今年6月に1500勝を達成。三冠を達成したクラキンコを含む北海優駿2連覇など、今シーズンの道営ホッカイドウ競馬リーディング2位(46勝、8月25日終了時点)。ここ一番の勝負強さでファンや関係者からも絶大な信頼を集めている、ベテラン宮崎光行騎手にお話を伺いました。
斎藤:騎手になったきっかけを教えてください。札幌出身ですよね。
宮崎:親が競馬が好きで、札幌競馬場によく見に行きました。両親は競馬関係の仕事というわけではなかったんです。背が小さいからなれるかな、と思って。
斎藤:でも今、そんなに体が小さい感じはしないですが...。
宮崎:中学3年の時は、体重が32キロしかなったんです。その時は、地方も中央もわからずに岩見沢に連れていかれました(笑)。
斎藤:所属は、須藤三千夫厩舎でした。
宮崎:騎手デビューの年(1984年)が、須藤先生の開業1年目で、先生の騎手時代の勝負服をそのまま受け継ぎました。先生には、「取り柄を持て」と言われましたね。ひとつずつやれ、と。スタートに気をつけるように、とよく言われました。2歳戦が多いので、若駒のスタートの出し方、ゲートの中の馬の御し方などを丁寧に教えてくれましたね。
斎藤:思い出に残る馬を教えてください。
宮崎:初めて重賞を勝ったツルギエイカン。
斎藤:平成元年の赤レンガ記念ですね。その年の第1回ブリーダーズゴールドカップでも3着でした。
宮崎:その時でデビュー6年目だけど、それまでは全然馬に乗せてくれなかったよ。それを勝ってから、大きいレースにも乗せてくれるようになった。そこからだね。
宮崎:それと、中央の芝で勝った、クラキングレディ(2005年8月13日、札幌12R)。芝で合いそうだね、って須藤先生とずっと言っていた馬で......。(その年の5月に)先生が亡くなった後に勝ったから。それは......ぐっときたね。芝で勝ちたかったから。先生は、厳しくて、きつい言い方もするから、喧嘩もしたし、ぶつかったりもした。でも、走る馬に乗せてくれた。
斎藤:須藤先生が、どんな時でも宮崎さんを乗せていた、という話はよく聞きました。今は松本隆宏厩舎所属ですね。松本さんも名騎手でした。
宮崎:先生が松本さんを乗せていたから、良く見ていた。簡単に乗ってぱぱっと勝つし、騎乗スタイルがきれいだよね。
斎藤:中央競馬でも10勝しています。私は1998年、チェックメイトに騎乗して単勝2万円台の穴を空けたときのことが印象に残っています。
宮崎:チェックメイトはあのあとエンジンかかって、重賞勝つまでになったからね。きっかけになってくれたのかもしれないね。どちらにしろ、強い馬に乗らないと勝てないから。
JRAで勝つというのはすごく大変。だからこそ、その中で勝つという醍醐味もある。初芝が多いので、一発勝負になるから、その中でも、できるだけいい結果を出せるように考えている。最初は芝に戸惑ったけど、今は何回も乗っているから、飛びや気性でその馬が芝に合うかどうかはだいたいわかる。適性は、ダートを走っててもわかるよ。まぁ、走ってみないとなんともいえないけど。
斎藤:今年まで、北海優駿を3連覇していますね(アラベスクシーズ、クラキンコ、ピエールタイガー)。このレースに思いはありますか?
宮崎:重賞はどんなレースでも勝てるのは名誉なことだから、どのレースが、ということは特にない。勝ちたいレース? ほとんど勝ってるからなぁ。そういえば、牝馬重賞を勝っていないな。今後は古馬の交流重賞で勝ちたいね!
斎藤:ブリーダーズゴールドカップのクラキンコは、地方馬最先着の6着でした。
宮崎:差があるよね...。馬も調子が悪かったからね。三冠の時に比べたら元気もなかった。でも、牝馬にしてはすごい馬だよね。
斎藤:クラキンコをはじめ、今までも大きなレースで乗替ることが多いですね。それでも乗りこなしていて...心臓に毛が生えているのではないですか?
宮崎:プレッシャーを感じないことはないですよ。もう28年乗ってるんで......スタッフの期待に応えるだけ。馬の能力と、厩舎スタッフが作り上げてきていることを信頼して、それを邪魔しないように乗るだけです。ゲート出てからは、もう馬のことを考えるだけですからね。
斎藤:では、趣味を教えてください。
宮崎:趣味はゴルフですね。騎手では、山口さんと行ったりします。
斎藤:自宅は札幌ですよね。札幌競馬場でレースがある時は、パドックから「パパ頑張って」と声がかかっていましたね(笑)。
宮崎:そうだったかな?(笑) 松本厩舎になってからは、全休の日もあるので、月に1~2回は家族に会いに行きます。娘が2人います。須藤先生の時は休みがなかったからなぁ。
斎藤:冬は遠征しないのですか?
宮崎:減量がきついので......。松本厩舎の馴致をしています。
斎藤:門別競馬場の印象はいかがですか?
宮崎:小細工がきかないから、強い馬に乗れば、乗りやすいよね。ただ、ペースが遅くて、ヨーイドンの直線競馬が多くなってしまう。雨降ると時計が変わるしね。霧の中で乗るのは大丈夫だけど、前で事故があったらわからないから危ないよね。後ろから行こうとすると、逃げ馬がどこにいるか見えないから、距離やタイミングがつかみにくいところはある。
斎藤:これからの目標を教えてください。
宮崎:あと何年乗れるかわからないからなぁ。
斎藤:何言ってるんですか、今もバリバリじゃないですか。
宮崎:若い頃よりは、衰えを感じるよ。気持ちはあるんだけど、昔ほど体がついていかない。2年前、足首を怪我したからね。去年も入院したし、門別になってから夏はいいことがないんだよな。
斎藤:(インタビューは騎乗停止になったすぐ後)......それも今年で最後でしょう! 今後の活躍を期待しています。ファンに一言お願いします。
宮崎:広い競馬場とナイター競馬を楽しんでほしいです。これからは2歳戦でスターホースが出てくるから、それを見つけてください。
思い切りのいい騎乗ぶりを見ていると、豪快な方なのかと思っていましたが、落ち着いた雰囲気はさすがベテランだと感じました。馬と人を信じてきた積み重ねが、結果に現れているんですね。これからも「あっ」と驚かせるような騎乗が楽しみです。
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※インタビュー / 斎藤友香