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やっぱり馬が好き(第50回) 旋丸 巴

2008年7月31日(木)

素晴しい交流の場、JRAジョッキーDAY

 お待たせいたしました! JRAジョッキーDAYが、今年も開催されました!

 7月21日、帯広競馬場に集結したJRA騎手各位は、この企画の呼びかけ人である藤田伸二騎手を筆頭に、昨年も来てくれた安藤勝己、勝浦正樹、四位洋文の4騎手に加えて、今年は、石橋守、武幸四郎、松岡正海の3騎手、それに、何と!特別ゲストとして元JRA騎手の細江純子さんまでもが来道して計8名。どーです、凄いメンバーでしょ?

 さて、そんな豪華騎手軍団が到着したのは午後4時。今年からの参加組は、そのまま調教コースへ。この日のメインイベントであるエキシビションレースに備えて、ソリ騎乗の練習を行ったのだけれど、さすがはスター騎手さん達、初めての経験なのにソリの上でのバランス感覚は抜群。普通の人ならソリが動き出しただけで、座っていても後ろに引っくり返るほど。なのに、JRA騎手諸氏といったら、はしゃぎつつも巧みにソリの上でバランスを取り、坂の上り下りも難なくクリア。コースを一周しただけで、どの騎手さんも、すっかりサマになっていたから、さすがさすが!

 で、早速、練習を終えた武幸四郎騎手に「どうでしたか、初めての馬ソリは?」と尋ねれば、

 「ううん、下り坂がムズイ」

 ぬぬぬぬぬ、「ムズイ」とは、さすが若者・幸四郎様だわ、と感心している間に、他騎手さんの練習も無事終了。

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武幸四郎騎手の練習風景。「ムズイ」と言いつつ、抜群のバランス感覚。指南役はバンゼン号と工藤騎手

 練習が終れば、次は4レース連続でJRA騎手協賛レースの実施。

 各騎手さんが協賛レースごとに表彰式を行い、その後はチャリティーオークションが行われたのだけれど、サイン入りのレプリカゼッケンと額入り写真がセリにかけられると、表彰台周辺に集まったファンから一斉に声があがる。藤田騎手のサイン入り写真などは最高値25,000円を記録。騎手グッズ欲しさのあまり、半ベソかきながら競り合う人も出現して、いやはや、凄い熱気でありました。

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チャリティーオークション風景

 かくして会場が大いに盛り上がり温まった7時過ぎには、いよいよ、待ちに待ったエキシビションレース。

 7名のG1ジョッキーが、それぞれG1制覇時の勝負服(ただし、松岡騎手だけは何故かG1、2着時サンツェッペリンの勝負服)に身を包んで登場。じゃあ細江さんは??……と見れば、この勝負服。

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さすが細江さん、勝負服姿も素敵

 はて、これは誰の勝負服? と首を捻った人は、ばんえい通じゃないよ。そう、映画『雪に願うこと』で吹石一恵さんが着た、あの勝負服。小柄な細江さんには、ちょっと大きめだったけれど、それでも、勝負服がビシッと決るところは、やっぱり元プロですなぁ。

 そんな細江さんが、レースでも大活躍。

 第2障害を降りた時点で、尾ヶ瀬騎手サポートの8番=藤田騎手が楽勝かと思われたのだが、細江さんも同乗の村上騎手と共に懸命に馬を追い、これに迫っての2着に入ったのだから、あっぱれあっぱれ!

 レース後も感想を聞けば、「楽しかったし、迫力があった」と、息を弾ませながらも、ニッコリ。

 でも、私は知っているのである。村上騎手が真剣に馬を追う余り、細江さんにビシビシと手綱が当たっていたことを……。村上さんってばぁ、もう。

 この細江・村上組を撃破して優勝した藤田騎手は、と言えば、ゴール前で余裕のガッツポーズ。レース後も、大勢の新聞記者に取り囲まれてインタビューを受け、「去年の雪辱を果たしました」なんて、真面目な受け答えをされていたから、後ろから忍び寄り、「去年は『とても一人で乗れない』っておっしゃってましたけど、今年で優勝で自信がついたでしょ? 来年は、一人乗りに挑戦されませんか?」とカマを駆けたのだけど、「いや〜、1年間のブランクがあったからね〜。難しいわ」と、上手に逃げられて、残念!

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見事優勝した藤田騎手とサポート役の尾ヶ瀬騎手

 大河原さんにサポートされた石橋騎手からは「思ったより、ずっとスピードがあった」と興奮気味のお話も聞けて、いやはや、賑々しくも、楽しいエキシビションレースだったのでありました。めでたし、めでたし。

 と、長々と報告文を書いたけど、本当に私が心打たれたのは、実は、レース後の懇親会での風景。

 ばんえい応援のために無償で駆けつけてくれたJRAジョッキー諸氏に感謝するために行われた、この懇親会の席上、安藤騎手は「僕も地方競馬出身だから、ばんえいの苦労はわかる」と語り、石橋騎手は「僕らが来ることで少しはお役に立てたかな」と心くばりを見せ、藤田騎手は「武豊さんも、マーキュリーカップで後ろの方を走ってるなら、こっちに来ればいいのに」と会場を笑わせ……。皆さん、それぞれ言葉は違っても、ばんえい競馬に対する熱い思いは、ばんえい関係者にも伝わって、胸の中がほんのり暖かくなった。

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「少しでもお役に立てたら嬉しい」と、懇親会で語った石橋騎手

 「同じ馬でメシを食う者として」とは藤田騎手の言葉だけれど、こうして、馬を絆として様々なホースマンが心を通わすJRAジョッキーDAYは、単なるイベントという域を越えて、素晴しい交流の場として定着しつつある。

 来年の「海の日」にも、また、この催しが行われることを今から楽しみにしている気の早い私なんである(鬼、大爆笑)。

馬券おやじは今日も行く(第47回) 古林英一

2008年7月10日(木)

走破時計を統計的に推測する

 北海道の夏は突然やってくるのである。本州以南が梅雨でジメジメムシムシしているというニュースを横目でみながら、われらが北海道では爽やかな涼しい日が続き、「いやあ、この季節はやっぱり北海道はいいねえ」なんぞといっていると、突然気温が急上昇。昨日まで22度とか23度とかいっていたのが、今日はいきなり30度なんぞということになる。徐々に気温が上がれば体も多少は慣れるのだが、体が慣れてないから、いきなり体に堪えるのである。

 夏が来ようと冬が来ようと、小生の馬券が当たらないのは同じ。季節も天気も無関係。いったいどうしたらよかろうかと思案投げ首の日々なのである。

 なぜ、馬券が当たらないのか? 理由を考えてみた。理由ははっきりしている。小生の予想が間違っているからである。問題はどこがどう間違っているかであるが、それがわかりゃ苦労はしない。こうなりゃ、ヘタな考え休むに似たり。小人閑居して不善を為す。自分で考えるのをやめることにした。

 馬の能力を客観的に推定することができないもんだろうか? ということで、遊び半分ちょいと数字をいじってみた。

 走破タイムを左右する要因を、馬の基礎能力、馬場水分、そしてばんえい重量の3つとして考えてみた。もちろん、他にも、騎手との相性だとか、その日の馬の気分だとか、天気だとか、たぶん色んな要因が働くことは確かだが、それらは一切無視して、基礎能力・馬場水分・ばんえい重量の3つでどのくらい走破タイムが決まるのかを考えてみた。

 今回使用したデータはホクショウジャパンとオレワスゴイの昨年度のデータである。なぜこの2頭を選んだかというと、同じ世代の2頭を比較した方が紛れがないような気がしただけである。

 次のようにごく簡単な数式をたててみた。

 走破タイム=基礎能力+a×馬場水分+b×ばんえい重量+c×馬体重の増加分

 馬体重の増加分というのはデビュー時の体重からどれだけ増えたかであり、成長途上の2歳ということを考えたからである。で、ホクショウジャパンとオレワスゴイのそれぞれについて、デビューから1年分のデータを使って、上の式のa、b、cを推定してみた(重回帰分析という手法である)。すると……

 ホクショウジャパンの場合は
   T=-110.01-7.56×M+0.48×L-0.41×W

 オレワスゴイの場合は
   T=-43.42-7.30×M+0.37×L-0.39×W

 という結果が出た(Mは馬場水分、Lはばんえい重量、Wはデビュー時からの体重増を示す)。統計学的な細かい話は省くが、この式の当たり具合(自由度修正済み決定係数という)は、ホクショウジャパンの場合80%くらい、オレワスゴイでは60%くらいである。つまり、オレワスゴイの方が、ここでとりあげた以外の要因に左右される割合が高いということである。

 今年のイレネー記念は馬場水分が0.8%で、ばんえい重量は670kg、そして、デビュー時からの体重増は、ホクショウジャパンが84kgの増加、オレワスゴイは110kgの増加であった。

 これらのデータをいれて、イレネー記念の走破タイムを推定すると、ホクショウジャパンが171秒、オレワスゴイが156秒という結果が出た。実際のイレネー記念では、ホクショウジャパンが第2障害を失敗してしまい惨敗し、オレワスゴイが154秒で優勝した。

 上の式によると、オレワスゴイの推定走破時計は156秒となる。実際のレースでは154秒であった。その差わずか2秒。結構いい線いっている。この推定式に従うと、仮に第2障害で失敗しなくても、ホクショウジャパンの推定走破時計は171秒で、オレワスゴイには届かないということになる。ホクショウジャパンは圧倒的1番人気だったが、推定式ではオレワスゴイの方が優秀だったということだ。

 うーん、これは使えるかも…(*^_^*) 今年年末のダービーではこのやり方で勝ち馬を推理し、皆様に公表するのでお楽しみに……って、暑い時期にクリスマスの約束してどうする!?

やっぱり馬が好き(第49回) 旋丸 巴

2008年6月26日(木)

旬の人、旬の馬

 トートツですが、竹ヶ原茉耶騎手の最近の活躍ってば、凄いよね〜。

 6月15日現在で、騎手ランキングは勝率で5位、連対率に至っては、松田道明、藤本匠に続く3位! 尾ヶ瀬、藤野、鈴木勝堤といった名手を抑えての、このランキングは「凄い!」の一言に尽きる。

 今春から、我らが谷厩舎に移籍した彼女を応援し続けて来た私だけど、一流騎手に伍してのこの活躍。私のお財布にも暖かい風を送り込んでくれるから、茉耶ちゃん素敵〜! 愛してる〜。

 因みに、茉耶ちゃんは、学生時代、柔道の選手として名を轟かせたとか。だから、運動神経も勝負根性も抜群なんだろう。

 というような茉耶ちゃん情報は、しかし、きっと近々、斎藤友香さんが騎手ファイルで紹介してくれるだろうから、これくらいにしておくけれど、最後にサービスとして麻耶ちゃんの「極秘情報」をば。

 あのね、茉耶ちゃんって、凄くプロホーションがいいんですよ〜。勝負服を着ているとコロッとして可愛い体型に見える彼女。だけど、実は、物凄くウエストが細いんですよ〜。数年前、某パーティーでスーツを着ている茉耶ちゃんを見て、そのスタイルの良さにビックリ。レースでは大柄な男性に伍して勝負に生きる彼女も、日常は、やっぱり可愛くもキュートな女性なのね、と、納得したのである。

     *     *     *

 さて、旬な人、を紹介した次は、いよいよ「旬な馬」の登場。

 今年の2歳馬は、なかなか個性的と言うか、今後の活躍出来る馬達が揃って、誠に楽しみ。

 能試1番時計のホクショウバンクや、牝馬とは思えぬ雄大な馬体で他馬を圧倒するタワノアヤカなどなど、どの馬も将来が嘱望されるけれど、そんな中で、私が、今、とっても注目しているのがアオノレクサス。

 能試ではホワイトアウトという名前で登場し、好時計をマーク。その後、アオノレクサスと改名。5月4日のデビュー戦、25日の2戦目、と共に他馬を圧倒する快勝劇で2歳馬のエリートロードに乗った、とは、読者各位もご存知の通り。

 血統的にも、全兄に準オープンのエビスオニワカ、叔母には、あの! 現役最強牝馬のフクイズミを持つ一流血統馬……という訳で、注目を集める大器アオノレクサスなのだけど、実は、私、この馬をデビュー前から知っているのである。初めてこの馬に会ったのは昨年11月、同馬の生産牧場である佐々木牧場に取材に行った時のことである。と言っても、この馬を取材に行った訳ではない。

 お笑いコンビ「タカ アンド トシ」が命名した「ドオーダッシュ」の取材に佐々木牧場を訪れたのだが、温厚で人懐っこいドオーダッシュの顔を撫で撫でしつつ担当の方の話を聞いていたら、その後ろを、どどどどど〜!っと駆け回る芦毛が1頭。今、右から左へ鹿毛の馬を追いまわして行ったと思ったら、今度は、左から右へ栗毛を追いかけて……と、取材の間中、地響きを立てつつ走り回り、他馬にケンカを売って遊んでいる。その、呆れるほど騒々しい姿を見て、「あの馬は?」と担当者氏に尋ねたら、

 「あれね、エビスオニワカの全弟」

 闘争心を最大の武器とするエビスタイショウ産駒であれば、この騒々しさも納得。と、何気なく写真を1枚撮った。それが他ならぬアオノレクサスだったのである。

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牧場時代のアオノレクサス

 とは言え、その後は、この馬のことなど、すっかり忘れて……。次に、この馬のことを思い出したのが、能力試験の日。

 好タイムを出した芦毛の生産者名を見れば、佐々木牧場。血統を見れば……

 「あ、これ、あの時、騒ぎまくってた芦毛だ!」

 あのヤンチャ坊主が、実に立派に成長した訳で、なおかつ、その生産者が日頃親しくしている佐々木牧場生産馬。ということで、何となく嬉しくなって、以降、私は、この馬を応援しているのだけれど、この馬もまた、前述、茉耶ちゃん同様、私の財布に温風を送ってくれるから、だーい好き!

 と喜びはしゃいで、しかし、ここに、この馬の活躍を見るたびに悔し涙に暮れている殿方が1名。その人こそ、誰あろう、本ブログ執筆者にして経済学博士・古林英一大先生なのである。じゃじゃ〜ん!

 どーして、アオノレクサスが活躍したら、先生が泣いてしまうのか? 実は先生、この馬の馬主になり損なわれたのである。

 前述の通り、レクサスの生産者は佐々木牧場。佐々木さんと古林先生は大の仲良し。なので、昨年はミヤビライコウを共同で所有されたのだが、今年も、お二人で新馬を1頭共有しようということになった。そこで、共有馬が何頭かリストアップされたのだけど、その候補馬の中にアオノレクサスの名もあったのだそうな。しかし、「この馬は、そんなに走らんだろう」という佐々木さんの判断で、他の馬主さんに売却。古林先生は他の馬を持たれたのだが……。

 河童の川流れ、猿も木から落ちる。大生産者として名を馳せる佐々木さんも、時に馬を見誤ることがあって、それが、たまたまアオノレクサスだったわけで、

 「あんなに走ると思わんかったな。一度は肉市場に出そうかと思ったくらいなんだけど」と、この馬の活躍には驚愕する佐々木さんが、空を見上げて続けて曰く「古林先生に、これくらい走る馬、持たせてやりたかったなぁ」

 因みに、古林先生が所有された馬は未だ……いやいや、みなまで言うまい。

 そんなアオノレクサスだから、是非にも、このまま連勝街道を走り続けて欲しいのである。勝って勝って、古林先生の悔し涙が枯れるまで勝ちまくれ〜!

馬券おやじは今日も行く(第46回) 古林英一

2008年5月22日(木)

大口騎手、ごめんなさいm(_ _)m

 「ばんえい情報局」の新企画・ジョッキーファイル。実にいい企画である。先日、この企画で大口泰史騎手を取材した斎藤友香さんが「大口さんが『乗り替わりの大口』のこと怒ってましたよ〜」と小生に伝えてくれた。原因は、今年度、競馬場等で無料配布しているパンフレットである。矢野さん、須田さん、旋丸さんらに混じって、恥ずかしながら、このパンフレットで小生も馬券術を公開させていただいているのであるが、そのなかで小生がばんえい界で有名な「乗り替わりの大口は買い」という格言を「珍説」として紹介したのである。

 多数派をしめる右利き騎手から数少ないサウスポーの大口騎手に乗り替わると、馬がびっくりして走るという説である。正直いって、小生もこの説は正しいような気もする。正しいような気もするが、数量的に実証された説ではない。実際には太って脂ぎっているとはいえ、痩せても枯れても小生は実証を重んじる学者なのである。昨今は「ホラ吹き馬券・車券オヤジ」になり果ててはいるが、本来の小生は謹厳実直で学問一筋の学究の徒なのである。科学的に論証されていないものをあたかも真実であるかのように紹介は出来ない。それゆえ「珍説」として紹介したのであった。

 そこで、いきなりではあるが、小生本来の姿に立ち返り、今回は数理統計学の講義をおこなう。あ、そこの君、いきなり読むのやめないように! テーマは「『乗り替わりの大口は買い』説の真偽」である。結論からいおう。数理統計学に基づく小生の分析によると、「乗り替わりの大口は買い」説は「びみょうー」に「真説」であることが判明した。どのあたりが「びみょうー」なのか、さらに「乗り替わりの大口は買い」説が馬券術として効果的かどうかについては、これから述べたいと思う。

 まず、検証に用いたデータである。昨年度(2007年4月から2008年3月)の競走実績を利用する。データが多ければそれだけ誤差も小さくなるが、いくらGW中暇を持て余していた小生でも、昨年度の150日間全レースをピックアップする時間も根気もない。そこでサンプルデータ(日本語の統計用語では標本という)として、150日間のメインレースをとりあげた。とはいっても、メインレース150競走のうち、9競走は乗り替わりがなかったのでデータから除外したので、サンプルは141競走である。141競走で延べ421頭が前走とは異なる騎手で出走した。

 さて、この421頭のうち、別の騎手から大口騎手に乗り変わって出走したケースが25頭あった。どうやって乗り替わりが有効だったかどうかを判定するか? 様々な考え方があろうが、今回はごく単純に前走に比べて着順がどれだけ上がったか(もしくは下がったか)をとりあげた。着順の変化をここでは着順上昇度とよぶ。前走8着、当該レースで3着なら着順上昇度は8-3=5、逆に前走3着で当該レース8着なら3-8=-5という具合である。乗り替わりで大口騎手が騎乗した25頭の着順上昇度の平均値は1.20、つまり平均1つ以上着順をあげているのである。なるほど、大口騎手に乗り替わると「平均的には」着順が上がるようにみえる。だが、大口騎手以外のケースをみないと、大口騎手が特別かどうかはわからない。

 では他の騎手への乗り替わりはどうか? 大口騎手以外への乗り替わりによる着順上昇度の平均値は-0.55。つまり乗り替わりは、平均的には、着順を下げる可能性の方が高いのである。メインレースで20頭以上に乗り替わりで騎乗した騎手は大口騎手を含めて11人いた。大口騎手を除く10人はすべて着順上昇度の平均値はすべてマイナスなのである。この結果をみるとますます「乗り替わりの大口は買い」説は正しいかにみえる。

 だが、以上の結果はたまたま今回抽出した421頭のサンプルの話であり、このことが一般的に成り立つかどうかを考えないといけない。ここから先が推測統計学の議論になるのである。サンプルから導きだされた結論には必ず誤差がある。そこで、統計学の手法に基づいて、「乗り替わりの大口」の誤差を含んだ着順上昇度を推定する(いわゆる区間推定というやつである)と、信頼度95%で着順上昇度は1.81から-1.57という結果が出た。つまり、大口騎手に乗り替わった場合、前走に比べて着順の上昇度は95%の確率で1.81から-1.57の範囲にあるということである。大口騎手以外についても同様の推定をおこなうと、95%の確率で-0.21から-0.88着順が変化するという結果が出た。つまり、大口騎手に乗り替われば着順があがる確率がかなり高いのに対して、大口騎手以外に乗り替わった場合は着順が前走より下がる可能性が95%以上あるということだ。

 こういうと、ますます「乗り替わりの大口は買い」という気がしてくる。実は、大口騎手は小生の大のごひいき騎手であるから、こういう推定結果が出るとうれしい。だが、今回の小生は「ホラ吹き馬券オヤジ」ではなく、「真理を追究する学者」である。心を鬼にして、意地の悪いデータも敢えて紹介せねばならない。「大口への乗り替わり」ではなく、「大口からの乗り替わり」も検証してみた。すると、平均着順上昇度は何と0.13。95%信頼区間を推定すると、2.19〜-1.94と出た。サンプル数が少し小さい分、誤差の幅が大きくなるが、「大口への乗り替わり」も「大口からの乗り替わり」も同じような結果なのである。つまり「乗り替わりの大口は買い」というのは、「大口への乗り替わり」と「大口からの乗り替わり」の両方を考えるべきということなりそうだ。

 大口騎手についてはさらに面白いデータを発見した。当該競走の着順と前走の着順の関係を相関係数という指標を用いて分析してみた。すると、乗り替わりで大口騎手が騎乗した競走の着順は前走の着順と統計的に全く無関係という結果が出た(相関係数は-0.07)。対照的に、乗り替わりで大河原騎手や藤本騎手が騎乗した場合は、前走の着順とそのレースの着順はある程度相関がみられる(大河原騎手の相関係数は0.57、藤本騎手は0.46)。つまり、大河原騎手や藤本騎手は乗り替わりで騎乗しても前走の結果に近い結果を出す可能性が高い、つまり前走で好成績だった馬は今回も好成績を出すし、前走凡走だった馬は今回も凡走しがちであるということだ。それに対して、大口騎手の場合は前走の成績と全く関係がみられない。大きな変わり身もあるし、逆に、期待を大きく裏切る可能性も小さくないということである。

 最終的な結論である。大口騎手への乗り替わり、もしくは大口騎手からの乗り替わりは、他の騎手への乗り替わりに比べて、着順をあげる可能性が高いように思われる。その意味で「乗り替わりの大口は買い」である。だが、実は、大口騎手への乗り替わりと他の騎手への乗り替わりの着順上昇度の差は統計学的には有意な差とはいえないという結果も出た(有意水準5%)。また、さらに、着順上昇度が1とか2だと、前走が5着以下なら馬券的にはあまり関係ない。つまり、「乗り替わりの大口」を過度に信用してもいけないということだ。ここいらあたりが「びみょうーに正しい」という所以なのである。

 それとついでにいっておくと、推測統計学では95%の信頼度というのがひとつの基準となっている。世間一般的には95%の確率というのは「ほぼ確か」という意味で使われる。だが、95%の信頼度ということは、逆にいうと5%の確率ではずれるということだ。5%って、無視できる? 無視できない? どっちだろうか。ごく簡単にいうと、5%の支持率というのは、馬券のオッズでいうとたかだか1,500円(15倍)程度なんである。決して大穴とはいいがたい。せいぜい「ちょい荒れ」程度だろう。こうなると95%の確かさなんていうのは馬券戦術には殆ど無意味であるといえよう。

 いずれにせよ、乗り替わりの大口はどうやら統計学的には「びみょうー」に正しい。「びみょー」ではあるが、真説であると小生は判断する。大口さん、珍説扱いしてごめんなさいね〜m(_ _)m

やっぱり馬が好き(第48回) 旋丸 巴

2008年5月 2日(金)

待ちに待った開幕!

 みなさーん! お待たせしました~! いよいよ新年度ばんえい十勝開催!

 勿論、私も、初日から競馬場に駆けつけたのだが、開門時には入場門前に長い列が! 

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騎手さん勢ぞろいでお出迎え

 驚き喜びつつ、その人たちの後ろに並んで入場したら、騎手さん達が勢揃いして、ご挨拶。のみならず、帯広の名店「柳月」の紅白饅頭まで手渡してくれるから、ラッキー! 娘が憧れの佐藤希世子騎手から一箱受け取ったので、その場を離れようとしたら、横合いから私の肩を叩く人が……。

 誰かしら? と振り向けば、そこには名手・西弘美騎手の満面の笑顔が! とろけるような西スマイルに心穏やかでいる女性など、この世に存在するはずもなく、私も感謝感激雨アラレ。狂喜恐縮で西さんが手渡してくれた紅白饅頭をかき抱いて、しかし、次の刹那、今度は背中をドシン!と、どつく人が……。

 今度は誰? と振り返れば、こちらも名手・大河原騎手が、「おはよっ」と、独特のヤンチャ笑顔でティッシュを差し出してくれたから、思わず噴き出してしまった。

 いつも思うのだけれど、ばんえい競馬の騎手さん達って気取ったところが皆無。西さん、大河原さんだけじゃなく、皆さん揃って気さくであって、これが、ばんえい競馬の大いなる魅力のひとつなんだよね~、と、競馬場で落ち合った皆と声を揃えた。

 と、そんな嬉しい歓迎を後にしてスタンドに入った我々を次に迎えてくれたのは……

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カフェ・ド・ペルシュロン

 じゃじゃ~ん! 新規開店の軽食堂。その名も「カフェ・ド・ペルシュロン」というお洒落なお店は、これまた帯広の名店「ますやパン」の直営店。御菓子にしろパンにしろ「安くて美味しい」が帯広近辺の常識だから、このお店のパンも、また低価格。蹄鉄型のパンなんて1個100円なんですよ~。

 その他のパンも廉価だし、お店の中には小さなテーブルと椅子が、いつくも用意されているから、気軽に入って楽しく食べられる。

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テーブルと椅子がたくさんある店内

 「場内の食環境を改善して欲しい」と言われ続けた帯広競馬場。今回のカフェの出店は、そうした観客のニーズに応える「小さくとも偉大な一歩」なんじゃないかと、食いしん坊の私は期待に胸を膨らませているのである。

 けれど、食べ物ばかりに目を取られていてはいけないから、更にスタンドをずんずん進んで、今年度から導入された自動券売機で早速、馬券を購入。

 後はレースを待つばかりだから、スタンド南側、旧パドック=ふれあい動物園へ。と、いたよ、いました、イッシンブレイブが!

 この芦毛馬君、リッキーに続く帯広市役所職員第2号として、今年度からファン・サービスに専念。この日がイッシン君の初出勤日だったのだが、船山騎手に連れられ、ふれあい動物園に登場するや子供や女性に囲まれ大人気。

 リッキーの小屋の横にはイッシン君の新しい小屋も建てられ、リッキー・イッシン並んでお客様を迎えたけれど、ニューフェイスながら、イッシンもリッキーに負けず劣らず柔和な顔でファン・サービス。あまりの可愛さに、お客さんがイッシンに集中すると、リッキーが「俺にもかまって~」と抗議の前ガキを炸裂させる一場面も。他にも、イッシン小屋の仕上げに安部憲二騎手が活躍したり、ポニーの引き馬をトップ・ジョッキー鈴木勝堤騎手自らがかって出たり、とレース前とは思えない柔らかな空気が漂う、ふれあい動物園。

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イッシン小屋の製作。左から、安部騎手、船山騎手、鈴木騎手

 「こんな光景、到底、他の競馬場では見られないよね~」と仲間と笑うこと、しばし。

 廃止された競馬場も含めて日本中の競馬場はほぼ訪れたし、外国の競馬場も、それなりの数、訪問したけれど、こんなに和やかで家族的な競馬場というものを私は他に知らない。

 もし、未だ、ばんえいをライブで見たことがない方がいらしたら、是非、必ず、絶対に、帯広競馬場においでませ。他では味わえない、「牧歌的で、しかし、レースは実にパワフル」という不思議な競馬が体験できますから。

     *     *     *

 そんな心躍る一時の後は、いよいよ待望の馬券勝負! ということなるのだけれど、残念ながら、ここで紙面が尽きた。本当は、初日第1レースから、我らが「ばんえい軍団」が「初っ端から応援杯」なる協賛レースを催したから、その報告もしたいけど、それは次回、大兄・古林先生に報告してもらうとして……。

 最後に、ここまで拙文にお付き合い下さった奇特な読者に、お礼として耳寄りな情報を。

 26日の開幕を挟んで、4月13日と29日には、2歳馬達の能力検査が行われた。ばんえい十勝HPでも、その結果が発表されているけれど、一番時計のホクショウバンクは本当に強かった。砂の入れ替えで馬場が重くなっていたにも関わらず、1分38秒1という破格の時計でブッ千切り。能力検査で好走する馬には、草競馬でレース慣れしている馬が多いけれど、この馬は草競馬でも走ったことがないというから、これからの成長分も見込めるわけで、いや、末恐ろしい逸材である。

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能力検査でのホクショウバンク

 でもね、私が密かに期待している2歳馬が、他にも1頭いて、それが29日の第2回の能力検査で一番時計を出したヒカルカチドキ。この馬の調教師は、誰あろう我が友・谷あゆみ調教師。私も、昨秋、谷さんと、この馬を牧場まで観に行ったことがあって、だから、能検でも注目していたのだけれど、期待に違わぬ悠々の一番時計。それにしても、この馬、体力の凄さもさることながら、その勝負強い気性に感服。坂でもゴール前でも、自分から懸命にソリを引く姿に鳥肌立たされた。父エビスカチドキは、谷さんが厩務員時代に大切に大切に育てた馬。その馬の産駒が谷さんの大きな夢をかなえてくれたら……と想像するだけで、またまた鳥肌。

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能力検査でのヒカルカチドキ

 金髪王子ヒカルカチドキが、ホクショウバンクと、どんなレースを繰り広げてくれるか、今年度、新馬戦が楽しみで楽しみで……。

 さて、皆さんの今年の注目馬は、誰?

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