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松尾康司 1958年青森県出身。「テシオ」編集長 。思い出の馬は伝説の名馬トウケイニセイ。横川典視 1969年高知県出身。『いわて競馬マガジン テシオ』編集記者として活動中。東北の馬産地との繋がりも深い。佐藤到 1969年宮城県出身。97年のテシオ創刊とともに競馬撮影を始めた『メイセイオペラ世代』。

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帰ってきたユーキ

 7月29日、小雨が降る中おこなわれた8レースにエメラルユーキという馬がいまして、通常通りパドックを周回した後、阿部英俊騎手が騎乗して馬場へと向かいました。ところがこのとき、たまたま左側の手綱がハミの近くから切れてしまい、阿部騎手が右の手綱だけで必死に制御しようとしたものの、ラチに接触して騎手を落とし放馬してしまいました。
 人馬とも大事には至らず良かったのですが、エメラルユーキはトラックを半周ほど走り、今度はUターンしてコースを逆走。スタンド側まで来るとレース後の馬が引き上げる出口のところから馬場を出て、職員の制止もきかずそのままの勢いで厩舎地区の方へ走って行ってしまいました。
 今は水沢の厩舎から参戦しているエメラルユーキですが、実は昨年までは、盛岡の小笠原義巳厩舎にいました。このとき小笠原厩舎にいたのは、昨シーズン、エメラルユーキを担当していたN君。N君は、イマドキの若者らしいこなれた感じがなく、寡黙でまじめな青年で、馬の仕事がしたいがために単身、岩手競馬の世界に飛び込んできた人物。私と彼とは乗馬練習を一緒に受けた時に話をするようになったのですが、「自分はユーキに馬というものを教えてもらった」と良く言っていました。しかし残念ながらとある事情により7月を最後に厩舎を退職し、実家へ帰ることがこのとき既に決まっていました。
 そんなN君が厩舎の番をしていた午後。残り少ない競馬場で過ごす時間。そのときなぜか表に馬の気配を感じて出てみると、そこには、いるはずのないユーキが…!


 放馬でパニックになったエメラルユーキが、記憶の断片に従って自分がもといた寝床への道を辿っただけなのかもしれません。でも、競馬場をあとにするかつての担当者に、別れの挨拶をしにきた…ようにも思えて、ちょっと泣ける話ですよね。

right (文・写真/佐藤 到)

2006/08/10
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