しって言うか、自分の力で何かできないかと思いながら行ったんですけど、結局今年もお世話になりっぱなしで。もう"感謝"という言葉しかないです。
その園田競馬に行ってみて、どんな事を感じましたか?レースの流れとか。
そうですね。例えばですけど、たいていの競馬場は"いいポジション"というのがそれぞれあると思うんですよね。馬場状態とかにもよるでしょうが、"ここの競馬場なら道中はこの辺にいて、どこから動けばいい"というのが比較的はっきりしていると。園田の場合は、それがレースによって変わってくるんですよね。それを素早く感じ取らないと良い結果にならないですね。
園田は自分も見ていて感じるんですが、ホント海千山千の騎手ばかりで、意外な展開になることも多いですよね。
ベテランの方も多いですしね。お世辞抜きで皆さん腕が良い。だから乗っていて少しでも注意をそらすと......みたいな緊張感がありました。難しい競馬場だと思いますよ。それもあっていかに素早くレースの流れを読み取るか?がカギだとも感じました。
そんな中での1年目と2年目の違い、変化のポイントとすればどんな所が挙がりますか?
去年行った時は、他の騎手が作った流れに上手く乗って、他の騎手たちの隙を突いて・・・という形が多かったと思います。今年は良い馬・強い馬に多く乗せていただいたおかげで自分でレースの流れを作る事もできたのかなと。
さっきも話したように"この辺に付けていればだいたい大丈夫"。"こういう流れならこんな感じの展開になるだろう"というセオリーのようなものがない、他の競馬場の常識が通用しない競馬場ですから、強い馬に乗っていたおかげとはいえ、そういうところで自分のレースの流れを作る事ができたのは良い経験になった。勉強になりましたね。去年と今年で違うとすればそこかな。
では、また次回、園田競馬に乗りに行く機会があったら、その時はどんな"変化"を目標にする?
変化かあ。変化......。そうですね、ちょうど自分が帰る頃にあちらの騎手旅行があるんですよね。次はそれに参加したいです(笑)。
それはそれとして、そうですね。2年続けて行って感じたのは若手の騎手の成長、頑張りだったんです。自分もえらそうに言える立場ではないですが、自分より若い騎手たちが1年で凄く伸びていたのが自分にも刺激になったので、次行く機会があるなら、そんな若手の騎手たちに負けないように自分も成長していないとな、と思っています。
去年のシーズンとか今年のここまでとか、高松騎手の騎乗を見ていると園田に行った経験は活きているなと思う。
経験値を上げるのも遠征に行く意味って言うか、行った事による価値だと思うんですよね。勝ち負けとか騎乗技術だけじゃなく他の騎手の騎乗ぶりも見つつ、いろいろ感じたり考えたりして、地元ではできない経験を積んでくるという。その点自分は、園田では年齢的に年上のベテラン層と若手層の間くらいだったから、ベテランにも若手にも話を聞きやすい立場だったから良かったですよ。
ビュレットライナー(2015年5月11日盛岡4R・1着)
さて高松騎手にはもうひとつ聞きたい事があります。ビュレットライナーなんだけども。本当に凄い馬だよね。
14歳になりましたがそんな年齢を感じさせないですね。今でも調教では掛かるくらいの勢いを見せるし、レースでも自分から前に行ってくれるし。乗りやすい馬ですよ。今年も、まずは無事に過ごして欲しいんですけど、やっぱり勝てたらいいなと思いますね。
高松騎手にとってビュレットライナーというのはどんな馬ですか?
いろいろな事を教えてもらった馬ですね。ひとつひとつのレースだけでなく1頭1頭の馬への想いとか。うまく言葉にしづらいんですけど、あの馬に出会った事によって馬の見方、馬の状態の判断の仕方みたいなのが勉強できたと。
高齢馬ですし、なるべく良い状態でレースに出したい、無事に走らせてあげたいと思うじゃないですか。じゃあどうすればいいか?どう接してやればいいか?を考えて。それが他の馬に対する時にも役立っている。馬の状態を見る時の観察力とか判断力とか。
だから、最近自分の成績が少しでも上がっているとしたら、それはライナーと一緒に戦ってきて自分が学べた事が活きてきたから......だと思っています。
いろいろ教えてもらった、と。
そうですね。ただ、よく騎手が言うじゃないですか。"この馬にレースを教えてもらった"。"この馬にレースでの仕掛けどころを教わった"みたいな。それとはまた違うと思うんですよね。レース以前の調教とか普段の接し方、過ごし方。1頭の馬に対する見方。そういう部分をビュレットライナーに教えてもらいましたね。馬の観察力って言うんですかね。そういう部分は本当に勉強になっています。
筆者は、実は園田での高松騎手をまだ見た事がない。しかし現地からの高評価、好評はよく伝え聞いていた。
他地区への挑戦や馬との出会い、それが両輪となって彼の成長を促しているのなら、次の機会には園田へ足を運ばねばなるまい。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
今年4月にデビューした小林凌騎手。4月18日にデビューして翌々日の20日に早速初勝利を挙げ、順調なスタートを切った。
6月28日までの成績は60戦6勝で、今季の岩手は例年に比べ在厩頭数が少ないために少頭数のレースが目立ち、小林凌騎手もなかなか騎乗数を確保できないが、それでも勝率10.0%・連対率13.3%は立派な成績ではないだろうか。今回はその小林凌騎手にお話をうかがった。
では、騎手を目指したきっかけから聞いていきましょうか。
父が競馬が好きで、JRAのレースを父と一緒にテレビで見たり競馬場に行ったりしているうちに自分も好きになりました。小学校5、6年の頃ですね。
父はスペシャルウィークが好きだったのですが、自分が覚えているのは2006年くらいからでしょうか。ディープインパクトとかの頃ですね。
それで騎手を目指してみよう...と。JRAの騎手学校は考えなかったのですか?
JRAも受けたんです。でもちょっと厳しいだろうなって感じて。受験生がもの凄く多いし、自分のように競馬関係ではない家庭からではなかなか...っていうのもありました。受験に向けて1年間専門学校に通って乗馬等を勉強して、自分なりに準備をして挑んだのですが、やっぱりいろいろ難しいな、と。それに、JRAの騎手学校は合格しても卒業できるとは限らない。何年もかけて結局騎手になれないかもしれないより、少しでも早く騎手になりたかった。それで地方競馬の騎手を目指す事にしました。
そんな息子を、ご家族の皆さんはどんなふうに見ていたのでしょう?
そうですね、いろいろ考えてくれたように思います。アニベジ(アニマル・ベジテイション・カレッジ)にも通わせてくれましたし。
お母さんのフェイスブックを見ると、凌君のためにおかずを作って持ってきてくれたりしているようだけど? 栄養とかいろいろ目先が変わるようにとか、気を遣って作ってくれてるみたい。
え、母のフェイスブックを知ってるんですか(笑)。自分は減量をあまり気にしなくて良かったからわりと何でも食べる事ができて、母の料理などもそんなに難しく考えずどんどん食べていたんです。でも、そうやって考えてくれているのはありがたいですね。
初騎乗時。ちょっと緊張気味?
話を進めて、競馬学校を通過して今は騎手になっているわけですけども、本物の"騎手"になってみて、自分の思っていたのと違った...みたいな事はありましたか?
"思っているようには騎乗できない"でしょうか。小さい頃にテレビで見てカッコいいな、あんなふうにレースしたいなと思って騎手になったのですが、やはりそう簡単に、思っているようには乗れないですね。
それはテクニック面? 体力面で?
スタート、道中で息を入れる所、レース勘、体力...。全部ですね。まだまだなんだと思います。スタートがイマイチだからって焦って追っつけていったら後半自分がバテたりとか...。
見ている方としては、まずます順調に勝って経験も積んでいるんだな、って思っているけど。気持ち的には楽になってきたんじゃないですか?
いや、逆にまだまだだ、って感じがします。強い、勝てる馬に乗せてもらっているから勝てているけどそれに頼ってばかりじゃいけないですし。他の馬でも、自厩舎の馬ばかりじゃなくて他の厩舎の馬でも結果を出せるようになってこそ先生(板垣吉則調教師)に認めてもらえると。
2015年4月20日水沢第2レース、コスモリボンに騎乗して初勝利
デビュー前の小林凌騎手を見ていると、結構自信家なように感じたけども?
そんな自信家じゃないですよ。まだまだ全然です。デビューしてからいろいろ自分に足りないものも見えてきました。
凌君の所属する板垣厩舎は毎年リーディング上位を争っていて、良い馬・強い馬が多いですよね。自分の手で乗って勝ちたい...とか思ったりしませんか? しますよね?
自分もレースで乗りたい、自分の手で勝ちたいと想像したりもしますが、今の自分じゃまだまだですから。一日も早く自分も巧くなって、厩舎の成績に貢献できるようになりたいです。
調整ルームでの生活にはもう慣れましたか?
慣れました。自分は菅原辰徳騎手と相部屋ですが、辰徳さんが怪我でしばらくいなかったりしてしばらくは個室みたいな感じでした。ルームでは、ビデオでレースを見直して、ごはんを食べて寝る...でしょうか。ゲームとかはしないです。
調教は何頭くらい乗っていますか?
だいたい15頭前後でしょうか。板垣先生や厩務員さんも乗って、ほとんどフル回転で調教しています。
では最後にファンの皆さんにひと言アピールをお願いします。
ファンの皆さんに納得して貰えるよう、期待に応えられるような騎乗ができるよう、がんばります。
盛岡でも勝ち星を挙げた
昨年の実習時の小林凌候補生の印象は「結構話し好き」だったが、4月のデビュー前後は、やはり緊張する所があったのか口数が減って表情もちょっと厳しい感じになっていた。しかしそれも、デビューから2カ月経ってだいぶこなれて、緊張が解けてきたように見える。
デビュー前に聞いた時には「30勝が目標です」と意気込んでいた小林凌騎手。今のペースだと20勝に届くかどうか...という感じだが、しかしそれだけ勝てれば全日本新人王争覇戦の出場も見えてくる。頑張ってほしい。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
昨シーズン(2014年度)は岩手の騎手リーディング3位だった齋藤雄一騎手。所属する小西重征厩舎も調教師リーディング4位と毎年揃って上位を争っているのだが、小西厩舎の活躍の原動力は間違いなく齋藤騎手だといえるほど師弟の間の繋がりは深い。今回は自身のみならず厩舎の話もからめながら"齋藤雄一騎手の今"をうかがった。
2002年にデビューして14年目のシーズン。今の自分の"位置づけ"ってどのあたりだと思う?
正直言ってちょっと中途半端ですかね。上に突き抜けるでなく下に落ちすぎるでもなく。宙ぶらりんって言うのかなあ。
でも、勝ち星は安定して獲得しているし、周りの厩舎からの評価も、高いレベルで安定しているでしょう? その気になればもっといろいろできる位置だと思うけど。
うーん。そうですねえ...。"リーディング獲ってやる!"と力んでいた時期もあったけど、厩舎のスタイルとか自分のスタイルとかを崩してまで...とも思うんですよね。もちろん、頂点にはね、そこに行った人にしか見えないものがあると思います。それを見てみたいとも思うんですが。
齋藤騎手は、こう言うとあれかもしれないけど、場合によっては勝負度外視でも義理の方を優先するような所があるものね。もっと欲を出してもいいのに。
そういうのは騎手としては失格なのかもしれないけれど、でも騎手の前に人としてスジを通さないといけないとも思います。そういう騎手がひとりくらいいてもいいんじゃないですか。
今にして思えば、ですが、齋藤騎手より上の世代の騎手が急にいなくなってしまった。それが不運だったかもしれない。上の世代のベテランがもっとたくさんいれば、30歳くらいの騎手はもっとわがまま言える、好きなように乗れる立場だったんじゃないかと。
わがままに乗れるかどうかは分からないけど、そういう面はあるかもしれないですね。勲さん(菅原勲現調教師)なんかも自分が脂が乗ってきたと感じた頃に引退してしまった。正直言えばもっと一緒に乗って、もっと吸収したかったですよね。
4月4日には重賞・あやめ賞を制し早々と今季初重賞タイトルを手に
今の岩手の調教師の中では櫻田浩三調教師が通算勝利数で現役1位、小西重征調教師が現役2位(※4月27日終了時点では櫻田浩三調教師1792勝、小西重征調教師1577勝・歴代5位)です。齋藤騎手・小西調教師がその気になればより迫る、あるいは追いつく...という事も有り得ない話ではないと思うけども?
小西先生は、でも、リーディングにこだわるとか無理に勝利数を追い求めるとかそういう人ではないですからね。
シーズンの成績だと、調教師も毎年上位にいるけど、無理に狙っているわけではない?
馬が好きですからね。小西先生は馬が好きでやっているから、無理使いはしないし勝ち星の数も全く気にしてないですよ。それは自分も同じ気持ち。
じゃあ、何勝した、順位がどうなった、よりは、良いレースができた・馬の力を出し切った...みたいな方にこだわる?
どちらかと言えばそういう所に楽しみを感じている部分が大きいかもしれないですね。みんなで手をかけた馬で勝った"1勝"が凄く大事だと思います。
昨年は門別・栄冠賞の騎乗依頼を得た
齋藤騎手は前からそういう風に言うよね。自分が勝った負けたじゃなくてみんなで力を合わせて仕上げた馬を走らせたいって。期間限定騎乗とかしないのもそれだからでしょう?
周りからは"厩舎の仕事が大変だから行けないのか?"とか言われるんですが、小西先生はむしろ"どこか行ってこい"っていつも言ってくれている方で。自分がこうしたいんですよ。他の競馬場で乗ってみたいという気持ちがないわけではないけれど、自分は、今の調教師や厩舎のスタッフと一緒に仕事をして、一緒に育てた馬でレースをしたいから...。
岩手でやっていく方が楽しい、と。
...かな。あとは、"休める時は休んで、身体をいたわるのも騎手の仕事だ"って小西先生に言われているのもあります。若さに任せて無理をしたら後々堪えるぞ、身体を休めて英気を養うのも大事だって。競馬の事を考えずに過ごす時間も必要だと思うんですよね。今年の冬なんかは特に、毎日子供と遊んで過ごして競馬の事をほとんど考えなかった。
そうする効果は?
そうやってしばらく競馬の事を頭の中から抜く事で、春に競馬が始まった時のモチベーションをより高める事ができる。そんな風に思います。ずっと競馬の事ばかり考えているとどこか惰性っていうかおざなりになるような気がする。だから、シーズン中もできるだけ子供と遊ぶだけの時間を作ったりして、気持ちや身体をリセットするようにしています。
2013シーズンまで使用していた旧勝負服
齋藤雄一騎手は昨シーズンから勝負服を変えましたよね。所属する小西重征調教師の、現役時代と同じものに。"どうして変えようと思ったのか?"という所から始めましょう。『胴桃・袖緑』の服色、実物は見た事がある?
現物はないですね。小西先生が現役時代にそんな柄の勝負服を着ていた...という事は知っていました。
やっぱりこう、"師匠の勝負服を受け継ぎたい"と願って? それとも調教師から着てみろと言われたとか?
小西先生から言われたって事はではないです。そういう事は特に言わない先生だから。ただ、自分が500勝した頃からかな、この先1000勝を、上を目指していく時に、小西先生の勝負服を着て頑張りたいと思って。自分からお願いしました。
齋藤騎手が勝負服を変えた時、小西調教師に感想をうかがったら、"俺の勝負服を着てヘタなレースをしたら怒ってやるからな!"って笑ってました。
リーディングを獲った騎手の服ですからね。その価値を落とすようなレースはできないですよね。でも今の成績だとちょっと恥ずかしいかな。もっと良い成績を残さないといけないですね。まずは1000勝。その先は...。そこまで行ったら考えます。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
今年、スーパージョッキーズトライアル(SJT)の第1ステージが行われるのは盛岡競馬場(10月6日)。地元代表として出場するのは、岩手リーディングの村上忍騎手です。そして今年、盛岡競馬場は12年ぶりにJBCの舞台にもなります。SJTへの意気込みや、岩手の騎手会長として臨むJBCへの期待などをうかがいました。
シーズン開幕日、騎手宣誓を行う村上忍騎手
SJT出場決定、おめでとうございます。今年は盛岡ステージからのスタート、地元の期待がかかりますね。
地元ファンの目の前で次のステージに行けなかった......というのだけは避けたいね(笑)
それはなんとか避けて下さい(笑)。名古屋に行く切符、もう買ってしまったんで。とはいえやはり"地元の利"のようなものは、あるんじゃないですか?
コースに乗った経験とかはね、岩手でも何度も乗った事があるような騎手ばかりですからあまりアドバンテージはないでしょうね。でも馬のクセだとかこの馬はこんな走りをする......みたいな点では知っている馬ばかりですから、そういう部分で地元の自分の有利さがあるとは思っています。
地元のファンの後押しがあるのも、心強いですよね。
そうですね。自分としては応援して貰えるような騎乗を見せないといけないでしょうね。
ズバリ聞きます。SJTに出場する他の騎手でライバルは?
それは、誰がライバルとかはないですよ。皆さん全国でトップを張っている騎手だし、当然ここにもね、てっぺんを獲ってやろうと思ってやってくるわけだから。自分は負けないように、ひとつでも上の着順が獲れるように頑張るだけです。
昨年はワイルドカードに回って本戦出場ならず。今年は力が入る
応援する方としては、そうはいっても盛岡ステージでTOP3に入るくらいには......と思っています。
そうなればいいですね。ひとつくらい勝って上位の成績で通過できればいいけれど、そうでなくても次のステージに希望が繋がるくらいのところには付けていきたい。
やっぱり一度は出てみたいですよね、ワールドスーパージョッキーズシリーズは。
そうだね。最近は若い騎手が伸びてきて、自分達の世代もずいぶん下から突っつかれているからね。今のうちに出ておきたいよね(笑)。そういう意味で地元スタートの今年はチャンス。弾みをつける材料にしたいですね。
ではJBCの話題へ。12年ぶりの盛岡JBC。そこで戦う騎手としてどんな気持ちで迎えますか?
そうですね。やはり岩手県でJBCをやっていただく事で全国に岩手競馬を知って貰いたい。岩手競馬の良さを全国の皆さんに感じていただいて、盛岡を、岩手を盛り上げる。そんな風に繋がっていけば。JBCを通して岩手競馬の良さが伝わっていくならばそれ以上嬉しい事はないですね。
そのためには地元の馬が出て、地元の騎手も活躍して......。
地元の馬が強いレースをお見せするのが一番なんだろうけど、まず地元の騎手が頑張ってJBCに参加して関われるようにならないと盛り上がり方も違ってくるでしょうしね。何人か出る事ができるようにね。
そんな馬に村上騎手が乗って、見せ場を作ってくれる......と。
それは自分だけじゃなくてね。何人かで参加して、一緒にレースを盛り上げる事ができればいいですよね。
村上騎手は12年前のJBCにも騎乗しました(JBCクラシック・トニージェントで6着)。あの時のことは覚えていますか? どんなふうに戦ってやろう、とか思っていましたか?
ええ。JRAの馬が強かったから勝ち負けまでは正直......でしたが、JRAの馬を1頭でも負かしたい、そして入着したいって思って乗りましたね。
今年はどんな馬が岩手からJBCに出る事ができるか分かりませんが、もし村上騎手がまた乗るとしたら、同じ気持ちで挑む?
そうですね。ひとつでも上の着順を狙って戦いたいですね。
JBCの3レース、その全てで村上騎手の騎乗する姿を見る事ができればいいですね。
やっぱりJBCは"お祭り"ですからね。見ているだけじゃなくてレースに乗って、それで一緒に盛り上げたいです。
では最後に、騎手会長として全国のファンを迎える立場としてひと言。
盛岡競馬場はコースもスタンドも全国的に見て設備が整った良い競馬場だと思っています。そんな競馬場で行われるJBC。ネットで応援していただくのもいいのですが、できれば競馬場に来て、生のレースを見て、楽しんで、一緒に声援を送っていただければ嬉しいですね。
ありがとうございました。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
南郷家全騎手というとデビュー20年目を迎える"ベテラン"なのだが、他地区で騎乗する姿を見ることはあまりなかった。それが今年1月、一念発起して高知競馬で期間限定騎乗し、約2カ月で7勝を挙げる活躍を見せた。今回はそのあたりのお話を聞いてみよう。
今回はどうして高知競馬で乗ってみようということになったんですか? そこから始めましょうか。
高知では打越(勇児)調教師が受け入れてくれたのですが、打越師と自分が所属している菅原勲調教師が親しいんですよね。それで菅原調教師が高知行きを勧めてくれたんです。
調教師になったのが"同期"なんだよね(共に2012年の調教師デビュー)。それで仲がいいと聞きました。
そう。それで、高知は昔は希望を出せばたいてい通ったんですが、最近は期間限定の行き先として人気があって簡単に入れてもらえない。今回行った時もすでに3人かな? 期間限定騎乗している騎手がいて、普通なら断られるのですが、菅原調教師と打越調教師がやりとりして話を付けてくれた。二人のおかげで実現した遠征でしたね。
全日本新人王争覇戦には出場してないから、高知は初めてでしたよね。乗ってみてどうでしたか?
レースの流れとかコースの傾向とかが全く違うから、月並みな言い方ですが凄く勉強になりました。
自分も現地で南郷騎手のレースぶりを見ていましたが、正直言って"苦心してるなあ"と感じました。
レースの流れが違うのは、それは競馬場によって全然違うのは分かっていたからある程度想像して行ったけれど、それでも厳しかった。コースの傾向も、高知競馬場は内の方が深くて重いからできる限り内に入らないよう、内に押し込められないように進まないといけない。その辺が分かるまではなかなか思うような戦いができませんでした。
高知では激しい競り合いの中で揉まれるシーンが多かった
南郷騎手は岩手ではスタートが結構早い方なんだけど、高知だと早くない......というか遅いくらいになる。それも実際に見てちょっと驚きました。
高知では「スタートでレースが決まる」ってみんな言っていましたね。全体的に勝負付けが早い展開になりがちだから、良いスタートを決めて良い位置を獲らないと勝てない。だからスタートダッシュと競り合いが激しい。
道中の流れとか勝負所の動きとかもずいぶん違っていましたよね。
岩手だと「ここではまだ......」という所で一気に動いてきますからね。それで被されたり捲られたりすると、直線で簡単に差せるような形にならないから、巻き返せなくなりますね。わりと内の方をあけて走ることが多いから馬群が詰まってごちゃごちゃになることが少ないのは乗りやすかったですけども。
遠征の前半はなかなか勝てなくて、後半になってポンポンと勝ったり上位に入ったりしたのは、やっぱりレースの流れに慣れたから?
そういう面はありますね。あと、高知は特に下の方のクラスは馬の力の差が大きい。クラスがひとつ違うんじゃないか?という馬が普通に混ざっているから、そういう馬を負かすのは簡単じゃなかったですね。
2月16日第10レース。トウカイルノンに騎乗して、高知での3勝目
そもそもナイター競馬も騎乗するのは初めてですよね。レースもそうだし、1日の仕事の流れとか、けっこう違ったんじゃないですか?
高知では朝の2時くらいから調教が始まって、それがだいたい9時半とか10時くらいまで。開催がある日はレースの時間まで待機して、レースが終わるのが夜の9時頃、ひととおり片付くのが10時とか。それですぐまた調教がある時もあったりするから1日中起きているような感じで。岩手とは生活リズムも全然違うから、身体が慣れるまではちょっとたいへんでした。
レース以外の部分はどうでしたか? なかなか楽しそうにしていたように見えましたが?
高知は騎手達の仲がいいし、土地柄もあるのか人が明るくて、楽しかったし過ごしやすかったですね。自分なんかもすぐ受け入れてくれて。赤岡騎手が率先して輪に入れてくれたんですけど、赤岡騎手は騎手としては先輩だけど年齢は一緒なんで自分も話しやすかったですしね。そういう雰囲気の良さが、高知が人気ある理由のひとつだと思いますよ。
さて、今回の高知遠征をまとめるとしたら?
レースは厳しかったし結果も決して満足できませんが、違う競馬場のレースを経験できたし、新しい人の繋がりもできた。いい経験ができたと思います。
これまではあまり他地区に行くことがなかったけど、また行ってみる?
そうですね。機会があればまた行ってみたいですね。行ってみて分かったことも色々ありましたしね。
それから、今年は盛岡で12年ぶりのJBCがあります。南郷騎手は前回のJBCの時は?
JBCのレースには乗ってないですね。その前にあった重賞(オパールカップ)にも乗ってない。平場にちょっと乗ったけど、その日は勝ち星はなかったですね。
12年経ってベテランになった南郷騎手は、今年のJBCをどう迎えますか?
自分もJBCに乗れたらいいですね。ファンの皆さんも、せっかくの"お祭り"ですから、ぜひたくさんの方に来ていただいて、盛岡のJBCを楽しんでいただけたらいいと思います。ぜひ来て下さい。
"南郷騎手、20年目の初遠征"はどうなる事か?とちょっと心配しないでもなかったのだが、実際に現地で見ていると、高知の騎手たちにもとけ込んで上手く乗りこなしていたようだった。それはもちろん、赤岡騎手をはじめ高知の騎手たちのフレンドリーさにも助けられた事だろう。そう思えば"初遠征"の場所が高知競馬だったのは南郷騎手にとって幸運だったし、だからこそ得るものもより多くなったのではないだろうか。
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※インタビュー・写真 / 横川典視