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馬券おやじは今日も行く(第18回)  古林英一

山で働く馬

 みなさん、「BANBA王」観てます? あの番組ほんとうにいいね。初心者からベテランまで楽しめる本格的な番組ですな。

 さて、本題。行ってきました、山仕事。現場は道南上ノ国町にある北大演習林。今ではほぼ絶えてしまった馬を使った森林作業(馬搬という)の技術を伝承・保存しようという企画である。この企画を続けているのは上ノ国町の太田垣茂さんという方である。この方は森林の保全・活用に尽力されている方であるが、その一方で類い希な馬好きオヤジでもある。もちろん競馬も大好きというお方だ。この太田垣さんのパートナーとして愛馬とともに活動に参加しているのが、久末代志市さん。御年75歳。現在オープンで活躍中のスターエンジェルの生産者である。この爺様も馬が好きで好きでたまらないという人である。

 上ノ国で馬搬作業をやっているという話を聞きつけ、見学したいと電話したら、「見学だけ?」と問い返され、思わず「いえ、できることは何でもさせていただきます」と返事してしまったことから、にわか杣夫(そまふ、北海道ではヤマコ=山子という)になった次第である。

060518photo1  GW期間限定・見習い杣夫兼馬方となった小生であるが、見よ、わが勇姿。何でも形からはいる小生である。なかなか似合っているのではなかろうか(写真)。自分でいうのもなんだが、学界広しといえど、ヘルメット姿が似合うということでは、小生の右に出るものはそう多くあるまい。

 格好だけはもっともらしいのだが、なんせ小生はハマチ養殖の論文で博士号をとった農学博士であるからして、漁業と農業については多少知識もあるが、林業についてはドのつく素人である。林業用語もまったくわからない。

 太田垣さんは「馬を使うためには準備が大事なんだ」と繰り返しおっしゃっていた。馬を見たいという人は多いものの、たんに馬を見たいというだけで、森林作業をきちんと理解しようという人は少ないのだそうな。「見学だけ?」とおっしゃったのには、「たんに馬だけ見に来るような真似はするなよ」という意図だったようだ。

 3日間の日程の初日は馬は登場しなかった。馬搬をおこないやすいように木を倒し(木を切り倒すことを伐倒という。小生が覚えた最初の林業用語だ)、馬が作業しやすい環境をつくる必要があるのだ。以前伐採した木の断片(断片といっても直径30センチ、長さ数メートルの丸太もある)がごろごろしているのを、適当に寄せ集めたりして、馬が通りやすいように片付けねばならない。

060518photo2  まずトビという道具(魚市場で使う手かぎの親方みたいなもの)を使って丸太の残骸を寄せ集めて整理する(写真)。これが簡単そうにみえてなかなか難しい。どの立木の間を馬が通ると具合がいいかを判断しながら邪魔物を片付けるのだが、伐採予定の木を倒す方向と、馬がひく方向なんかを判断しながらやらねばならない。しかしまあ、木というのは存外重いものである。でも数時間やってるとトビの扱い方だけは少し上手になったのである。ちょっとうれしい。

060518photo3  林の間に幅1メートル程度の小道がある。この道を通って、伐倒して枝をはらった杉の木をドシャバという集積場に集める。林からこの小さな道に木を搬出することを「藪出し」というのだそうだが、馬を林のなかに入れての藪出しというのはしないことも多いらしい。ではどうするのか。伐倒した木にワイヤーをつなぎ、滑車などを使って馬は道で木を曳くのだという。ただ、今回は、馬の扱いに長けた久末さんの指導で、林のなかにまで馬をいれて藪出しをした(写真)

060518photo4  まずは藪出ししやすいように木を伐倒せねばならない。見習い杣夫である小生はチェーンソーの操作はできないので見ていただけだが、木を思う方向に手際よく倒すというのもなかなか難しいようだ。チェーンソーの操作にそこそこ慣れている人たちでも結構難儀している。3日目に山仕事50年という方も先生として参加したのだが、さすがにこの方のチェーンソーの使い方は見事である。姿勢が美しい。何の仕事でも、熟練の職人の仕事の姿勢はビシッと決まっている(写真:チェーンソーの使い方を指導しているところ)

 2日目。いよいよ馬の登場である。今回、がんばってくれたのは、久末さんが飼養しているニシノサクラ号(雌・5歳)である。昨年秋の作業で初めて山に入った馬だという。ばんえい競馬の競走馬ではないが、久末さんとともに草ばん馬には出場している馬だ。

060518photo5  正直なところ、文弱の輩であり非力な小生は長さ2メートルの丸太を曳くのも難しい。ところが、このニシノサクラちゃん、障害物のない斜面だと、長さ20メートル直径30センチばかりの丸太を3本くらいなら、軽々引っぱりあげてしまう。本物の「馬力」というのはまことにもってえらいものだ。また、急坂をこえるときなんぞは、ちゃんと腰を使う。まさにばんえい競馬の障害越えそのものだ(写真)

060518photo6  手際よく藪出しできるかどうかは、ひとえにそれまでの準備次第だということがつくづくわかる。どの木の間を抜ければうまく丸太を曳けるかを久末さんが瞬時に判断する。馬を御すための人が馬の後につくのだが、別に手綱をとった人が馬を上手に誘導せねばならない。見習い馬方の小生、この誘導役を少しやらせてもらった(写真)のだが、これがなかなかうまくいかない。足場の悪い林のなかで、馬をうまく誘導するどころか、自分の足元が怪しくなる始末だ。太田垣さんもあきれはてていた。小生、本物の馬方には到底なれそうにもない。ちょっと悔しい……。

 3日間作業に混ぜてもらって、馬の動きを見ていると、これがまさにばんえい競馬のルーツだということが実感された。考えてみれば、農耕や平坦な道路で馬が腰を使って障害を越えることなど実際にはなかったろう。急坂を越えて丸太を曳く姿はばんえい競馬の障害越えそのものなのだ。ばんえい競馬が単なる馬ぞりレースではなく、障害を越えるレースとして考案されたのは、まさにこうした山仕事のイメージがベースにあったのだろう。

060518photo7  今でも、ばんえい競馬を「残酷だ」「馬がかわいそう」なんぞという人がいる。そんな人は本当の馬の力を知らない人だ。ばん馬をバカにしてはいけない。ばん馬という偉大な動物は、1日数時間にわたり、急峻な坂や障害を越えて丸太を曳き続ける「馬力」を持っているのだ(写真)。ばん馬たちにとって、そして、愛馬とともに働く男たちにとって、日常の仕事で培った「馬力」を人々に見せつける晴れの舞台がばんえい競馬だったのだろう。

 ここでちょっとお知らせ。

 北海道新聞社からばんえい競馬の写真集が発行された。詳細は後日お知らせするが、これはばんえい競馬ファン必見だ。

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