4月2日に笠松競馬場でデビューした東川慎騎手。デビュー当日のメインレースで初勝利を挙げると、父である東川公則騎手は涙を流したとか。笠松で生まれ育ち、「父を超えたい」と目を輝かせるルーキーに生い立ちや目標について伺いました。
■お父様は現役で2700勝以上を挙げる笠松の名手・東川公則騎手。騎手になろうと思ったきっかけはやはりお父様だったんでしょうか?
はい、父に憧れてですね。小さい頃から「騎手になりたい」と思っていたわけではなくて、中学校に入ってから次第に父がカッコよく感じてきました。僕は6人兄弟の5番目なんですが、兄弟の中では一番体格が恵まれていたんです。
それでしたら、「騎手になりたい」と言った時にはお父様は喜ばれたんではないですか?
よくインタビューで聞かれるんですけど、父はそんなに大きなリアクションはしていなかったと思います。「一緒に乗れるのが嬉しい」とは言っていて、それは自分も嬉しかったです。
地方競馬教養センターに入所前から乗馬は習っていたんですか?
一応、小学生の時にやっていたんですけど、そこまで本格的にはやっていませんでした。地方競馬教養センターへは1回目は面接でダメで、2回目で合格しました。
デビュー初日の4月2日、5戦目での初勝利
デビュー初日のメインレースで初勝利。家族が応援に来ていたそうですね。直線では歓声など聞こえましたか?
もう必死過ぎて、全然聞こえなかったです。1800m戦だったので、正直「どうなのかな?」と思っていたのですが、少し追ったら馬が応えてくれてビュンッと行ってくれました。勝ったという実感はなくて、「え、マジで!?勝ったしまった!」って感じでした。ゴール後に(佐藤)友則さんが馬上から手を差し伸べてくれて、泣きそうになりました。バレンティーノの調教には友則さんが乗ってくれて、(尾島)徹先生にもお願いしてくださいました。ホント、友則さんに感謝ですし、徹先生にも馬主さんにも全員に感謝です。でも、もっと楽に勝たせてあげたかったな、と思うので、そういう意味ではこのレースはあんまり見たくないんです。
お父様と同じ職業に就きましたが、家ではどんな感じなんですか?
父は仕事では真面目ですけど、家ではワイワイしています。兄弟同士イジり合ったりしますし、家族みんな仲がいいですね。いまこうして父と一緒に乗れて、迷惑しかかけていないですが、最近は競馬の話もするようになりました。まだ僕は全然競馬のことは分からないですが、調教の話とかするのが楽しいですね。
(5月1日現在)デビューして1カ月が経ちましたが、どうですか?
まだ2勝目を挙げれていないんですよね......。厩務員さんには「勝つのが早すぎたな」って言われました(苦笑)。初勝利はホントみなさんに感謝です。
となると、今の目標は?
とりあえず2勝目ですね。初勝利を挙げたバレンティーノはこないだ(4月23日)2着やったんですよ。
(編集部注:5月9日笠松第7レースで2勝目を挙げました)
将来的な目標は何ですか?
ぶっ飛んでいますけど、父を超えたいです。通算勝利数もですし、笠松リーディングも獲りたいですね。父がリーディングを6回獲っているので、僕は7回!そのためにはもっと勉強します。
笠松には東川騎手が2人いるわけですが、ファンのみなさんには何て呼んでほしいですか?
好きな呼び方で呼んでいただければと思います。「ジュニア」はなんか照れ臭いですけどね。みなさんの応援にこたえて、どんな人気のない馬でも勝てるようになりたいです。
初勝利セレモニーでプラカードを持つ父、東川公則騎手
勝負服の胴に入っている菱形はお父様と同じですしね。
はい、この菱形でがんばっていきたいです。とにかく、勝ちたいです!笠松のない週は名古屋にもレースに乗りに行くんですけど、楽しいです。いっぱい乗せてもらえるので、がんばります。
最後にオッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
いつも同じことしか言えないのですが、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大恵陽子(写真:岐阜県地方競馬組合)
笠松の騎手として初めてNARグランプリ優秀新人騎手賞を受賞した渡邊竜也騎手。まもなくデビュー3年目を迎える彼は、重賞初制覇にあと一歩まで手が届きかけています。また、ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)を経験したことであどけなかった表情は凛々しくなってきました。着実に成長を遂げている彼に、現在の心境を伺いました。
NARグランプリ優秀新人騎手賞の受賞、おめでとうございます!笠松の騎手がこの賞を受賞するのは初めてです。
ビックリしました。他の先輩方が受賞されてそうですけどね。加藤聡一先輩(名古屋)や鈴木祐先輩(岩手)が新人賞を獲ったのを見て、勝利数で一番になればいただけるのかな、と考えていました。なので、「獲れるんじゃないかな」と思っていました。デビューした時からずっと新人賞を獲りたくて気にしていたんです。嬉しいですね。
デビュー2年目となる昨年は64勝。前年の38勝から大幅に勝ち星を量産しました。振り返ってみてどうですか?
去年は取りこぼしが多かったなって思います。所属の笹野博司厩舎は昨年、笠松リーディングですし、先生がいい馬に乗せてくださるのでもうちょっと勝つべきですね。
昨年は笹野厩舎にホッカイドウ競馬から水野翔騎手が移籍してきました。3年先輩にはなりますが、年が近くて仲が良く、ライバルとしてもいい刺激になっているように見えます。
刺激は少なくともあるかもしれないですね。僕の中では水野さんと競争しているって感じは特別ないですが、水野さんから学ぶこともあります。技術的な面は向山(牧)さんとかに聞くことが多いです。一緒にレースビデオを見ている時に「こうですかね?」とか「あそこはこうした方がよかったですかね?」と聞くと、答えてくださることもあります。
昨年は年末に重賞で惜しいレースが2つありました。まずはボルドープラージュ。ライデンリーダー記念では7連勝中だったエムエスクイーンにクビ差まで迫って2着でした。エムエスクイーンより内の枠で、同馬より前でレースを進めましたが展開としてはどうでしたか?
枠の並びが逆だったら、エムエスクイーンをマークしたかったですね。ボルドープラージュは先頭に立ったり、距離だったり、何かしらの理由で最後に止まるところがあるんです。枠順が逆だったら、ぴったりマークしてレースができたかな、と思います。
2月には遠征して園田ユースカップでも惜しい2着。レース後は悔しそうな表情が印象的でした。
1400メートルでしたし、馬場も味方して最後までもってくれました。でも、この距離でも直線は止まってしまうので油断はできなかったです。決め手勝負になると、勝ったジンギの方が断然上ですし。勝てなくてめっちゃ悔しかったですが、ビデオを見ると楽に交わされてしまっていましたね。園田には同期が2人(長谷部駿弥騎手、永井孝典騎手)いるので、同期の前で重賞を勝ちたかったです。検量室前に戻ってきたら長谷部に満面の笑みで「惜しかったな」って言われて、余計に悔しかったですね。
ボルドープラージュで惜しくも2着だった園田ユースカップ(写真:兵庫県競馬組合)
昨年末にはもうひとつ、カガノカリスマで東海ゴールドカップ3着がありました。カガノカリスマではその後、川崎記念や佐賀記念など全国に遠征に出ていますね。
いろんなところに連れて行ってくれる馬ですね。以前はあまり歩様が良くなかったんですが、僕のところに回ってきてから調教でしっかり乗ったら結構良くなってきて、いろんな競馬場に行けるようになりました。ダートグレードレースで上位争いに加わることはなかなか難しいですが、こうして馬と遠征できるのってすごく楽しいですね。
YJSでも全国の競馬場で騎乗し、2年連続でファイナル進出を果たしました。振り返ってみていかがですか?
YJSは僕のモチベーションでした。この2年間はYJSを追いかけていたら終わっていましたね。「今度YJSで乗る競馬場ってどんな感じなんだろうな?」とイメージして、笠松のレースでもそれに例えて乗ってみたりしました。イメトレの効果があったかどうかはわからないですが、いい馬が当たって予選も突破できたので、やっておいて良かったかなと思います。昨年は予選ラウンド地方全国1位で行きたかったんですが、最後の最後に櫻井(光輔)にやられちゃいましたね(苦笑)。
昨年12月に通算100勝を挙げ、減量を卒業しました。先輩たちと同じ条件でレースに騎乗することになりますが、これからの目標はなんですか?
やっぱり重賞制覇ですかね。ボルドープラージュは水沢に移籍しちゃうそうなのですが、そろそろビップレイジング(東海ダービーなど重賞2勝)が帰ってくるらしいので、期待しています。あとは、また先生がいい馬を連れてきてくださると思うので、そこで期待にも応えたいですね。今年は尾島(徹)先生も勢いがあって笠松リーディングなので、自厩舎がリーディングになれるようがんばりたいです。
最後にオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
YJSには出場できなくなって、いろんな競馬場に行くことがなくなったので、みなさんに忘れられないようにしたいです。笠松に引きこもっていても仕方がないので、いろんな所に行って顔と名前を覚えてもらえるように頑張りたいと思うので、僕を忘れないでください。
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※インタビュー / 大恵陽子
昨年はキャリアハイの122勝を挙げ、笠松リーディング第2位の成績を残した筒井勇介騎手。12月30日には地方通算1000勝を達成し、大晦日には久しぶりの重賞制覇。最高の形で2018年を締め括ったように見えますが、実際はどうだったのでしょうか。
まずは、1000勝達成おめでとうございます!
ありがとうございます。1000勝という数字は前から意識していました。実際に近づいて来て2カ月くらいはなかなか勝てなくなって...。11月の半ばくらいから全然勝てなくて、12月の最初の開催なんて1勝しかできなかったんです。その開催くらいで達成できるかななんて思っていたのに全然勝てなくて、足踏み状態が本当に苦しかったです。
やはり数字というのは大きいんですね。
そうですね。自分ではそこまで意識しないようにと思っていたんですけど、振り返ってみるとだいぶ意識していたのかなと。1000勝を達成するまでは苦しんだのに、勝った次の日からはポンポンポンといきましたから(苦笑)。
地方通算1000勝達成(2018年12月30日、笠松第7レース)
12月30日、笠松第7レースのゴッドミラクルに騎乗しての達成でした。
デビュー当初からお世話になっている馬主さんの馬で、自厩舎で達成できたので、そこはすごく嬉しかったです。嬉しいの一言ですけど、いや~長かったなって思いました。1000勝もありましたし、同じ時期にリーディング争いもあったので、そういうのもいろいろ重なって。勝てないし、どんどん差は広げられるし...。いろいろと考えさせられる時期でした。
昨年は122勝を挙げ、笠松リーディングは2位という輝かしい成績でしたけれども。
一応キャリアハイだったのでありがたいです。たくさんいい馬に乗せてもらったので、そのお陰でたくさん勝つことができました。まだ取りこぼしも多いですし、実際に後半勝てない時期もあった中で、本当にたくさんの方々に支えていただいたなと。感謝の気持ちでいっぱいです。
リーディング2位というのも初めての経験でしたが、トップが見えた位置での騎乗というのはいかがでしたか?
やっぱり今までとは違った感じで、周りも『リーディング獲れるぞ』っていう目で見てくれるので、いろいろと考えるところはありました。気にしないようにはしていましたけど、どうしても意識していたんだと思います。
先ほども仰っていましたが、1000勝を達成した次の日には4勝の固め打ち。しかも東海ゴールドカップで久しぶりの重賞制覇を果たしました。
1000勝も達成して、リーディング争いも決着して、気持ちが落ち着いたからなのか...まぁ、こんなもんなんだなって(笑)。久しぶりの重賞はすごく嬉しかったです。(2013年のライデンリーダー記念以来)5年ぶりですから。
ダイヤモンドダンスは6番人気でしたけれども、レース前の雰囲気というのはいかがだったんですか?
調子がすごく良かったんですよ。追い切りも今までで一番良かったので、いい走りができるんじゃないかと期待していました。人気はあんまり気にしていなくて、最初からああいうレースをしようと思っていて。落馬のアクシデントもあったけれど、人気どころが前でやり合う形になって、思った以上に流れが向きました。向正面からすごい手ごたえで上がって行って、マクり切ったところでなんとかなるなと。あとは後ろから来ないでくれと思いながら追いました。すべてが上手く行ったし、上がって行った脚がすごく良くて、本当に気持ち良かったです。
2018年大晦日の東海ゴールドカップをダイヤモンドダンスで制覇
ゴール板のところでは気持ちの入ったガッツポーズが飛び出しましたし、その後流していって1コーナー過ぎでもガッツポーズしていましたね。
はい。嬉しくて自然に出ていました。1コーナー過ぎの外側には装鞍所があって、あそこにも厩務員さんたちがいたので「やったー!」って。馬主さんにとっても花本厩舎にとっても初重賞制覇だったし、最近笠松の馬が重賞を勝てなかったので、みんなに向けてという気持ちもありました。
お世話になった方々に、いい恩返しができましたね。
まだまだ足りないですけど、でもすごく嬉しかったです。馬主の安東純二さんにはとてもお世話になっていて、よくご飯とかにも連れていっていただくんですけど、笠松の表彰台に立つのが夢だって仰っていたので、叶えることができて嬉しくて。花本正三厩舎にもすごくお世話になっているし、僕にとっては義理のお父さんなので。
え?そうだったんですか?!
そうなんですよ。花本先生の娘さんと結婚しているので。嫁さんもすごく喜んでくれました(照)。
2018年は苦しみながらも最高の締め括りでしたね。2019年はどんな年にしたいですか?
毎日の仕事をコツコツ積み重ねていくというのは当然ですが、やっぱりリーディングは狙っていきたいです。(佐藤)友則さんが抜けているので難しいところもありますけど、諦めずに食らいついて行きたいですね。去年は友則さんが南関東に行っていた時期があって、だからこそ大きなチャンスだったのに、僕が勝てない時期があって、友則さんがポンポンポンと勝っていったので差を広げられてしまいました。今年も遠征に行くことも多いだろうし、友則さんからも「がんばれよ」って言ってもらっているので、なんとか食らいついて行きたいです。
佐藤騎手が全国的に活躍して、地元を空けることが多くなると、筒井騎手にかかるプレッシャーも大きくなりそうですね。
そうですね。去年はそこでプレッシャーを跳ね返し切れなかったなと。簡単なことではないですが、一度経験したというのは大きいので、今年こそはと思っています!
では、オッズパーク会員の皆さんに笠松のPRとメッセージをお願いします。
笠松のレースでのポイントは、まずスタートと、向正面の仕掛けどころです。前に行っていてもスローに落とすと一気にマクッて来る人もいるので、そこをどう対処するか。油断しているとマクり切られたりするし、でも前に行って楽をしたいので、そこの攻防が一番の見どころだと思います。僕自身のことは、ありきたりなんですけど、これからも1つ1つ丁寧に乗って、全力で頑張りますので長い目で見て応援していただけたら嬉しいです。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:岐阜県地方競馬組合)
オッズパーク地方競馬応援プロジェクトの4世代目カサマツアトリアを管理する、笠松の尾島徹調教師。トップジョッキーから、若くして調教師に転身して4年目。すでに多くの結果を出しています。
京都競馬場に出走した(2017年5月20日)カサマツブライトと尾島徹調教師(右)
まずは、カサマツアトリアの初勝利(10月4日・笠松第2R)おめでとうございます!
ありがとうございます。本当は新馬戦で勝ちたかったんですけど、勝ち切れず申し訳ありませんでした。体の大きな馬(デビュー戦は547kg)で、スピードに乗るのに時間が掛かってしまい、800mではちょっと厳しかったですね。でも2戦目では動きがガラッと良くなって、2番手から押し切る競馬を見せてくれました。
アトリアを最初に見た時の印象はいかがでしたか?
1歳の時にサマーセールで見たんですけど、まず最初に「大きいな」って。当時から脚も太かったですし、すでにかなり大きかったんですけど、腰高の体つきだったので、「まだまだ大きくなるな」と思いました。その後、BTCへも何度も見に行きましたし、跨った時には力強いトビをしていて、「ダート合うな」と。入厩するのが楽しみでした。
今年の夏は暑さがキツかった分、夏負けがひどかったそうですね。
そうなんです。一番涼しい時間に調教するよう調整していたんですけど、それでもかなり夏負けしてしまいました。調教ではずっと佐藤友則騎手に乗ってもらっていたんですけど、なかなか前向きな言葉が出てこなかったんです。佐藤くんが(期間限定騎乗で)南関東に行く前に最後の追い切りに乗ってくれた時はだいぶ良くなってきていて、ただスピードに乗るまでに時間がかかるので、800mは厳しいなという感じでした。そこから直前の追い切りで時計もそれなりに出て、動きもさらに良くなって、新馬戦でもいいところあるんじゃないかと期待できるようになりました。
カサマツアトリアのデビュー戦(2018年9月19日、2着)
待望の新馬戦は渋太い脚を使って2着を確保しました。
やっぱり800mは忙しかったですね。勝った馬に6馬身も離されてしまい、悔しかったです。でも一度使って動きはすごく良くなりましたし、追い切りの時計も速くなって。(2戦目も)新馬戦と同じく岡部(誠)騎手に乗ってもらったんですけど、1コーナーでちょっと掛かり気味になってしまって。岡部さんも、「1戦目の感じから、あんなに行くとは思わなかった」って、いい意味でびっくりしていました。
初戦とは道中の行きっぷりが全然違いましたもんね。
前半勢いよく行っちゃった分、最後は少し甘くなってしまったけど、勝てて本当に良かったです。初の1400mでしたが、岡部さんも「すごく良かった」と褒めてくれました。使った効果もあるし、涼しくなってきてだいぶ馬が良くなっていますが、まだまだ良くなる余地があるので、今後が楽しみですね。
この馬の良さというのはどのあたりに感じていますか?
体が大きいのでパワーがあります。トビもすごく大きいですから。入厩したての頃は、まだ体が上手に使えなくて、ドタバタしたような走り方だったけれど、今は後ろ脚がだいぶしっかりして、走り方も良くなりました。大きな体ですが、小回りの笠松のコーナーも上手に走れるようになりました。
とにかく体が大きいという印象ですが、性格はいかがですか?
これが、めちゃくちゃ大人しいんです。厩舎でも調教でも、悪いことは全然しないので、そういう部分は手が掛からなくて良かったですね。やっぱりあれだけの体なので、もし反抗的だったりうるさかったりしたら、扱うのが大変だったと思いますから。体は大きいですが、人懐こくて可愛いですよ。
今後の目標を教えてください。
JRA認定競走を勝って、重賞路線に乗せたいです。力強い走りでバテない強みがあるので、あとはもう少しスピードというか、瞬発力がついてくれたらさらに強くなると思います。
カサマツアトリア
続いては、調教師としてのお話をお聞きしていきます。騎手から転身して3年目、すでに256勝(2018年10月21日現在)を挙げて順調ですね。
本当に周りの方々のお陰です。騎手の頃もそうでしたけど、今は余計にそう思いますね。たくさんの方にオーナーさんを紹介していただいて、いい馬たちを預けていただいて。信頼しているスタッフが一生懸命頑張ってくれていますし、本当に僕は運がいいんです。
騎手時代とは仕事の内容が違うと思いますが、葛藤などはありますか?
確かにいろいろなことが全然違いますね。今思うと、騎手の時には調教とかもちょっと楽をしていたなと反省しています。実際、今の方が調教にも乗ってますから。すごく忙しいので、思い悩む暇がないくらいです。ただ、レースを見ているというのはしんどいものですね。パドックで送りだしたら、もう何もできないですから。レースに乗っていた時の方が、気持ち的には楽でした。
MRO金賞で、待望の重賞初制覇でした。騎手時代はかなりの数の重賞を勝っていましたが、調教師として重賞を勝った感想は?
やばかったです。もう、泣きそうになってしまって、こらえるのが大変でした(笑)。本当に時間がかかってしまいました。重賞を勝つって難しいですね。いい馬をたくさん預けていただいたし、開業してすぐに重賞でも2着3着来れたので、ここまで時間がかかるとは思っていなくて。時間がかかってしまったけれど、勝てて物凄く嬉しかったです。
ドリームスイーブルで金沢・MRO金賞を勝利(2018年8月9日、写真:石川県競馬事業局)
しかも鞍上は佐藤友則騎手!
佐藤くんは騎手時代から仲が良かったんですけど、今はすごく頼りにしている存在です。MRO金賞も上手く乗ってくれて。正直、ラスト100mくらいまでは勝つと思わなくて、「あぁ、2着か...」と思いながらけっこう冷静に見ていたんです。まさかあそこから差してくれるとは。検量に上がって来て、馬から下りた時には何も言わずに抱きしめました。
佐藤騎手にとっても、とても嬉しい勝利だったと仰っていました。尾島調教師が騎手を辞める時に、「友くんを10年連続笠松のリーディングにする」って言われて、ものすごく励みになったと。
そうですね。ちょっとくらいはリーディングになるお手伝いができたかなと思うんですけど、でも佐藤くんは有言実行でリーディングになったのに、うちの厩舎はまだなっていないので、早く佐藤くんと同じ立場になれるように頑張ります。
では、オッズパーク会員の皆さんへメッセージをお願いします。
騎手の頃からたくさんの方々に応援していただき、とても感謝しています。調教師になってからは、カサマツブライトで9勝させていただきましたし、今はカサマツアトリアでまた勉強させていただき、本当にありがとうございます。調教師としてはまだまだ新米ですが、笠松からスターホースを出せるように頑張ります。応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 赤見千尋
2016年から2年連続で笠松リーディングを獲得し、笠松の顔となった佐藤友則騎手。各地の重賞にスポット参戦し、8月からは初の南関東での期間限定騎乗に挑戦。JRAでもコンスタントに騎乗して結果を出しています。上を目指してフル回転を続ける原動力とは?
2016年に初の笠松リーディングを獲得し、そこからは不動の1位。もともと技術には定評がありましたが、どうやってこの上昇気流に乗ったんですか?
いやいや、本当に周りに恵まれただけなので。感謝しかないです。実はジョッキーになってからずっと、1年が終わる時に「やり切った」と思えたことがなくて。くすぶっていたんですよね。「このままじゃダメだ」と思いながらも、言葉にも出せなかったし行動にも移せずにいたんです。でも2014年の終わりに、名古屋の角田(輝也)先生が「お前、このままでいいのか?来年リーディング獲れよ」って言ってくれて。「いや~、厳しいですよ」って言いながらも、自分なりに意識改革して、言葉にも行動にも出すようにして。その年(2015年)は3位で結局リーディングは獲れなかったんですけど、初めてリーディングを目指せる位置まで行くことが出来て「今年、頑張ったな」って思えたんです。それと、僕にとっての偏西風が吹いたんですよね。何だかわかりますか?
偏西風??
尾島徹の騎手引退と、調教師になってからのバックアップです。徹が引退した時、「ともくんを10年連続リーディングにする」って言われたんですよ。後輩にそんなことを言わせた自分が情けないなと思いつつ、「絶対にやらなきゃ」って思いました。
尾島調教師はどんな存在ですか?
後輩なので、抜かれた時は悔しかったし、正直嫉妬もあったんです。でも、こいつスゲーなって思ってて。例えば、岡部(誠)さんと3人でご飯に行った時、当たり前のように岡部さんが奢ってくれようとしたんです。僕はその時、「すみません。ご馳走様です」って言ったんですけど、徹は「いや岡部さん、ダメです。僕出します」って言いだして。「いやいやいや」みたいなやり取りになって、徹がそこで「岡部さん!僕、岡部さんに奢ってもらってたら、いつまで経っても岡部さんを抜けないので」って言ったんですよ。その時、上に行く奴ってこういう奴なんだなって思って、後輩ながらグッときました。徹は体が大きくて減量に苦労して騎手を引退したから、本当は未練もあっただろうし、そんな奴に言われたんでね、これはもうやるしかないと思いました。
ご自身でも仰っていましたが、長年くすぶっていた中で一念発起しても、狭い世界ですからなかなか上手くいかないことが多いと思うんです。殻を破ることが出来た秘訣は何ですか?
僕は本気で騎手を辞めようとしたことが2回あるんですよ。どん底も味わっているし、正直怖いものはないんです。辞めようとした2回とも、周りに引っ張り上げてもらっているし、自分が恵まれているということにやっと気づきました。今までは、頑張ってやってダメだった時に、「やっぱりダメだ」みたいに思ってしまったんですけど、何でもっと周りを信じてもっと頼らなかったんだろうって思うんです。本当によくしていただいているので、もっともっと上手くなって恩返ししたいです。
2年連続笠松リーディングを獲りました。次の目標は何ですか?
今は期待してもらって、すごくいい馬にもたくさん乗せていただいているので、とにかく自分のレベルを上げたいです。それで今年は外に出ようかなって。8月から初めて南関東期間限定騎乗に行くし(8月27日~10月26日・大井所属)、笠松開催があっても他地区の重賞に声が掛かればスポット参戦したり、積極的に外で乗ることを意識しています。
JRAでもよく騎乗していますよね。
有難いことに、たくさんチャンスをもらっています。でも活かし切れていないんですよ。南関東やJRAは多頭数の競馬じゃないですか。それにコースもいろいろあって、そういうところでの駆け引きが僕には足りないんです。(吉原)寛人や(赤岡)修次さんを見ているとすごいなと思いますね。僕ももっともっと経験を積んで、あの2人のように地方を代表する騎手になりたいです。笠松の、ではなくて、地方の佐藤友則と言われるような存在になりたいです。
外で騎乗するのは、地元開催があるとなかなか難しいこともあるのでは?
そうなんですけど、寛人も修次さんも言うんです。「地元のリーディングにこだわっていたら上にいけない」って。もちろん獲れたら嬉しいですけど、それに捉われたらこれ以上上には行けないですから。今のままではまだまだ足りないし、周りに頼りっぱなしなんです。技術面もそうですけど、精神的にも「俺に任せろ!」ってドンと構えていられるような自信がまだなくて。外に出てたくさん経験して、もっと成長したいです。
リーディングを獲って満足!という感じではないですね。
全然満足してないです。もちろん獲れたことは嬉しかったですけど、獲ったら獲ったで次もって思うし、もっともっとってなる。それに、ジョッキーレースに呼ばれるようになったんですけど、周りを見ると負けているんですよね。結果も出ていないし。そこでも負けない技術を吸収したいです。
2018地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップは総合8位だった(後列右端)
そのモチベーションはどこから来るんですか?
自分のこともそうですけど、笠松にもっと人を呼びたいという気持ちも強くなったんです。笠松は騎手も少ないし、今は全国で勝ち負けするような強い馬もいない。リーディングになったからこそ、僕がもっとアピールしたいなと思うようになりました。今は夜中の1時半に起きて調教に乗る毎日で、辛いなと思う時もあるけど、「忙しいって幸せだな」って。努力を怠って調子に乗ったら終わってしまうので、今攻めないといけないなと思っています。
リーディングを獲った今だからこそですか。
そうです。どうしてそう思ったかというと、プロレスラーの内藤哲也選手の影響なんです。新日本プロレスはしばらく低迷した時期があったんですけど、今、内藤選手が注目を集めてまた人気がすごくて。でもそんな内藤選手が言うんですよ。「今僕が攻め続けないと、また暗黒期と言われた時のように戻ってしまう。だから僕は攻め続ける」って。僕も競馬界の内藤というくらいの気持ちで、攻め続けていきたいです!
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
いつも応援ありがとうございます。ファンの方の声を直接聞いて、ファン目線の競馬場にしたいと思っています。僕は今、騎手会の副会長なんですけど、ファンサービスもいろいろ考えているので良かったら参加してください。今、勝率も上がっているので、笠松開催では僕が来ない日はないと思って馬券をたくさん買っていただけたら嬉しいです。皆さんの馬券に貢献できるように頑張ります!
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※インタビュー / 赤見千尋