6月21日 第37回一條記念みちのく大賞典(水沢2000m)
(みちのく大賞典ゴール 写真・佐藤到)
1着 キングスゾーン
戦前の予想どおりキングスゾーンが好スタートを切って楽々に先手を取るかに見えたが、カネショウエリートが内から手をしごいて一旦先頭。それで「カッとなった」(安部騎手)そうだが、カネショウエリートが2番手に控えて1周目3コーナーでハナに立つ。
安部騎手は徐々にペースダウンし、キングスゾーンにひと息入れることに成功。スタンド前で後続にいた馬たちが掛かり気味となったように、完全のマイペース。これが2000mを持たせる最大要因となった。
2コーナーで再び後続を突き放しにかかったが、そうはさせじ―とリュウノキングダムが早めにスパートをかけてキングスゾーンに接近。3コーナーでは半馬身差まで詰め寄り、安部騎手の手が激しく動き、一瞬ヒヤッとさせたが、4コーナーで内と外の差を利して再び2馬身ほどリード。
直線を向いてもキングスゾーンのスピードは衰えなかったが、リュウノキングダムが一完歩ごとに接近。ゴールでは半馬身差まで詰め寄られたものの、おそらくゴールが50m先でもキングスゾーンは交わされなかったに違いない。
「中央馬が相手だとなかなか自分の競馬をさせてもらえなかったが、今回は地方馬同士で持ち味が最大限に生きた。一瞬で交わされるとレースを投げるケースが多いのでそれを出さないように心がけた。黒船賞惨敗後、ブリンカーを着用しているが、その効果がはっきり。いい頃の精神力、集中力を取り戻した」と安部幸夫騎手。
「次走予定ですが、選ばれればオッズパークグランプリ2009に行ってみたいですね」と原口調教師。
2着 リュウノキングダム
前半は3番手外の絶好ポジションをキープ。2コーナーでカネショウエリートが失速し、替わって2番手に進出。キングスゾーンを楽に逃がさないように早めに動いて猛チェックをかける。
3コーナーでは馬なりで半馬身差まで詰め、一方のキングスゾーンは必死に追うのとは好対照。そのまま抜け出すかに見えたが、キングスゾーンに馬体を併せようとすると根性に火がつき、再び突き放される。
それでもリュウノキングダムの気力は衰えず直線でもジワジワと差を詰めたが、半馬身差まで詰め寄るのが一杯だった。
キングスゾーンの勝ちタイムが2分8秒4でリュウノキングダムが2分8秒5。レース直前に霧雨が降ったが、当日は決して時計が速い馬場ではなく、非常に優秀。リュウノキングダム陣営にしてみれば悔しい2着だろうが、全国区の強豪相手にこの内容なら上々。成長一途の4歳馬でもあり、今後の活躍が楽しみとなった。
3着 マヤノグレイシー
前半は無理をせず後方4番手に待機。2コーナー過ぎから流れが一気に速くなったが、そこからインをついてスパート。3コーナーでは前の2頭に再接近したが、それが精一杯。直線で2頭に離される一方だったが、3着は死守した。
次走は盛岡芝2400mを舞台に行われる「せきれい賞」。昨年はボスアミーゴにアタマ差2着に惜敗したが、今度は芝で雪辱を狙うことになる。
4着 サイレントエクセル
道中はずっと3、4番手のインの経済コースをひたすら走る。ペースが上がった2コーナーから置かれ始め、今年はそのまま失速するレース続きだったが、今回は何とか我慢。岩手最先着の4着に粘った。
もちろん往時の迫力とは言えないが、得意の暑い季節を迎えて復調確かなことを証明した。
来週の27日から、“ミスターピンク”こと内田利雄騎手が岩手で4度目の期間限定騎乗に入ります。
内田騎手は既に岩手入りしていて、これまで通り水沢競馬場の調整ルーム内に住みこんでレースに臨む予定。所属は三野宮通厩舎となります。
昨年は韓国・釜山競馬場で日本人ながらリーディング獲得、マカオでは地元G1レースを優勝してまさに「世界のピンク」に。この2月には園田競馬場で行われた2000勝以上の騎手の祭典・『園田ゴールデンジョッキー』で総合優勝も果たしました。
また内田騎手はファンサービスの楽しさでも有名。レースでの活躍以外にもどんな逸話を残してくれるか、そちらも楽しみですね。
月曜のメインレースはC1級の1800m戦・焼石岳賞。出走10頭中9頭が前走優勝・残る1頭も2着で好調馬揃いなのですが、しかしどの馬も1800mの実績が薄く、距離が最大のカギになりそう。好調さを買うか、数少ない手掛かりを元にこの距離の適性を探るか?思った以上に悩まされるレースです。
本命は悩んだ末に(6)エアメギド。岩手転入後6戦5勝2着1回という成績はさすがはダービー馬エアシャカールの半弟というところ。ここまで5連勝してきていながら前走でC1級に上がって勝ったばかり、おかげでハンデ1kg増に留まっている点も有利に働きそう。
不安があるとすれば、距離が伸びるに連れてタイムや内容が平凡になってきているのが気になる点。勢い重視で行けばこの馬なのですが、あまり強気になりづらい部分があるとは思っておいた方がいいでしょう。
対抗は(10)ウイニングアーク。57kgに加え1800mの大外枠はかなりの不利。しかし旧所属地での1900mや2000mの経験が、勝ち星はないまでも豊富なのが魅力的です。前走の内容なら一ハロン延長もこなしていいはず。
意外に面白そうなのが(2)マンフッド。前に行ってバテないところ、それでいて脚も使えるところ、つまり安定度という点で優位さがありそう。しぶといタイプだけに距離延長がプラスになる予感も。
他にも面白そうな馬が何頭か。まず(8)ギンガスター。前走は-21kgでしたが、過去の戦いでは500kg台を超えると重い印象があった馬だけに483kgという体重がむしろ良かった感。今回再び大きく増えるような事が無ければ前走の再現も。
(9)ジョッキーポルカは血統的にこの辺までは持つ馬。外枠からでもうまく流れに乗れれば。
◆買い目
馬単(6)=(10)、(6)=(2)、(10)=(6)、(6)→(8)、(6)→(9)
◆お奨めこの一頭
3R:キャバックガール
前走があまりにも強い。走破時計の単純比較だけでも圧倒的優位だ。
21日(日)メイン10レースは「第37回一條記念みちのく大賞典」(水沢2000m)。2000年以降、当初は東北三県(上山、新潟)に門戸を広げ、その後も発展拡大。現在は全国の地方競馬に門戸を開放し、第31回マキバスナイパー(船橋)、第34回コアレスハンターと2頭の遠征馬が優勝。
今年は3頭目となる遠征馬優勝の可能性が非常に高く、有資格馬はリュウノキングダム、キングスゾーンの2頭。
まずはリュウノキングダム。南関東クラシック戦線に名乗りを上げることはできなかったが、着実に力をつけて南関東で通算6勝。初の他地区遠征となった前走・シアンモア記念では菅原勲騎手を背に、2番手キープから直線アッサリ突き抜けて圧勝。2着ブローザウインドに4馬身差をつけ、待望の重賞タイトルを獲得した。
船橋帰郷後は疲れを取ることに専念し、みちのく大賞典へ直行。2000mの距離も昨年8月、戸塚記念トライアル東京スポーツ盃・芙蓉賞快勝で経験済みなのが心強いが、それよりも何より上昇一途の4歳馬。この若さが眩いばかりに輝き、岩手重賞2連勝に自信満々で登場する。
(キングスゾーン 写真・佐藤到)
一方のキングスゾーンはただ1頭のグレードウィナー。07年、サマーチャンピオン(Jpn? 佐賀)で初のグレード制覇。その前後も全国を股にかけて活躍し、南部杯(Jpn? 盛岡)にも2度参戦。いずれも地方馬で最先着の4着に善戦した。
気になるのは近走ちょっと精彩を欠いていることだが、かきつばた記念(Jpn? 名古屋)7着、さきたま杯(Jpn? 浦和)9着はグレードハンター・スマートファルコンが相手。現在、同馬はグレード6連勝中と突っ走り、キングスゾーンと似たような脚質なので仕方なしの結果だった。
それで新たな局面を切り開きたい(原口調教師)との意向で、みちのく大賞典をターゲットに選んだ次第。しかも黒船賞(高知)9着を機にブリンカーを着用。その効果が出始め、いい頃の精神力と集中力を取り戻したという。
さて結論だが、キングスゾーンのキャリアを重視し主軸に推す。リュウノキングダムの上昇度も見逃せないが、2000m経験があるもののタイムが物足りないし、ここ一番では格がモノを言う。
対する岩手勢は今シーズン古馬戦線の結果から遠征馬に比較して見劣りするのは否定できない。ただカネショウエリート、アンダーボナンザは叩かれながら良化傾向がはっきり。そこの活路を見出したい。
アンダーボナンザは一戦ごとにレース勘が戻ってあすなろ賞を快勝。いまや岩手のトップに君臨したといっても過言ではない。母アンダースワローがそうだったように、本質的にはマイラーだろうが、心身ともに充実した今なら2000mも克服十分。前半は無理をせず、直線勝負に賭ければ台頭の可能性もある。
カネショウエリートは積極的なレース運びが功を奏し、あすなろ賞、かきつばた賞と連続2着。いずれも僅差に敗れており、距離延長で徐々に本領を発揮し始めた。ただキングスゾーン、リュウノキングダムが早めに動いて3コーナーでもたつくようだと苦しいかもしれない。
評価に迷うのがショーターザトッシ。ここ2戦シアンモア記念5着、あすなろ賞7着に凡走。これは体重減の影響が大きく、パドックでも明らかに細く映っていた。岩手初戦の赤松杯で見せたパフォーマンスは本物。馬体さえ回復すれば反撃に転じて不思議はない。
あとはコース適性あるサンシャインヘイロも怖いが、あくまでも連下押さえ。
◎ ?キングスゾーン
○ ?リュウノキングダム
▲ ?アンダーボナンザ
△ ?カネショウエリート
△ ?ショーターザトッシ
△ ?サンシャインヘイロ
3連単は6、9の1、2着折り返しから8、4本線。あとは10も押さえが必要
馬複は6−9、6−8、4−6、8−9
<お奨めの1頭>
11レース ニシネホウジュ
好評の騎手ハンデ戦、第三弾。水沢マイルを最も得意とし、52キロの軽ハンデも味方する
20日(土)メインはA級二組「田瀬湖湖水まつりレース」、水沢1600m、10頭立て。有力視されていたメタモルキング、エアルーアが自重し俄然、ヒカルメイオーには恵まれた組み合わせ。A級戦での初白星はほぼ手中にした感じだ。
中央1戦後、岩手へ転入。当初は5ヵ月半ぶりの実戦が影響して2、3着にとどまっていたが、4戦目から連勝街道まっしぐら。圧巻の10連勝を飾った。中5日で臨んだB2・睦月賞(1月3日)で3着に敗れ、連勝ストップしたが、冬休み明けから3連勝をマーク。ついにオープンまで昇り詰めた。
さすがにメンバーが骨っぽくなり、なかなか勝てないが、特別・あすなろ賞で大外から鋭く突っ込んで0・2秒差3着。これでオープン通用のメドが立った。前回・けやき賞はレベル差が明らかのJRA勢が相手で6着に沈んだが、岩手勢では最先着を果たした。
今回は一気にメンバーが楽になり、いかにも勝ってくださいの一戦。順当勝ちを収めて以降の重特挑戦に弾みをつけたいところだ。
相手はトキノプリンセス、ケイジーウォリアの2頭。トキノプリンセスは月に1回のローテーションをキッチリ守り、2着1回3着1回。先行力と粘り強さを武器に、安定した取り口を披露している。距離もコースも今回はベスト。マイペースの逃げに持ち込めばアッサリのシーンまである。
ケイジーウォリアは毎回、自己の能力を出し切るタイプで大崩れしないのが身上。ここ3戦は足踏みを続けているが、こちらも水沢1600mがベストの条件。よほどスローに落とされない限り、直線で確実に台頭する。
ヤマトスピリットは5戦連続で5着止まり。いい意味でも悪い意味でもこれがヤマトスピリットのすべてを現している。堅実な半面、詰め不足のため昨年4月以降、ずっと白星から遠ざかっている。それでも直線ではマズマズの脚を使うことができ、ノーマークにできない。
以下は離されてキタサンダイオウ、マイネルティーダ押さえ少々。
◎ ?ヒカルメイオー
○ ?トキノプリンセス
▲ ?ケイジーウォリア
△ ?ヤマトスピリット
△ ?キタサンダイオウ
3連単は4を1着固定に5、3の折り返しが本線。あとは8、9を3着押さえ
馬複は4−5、3−4、4−8、3−5
<お奨めの1頭>
8レース ネクストスター
前回は後方から伸び切れず5着に終わったが、自己のポジションを取れなかったのが敗因。このメンバーなら反撃必至だ
またまた馬に関係のない話と思われそうですが、今回は岩手の隠れた名品のご紹介。
先日頂いた仕事で、岩手の“炭”を撮影する機会がありました。皆さんは炭のブランドというと何を思い浮かべますか? ほとんどの人が『備長炭』と答えるでしょう。確かに備長炭は高級料亭などでも使用され、火持ちも良く、また炭自体が硬くて叩くと何とも言えない良い音がでるあたり、いかにも高級品という感じがします。
ですが!都道府県別木炭生産量No.1は何処かというと、それは岩手県なのですねぇ〜。(社)岩手木炭協会さんのホームページによりますと、国内生産量の1/4を我が岩手県が占めているそうです。もともと広葉樹林が豊富な北上山地を擁する岩手は、江戸時代から炭の産地。品質の面においても、岩手ブランドの黒炭は紀州備長炭に劣らない火力があり、また軟らかい黒炭ゆえ火付きが良くすぐに温度が立ち上がる扱いの良さは、焼き物をはじめどんな料理にも最高なのだとか。
さてこれからのレジャーシーズン。キャンプ場でバーベキューなどを計画している方もおられるでしょう。でも、いざ焼き始めようとしてもなかなか火が点かずに苦労し、点いたら点いたで煙にむせながら肉を焼いたという経験はないですか?その点、炭素率90%以上を誇る岩手木炭(ダイヤモンドに次ぐぐらいの炭素率だとか)は不純物が少ないため煙や炎が少なく、強い赤外線の熱で食材をきれいに焼くことができます。すると表面はパリッと中はジューシーになり、肉も野菜も素材の旨みが引き出されるのです。私は若干スモークされたような煙くさい肉がバーベキューの醍醐味と思っていましたが、間違っていたのですねぇ。
そんなに良い炭なのに、なぜ“隠れた”名品なのでしょうね?ホームセンターのキャンプ用品コーナーに行ってみると、置いてあるのはほとんどがマレーシア産のマングローブ炭。その隣にオガ備長炭(備長炭の製法で作られるがオガ屑を固めたものを原料にしている)という具合で岩手の炭は目立たないところか、まったく売られていなかったりします。やはりマレーシア炭の約3倍という値段がネックなのでしょうね。ところが実際の料理においては、火力が強く火持ちが良いため炭の消費量が少なくてすむということなので、結局はお得なのではないでしょうか。その上、残った炭は水を張ったバケツに沈めて消火し『消し炭』にすると再利用可能で、濡らしても簡単に再点火するのだそうですよ。
環境面においても、原料となるナラの森林は人の手をかけることによって再生能力が活性化し、元気な状態を維持できるのだそうです。決して禿げ山にするような伐採はせず、自然と人間が付き合いながら、資源を山から「分けてもらう」という姿勢がいいですね。また炭が燃えることによってできるCO2は、木が生長するときに吸収したもの。化石燃料と違って大気中の二酸化炭素を増やすことにはなりません。
こんなに良いことづくめの岩手木炭。ブランドとしてもっと広く知られるようになって良いと思うのですが。
(文/写真・佐藤到)